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藤原不比等 (人物叢書)
高島 正人 / / 吉川弘文館 スコア選択: ※※※※ 前記事で3回にわたって黒須紀一郎の『覇王不比等』(三部作)の紹介をした。あの作品はあくまで伝奇小説であり、定説の歴史とは大きく異なった内容となっている。定説が必ずしも正しいという訳ではないが、どこからどこまでが黒須氏の説もしくはフィクションなのかはっきりしない。 そこで吉川弘文館・人物叢書の中の『藤原不比等』を読んでみた。やはり読んで良かった。黒須氏の不比等像はかなり突飛なものも多い。現状の歴史学上の研究成果を踏まえた上でないと危ないかもしれない。突飛なフィクションでなくとも、尤もらしい話が出てくると、人は上手く騙されて史実と誤解しかねない。 勿論『覇王不比等』も確実な史実がある部分に関しては、それに従い書かれている。ただし不比等は31歳で公式記録に登場するまで不明な部分が多く、その部分が小説家の創作能力の発揮しどころでもあり、推理によって通説とは大きく異なる不比等像も書くことも可能な訳だ。 黒須氏の『覇王不比等』の中でも、「大宝律令」「養老律令」の制定など律令政治の確立、『日本書紀』の編纂、藤原京、平城京の造営など主な仕事や藤原一門の繁栄を図った人事掌握や後宮策など色々書かれている。 だがかなり偏った視点から見直されたものだった。あの小説では、不比等の父・鎌足が唐の工作員となって登場してくるし、軽王子(後の孝徳天皇)、宝皇女(後の斉明天皇)、中大兄王子(後の天智天皇)のそれぞれが、軽、宝、翹岐(ぎょうぎ)という百済の亡命王族、さらには大海人皇子(後の天武天皇)も、中大兄王子の弟ではなく、新羅の金多遂という中流貴族で、やはり倭国に工作員のような役割で送り込まれた人物として設定されていた。 小説ならそれでもいいが、不比等の業績を歴史的に評価しようとする場合は、やはりちゃんとした歴史書を読まないとまずい。 この叢書を読んでみて、確かに不比等は日本史上、一、二番目にくる政治家といって過言ではないと思った。小説に出てこなかった事でも、銭貨の鋳造、年号の使用、災異対策、律令遵守の徹底など本当に沢山の業績があり、現実の状況に対応して非常に緻密に広範囲にそして旺盛に政策を実行したという感じだ。 彼は記録上31歳から判事という官職で登場してくるが、その前から(おそらく二十歳すぎから)、宮中で天武天皇か鵜野皇后(後の持頭天皇)の眼につき、活躍しはじめたようだ。 天皇家への助言が、よほど素晴らしかったのだろう。黒作懸佩刀の話などからも相当信頼されていた事がわかる。政界へ出る前にまず天皇家の信頼を勝ちとった様だ。 彼は当時の倭国(日本)の中で飛びぬけた識見と能力を持っていただけに、また大織冠・内大臣藤原鎌足の子としての出自も働いて(当初は壬申の乱の影響で悪く働いたが)、31歳で官職に就くとすぐに出世し頭角を現す。 彼は、陰の最高実力者であり続けながら、天皇から太政大臣に就くよう要請があっても最後までその地位に就くことはなく、右大臣で亡くなった訳だ。 『覇王不比等』のあとがきに「生前の不比等は、左大臣になることも、また太政大臣になることも望まなかった。彼の欲したのは地位や名声でなく、自分の理想を完遂できる実権であった。」と書いてある。またこの本でも不比等の性格を「勤勉誠実で、進取の気性に富み、その心は忠誠心に富んでいた」とある。 前の記事でも書いたが、太政大臣を望まなかったからといって、地位や名声を望まない、忠誠心に富んだ無欲で勤勉誠実な男と単純に決め付けるのは、ちょっとおかしいと思う。やはりこちらの叢書を読んでも思うのは、不比等の一族の繁栄を願う欲望の強さである。 見かけ上の地位や名声を欲しなかったのは、そんなことより、人事権などを押さえ、現実の権力を欲したのであり、現在の歴史家が見ても旧豪族勢力VS新興勢力と誤解してしまうような、実に上手い人事を行い、専横と呼ばれるのをできるだけ上手く回避していたように思われる。 自分の死後を考え、一族の未来永劫の繁栄のために勤勉誠実に天皇家に仕え信頼を勝ち取ったのであろう。それを純真な忠誠心などからくるものと考えるのは、ちょっとお人好し過ぎる評価のように思う。彼の採った後宮策を見てみるがいい、その繁栄を永久的なものにするために、天皇家と藤原家の一体化を(天皇家の信頼の上であるとはいえ)強引に推し進めている。それをまた彼の一族の政界で活躍できる地位にあるための後ろ盾としている。 そう一部で批判してみても、不比等のやった仕事は、当時にあっては革新的な感じを受ける。まるで現代の優秀な官僚がタイムカプセルに乗って7世紀後半に飛び、不比等として生まれ変わって活躍したかのような感じなのだ。政策もそれまでになく緻密だし、非常に広範囲な仕事をやっている。まさに「日本という国を作った男」だ。 幼少時に田辺史という学者に預けられて英才教育を受け、その高邁な識見と卓越した指導力で律令政治を確立させた不比等。その多彩な才能を文学や学問を普及させただけでなく、国内政治のみならず、対外的にも発揮。律令制定だけでなく、国史(『日本書紀』)編纂などによっても、日本を一流国家として唐に認識させ、朝貢国としてではなく唐と対等な国家として付き合うまでに日本を押し上げたその手腕は、やはり素晴らしいといわざるを得ない。 稀代の英雄というものは、洋の東西を問わず、欲も凄まじいが、業績も素晴らしいものだ。彼の欲は欲として評価し、業績は業績として評価すべきであろう。 その業績の割には、あまり有名でない不比等。もっと多くの人に知って欲しい人物です。お薦めの一冊です。 (この記事は七尾市立中央図書館(ミナクルから借りてきた本をもとに書いています) ここまで読んで評価してくださる方は、できれば下のバナーをクリック↓してくださると有り難いです! ←ランキングに参加しています!
by une_genzaburo
| 2008-09-11 20:08
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