by une_genzaburo
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この本は、1つ前の記事で紹介した『ゲノムが語る生命』(中村桂子著・集英社新書)に紹介されていたものだ。引用文に惹き付けられ、興味が湧いたので読んでみた。 特攻隊の生き残りで、戦後スタンフォード大学に留学した在野の哲学者波多野一郎が、1965年少部数のみ出版した『イカの哲学』に、哲学者中沢新一が注目し彼独特の解釈などを加えて新たに1冊となったのが本書である。 波多野氏の『烏賊(イカ)の哲学』は全文収録されている。 波多野氏に関してもう少し語ろう。彼は現在の京都府綾部市の出身で、祖父はグンゼの創業者・波多野鶴吉である。真珠湾攻撃が行われて半年ほど経った1942年早稲田大学に入学するが戦況は数年で悪化。 1944年に学徒兵動員で陸軍に入隊。彼はむしろ危険な航空隊こそがもっとも安全、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」と考え、航空隊を志願しそこに配属される。 1945年の戦争終盤には戦局はさらに悪化、南満州に展開していた彼の部隊は、7月1日に特攻の命令が下る。目標は、沖縄諸島周辺のアメリカ軍艦船。命令を受けてから一ヶ月、彼らの隊は敵艦に体当たりし自爆する練習を重ねる。そして明日出撃というまさにその日にソ連が満州国境から侵入南下。満州の日本軍は大混乱を来たし、出撃は中止。そのまま終戦となり、波多野氏は現地の日本軍はソ連軍の管理下に入りシベリアへ抑留。鉱山の地下300mほどの所で零下40度ほどの気温の中で酷使されるが、頑健な波は何とか4年の抑留を耐え抜き帰国する。 抑留時、波多野氏は、ソ連から共産主義教育を施され改宗を何度も迫られる。しかしソ連の対極であるアメリカの実態を見るまでは、その体制を受け入れるという判断はしまいと心に誓う。帰国後、アメリカ留学を志すが、共産主義のスパイの疑いをかけられ、なかなか希望を果せずにいた。2年後ようやく渡米が叶い、スタンフォード大学大学院哲学科に留学することになる。 波多野氏はグンゼ(昔は郡是と書いたそうだ)の御曹司とはいえ、戦後間もないということもあり留学資金は豊富でなく、土日や長期休暇などはバイトで学費や生活費を稼ぐ必要があった。 ある夏、彼は夏季休暇にカリフォルニア州でイカの冷凍工場を営む知人のもとでバイトした。作業内容はというと、毎朝暗いうちにモントレー漁港(この港町はたまたま私が住む七尾市の姉妹都市である)に出かけ、まず水揚げされた何万匹というイカを、トラックの水槽に移す。1時間ほどトラックで走って移動、サンタクルズの漁港の知人のイカ工場に運ぶ。次に彼はそこで手網を使い冷たい真水が入った水槽にイカを移す。 そしてさらに1時間ほどでまた掬いあげてコンベアーに載せていくという作業をする。コンベアーの先には、箱詰め作業の女性らがおり、箱詰めされたものは冷凍庫に入れられるのであった。この仕事は非常にデリケートで、イカは真水に入れられた時間が1時間以上経つと腹の墨が入った袋が弱くなり、箱詰め作業中に墨が出てきてしまい、商品価値が台無しになるという。 彼はバイト期間中、時には終日クタクタになるまでこの作業をやったらしいが、それでもシベリアの収容所での抑留生活よりまだマシだと思ったそうだ。時々疲れて、コンベアーに載せようとしたイカが床に落ちて、イカの眼が自分を恨めしげに見つめるような錯覚も感じた。そういうハードな作業の中で、ある日彼は「イカの哲学」を悟るに至ったようだ。 神風特別攻撃隊で死の淵に立たされるも、ソ連の南下で偶然生かされ、また4年に及ぶシベリアの抑留生活で過酷な労働を味わった経験も、影響したようだ。 イカが自分に語りかけるような感覚を覚えながら彼自身イカの立場になって色々考えをめぐらすうちに、一回の投網で数万匹ものイカを収穫してしまう機械化された近代漁法に、日本人の上に落ちた原爆と同じ構造を見出すのであった。 人間以外の生物に対しても敬意を持つことに関心の無い在来の人間尊重主義(ヒューマニズム)は理論的に弱く、他者(他の生命への)無理解上に、それ自体には戦争を食い止めるだけの力は弱いと彼は考えたようだ。 波多野氏は『イカの哲学』の中でこう述べています。 「イカ達の親類縁者のような感じになった大助君(この本の中で波多野氏は自分を藤野大助という仮名を使用)は歓喜に満ちあふれて叫び声を揚げたのです。「そうだよ!!大切なことは実存を知り、且つ、感じるということだ。たとえ、それが1疋のイカのごとくつまらぬ存在であろうとも、その小さな生あるものの実存を感知するということが大事なのだ。この事を発展させると、遠い距離にある異国に住む人の実存を知覚するという道に達するに相違ないのだ。」」 あまり上手く纏められなかったが、実際の波多野氏の文章は小冊子程度で短くて平易なものだがその内容は非常に奥深い。特攻とシベリア抑留という過酷な体験をバックボーンを抜きにしては語られない、何万匹というイカとの格闘という現実体験から生れた、柔(やわ)な思想など蹴飛ばされそうなほど迫力のある、もの凄い思想だと思った。 中沢氏の解説が、波多野氏の原文の2,3倍の量で色々と書かれているが、何と言っても波多野氏自身の『イカの哲学』の文章が良い。中沢氏の解釈は、彼独特な見方も強く、大いに参考にはなるが、波多野氏の文章は自分なりに考えてみる方がいいように思う。 平易で哲学らしからぬ文章だが、それでいて非常に考えさせられるこれぞ哲学という作品だ。 お薦めの一冊です。 (参 考) 本の表表紙裏の紹介文を下に転記 「特攻隊の生き残りで、戦後スタンフォード大学に留学した在野の哲学者波多野一郎が、1965年に少部数のみ出版した書『イカの哲学』。学生時代からこの作品に注目していた中沢新一が、そこに語られている二一世紀に通じる思想を分析し、新しい平和学、エコロジー学を提唱する。イカが人間とコミュニケーションがとれたら、という奇想天外な発想から、人間同士だけではなく森羅万象と人間との相互関係にまで議論の範囲を広げ、本質的な意味での世界平和を説く。『イカの哲学』全文収録。」 ←ランキングに参加しています
by une_genzaburo
| 2009-07-03 19:38
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