やりなおし高校の化学
斎藤 勝裕 / / ナツメ社
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私は高校生の頃、化学者を目指していたが、今では進む方向を変え、かなり遠ざかってしまった。色々な最新化学事情などに関してなど今でも関心は持ち続けているが、少し忘れた事も多い。また所詮高校で習った化学程度である。新しい発見や動向もあろうし、知らないことも多い。
最近、一から化学をちょっと勉強してしてみようかと考えていたところ、(七尾市本府中)図書館へ行ったらこの本が目に留まった。やり直すなら何も難しい本で躓くことはない。内容が理解できる易しいもので一応復習お浚いするのは、いい手だと思い、迷わずこの本を借りてきた(同時に『やりなおし 高校の物理』も借りてきた。こちらも読了後紹介したい)。
Amazon.co.jpの本の紹介では「教科書の化学ではなく、魅力的な生きている化学を元に、大切な部分を楽しくわかりやすく紹介する。イラストや図版、具体例を豊富に盛り込んだ、読み物として楽しみながら化学の知識が吸収できる一冊。 」(「MARC」データベースより)とある。
昔化学を学ぶのに苦労した人で復習をしたい人や、現に化学を学んでいる人たちに、受験で学んだ(学んでいる)教科書の化学でなく、本当の化学というものはどんなに魅力のある学問かを易しく説いた本といえばいいだろうか。
タイトルに「やりなおし」という言葉があるように、最初の第1章あたりは中学生か小学生に教えるかのような内容から説き始める。こりゃちょっと簡単すぎたかなと思うのも束の間、第2章あたりからは、徐々に詳しくなっていく。多くの人々が興味を持つビッグバンから宇宙の構造、それとの類似比較で原子の構造を述べていく。
勿論高校の化学の参考書などから比べると、かなり簡単に紹介しているが、それでも結構詳しい内容までも教えている。私は今から30年くらい前の高校の教科書をはっきり覚えていないが、面心立方格子や体心立方格子などといった金属結晶の構造や、それに有機物質などの異性体のシス型、トランス型など習っただろうか?また共有結合の結合手(価標)の角度など習っただろうか?、今なら勿論知っているが、高校の時だったかどうか覚えがない。
また平易な本とはいえ、初めて知った(気付かされた)事も幾つかあった。例えば原子の周期表に関して、同じ周期に属する原子は、原子番号が大きくなるほど原子は小さくなるというのだ。意外だった。
私が化学を学んだ頃は、まだアルカリという言葉を頻繁に使っていた時代である。今回あらためて酸性と塩基性の定義など、復習させてもらった。アレニウスの定理、ブレンステッド・ローリーの定理、そして高校時代、適定検査の問題でいやというほど計算したペーハー(pH)の考え方など、受験など考えずに読むと本当に楽しいものだ。
教科書や高校の参考書と違い、この本は化学の本質を不思議に思えるほどよく理解できるように教えることを重視している。では内容が易しいに徹しているかというとさにあらず、無機化学や有機化学の化学物質の種類についてや、反応に関しては、私もかなり忘れてしまったものや、高校時代おそらく習わなかっただろうというよな実際的な内容に関しても結構出てくる。
宣伝文句通り確かに理解し易い本だ。また忘れていた官能機名(この「官能基」という名前さえ忘れていた。(苦笑))なども色々思い出させてくれた。本当に復習になった。次は少し詳しい化学本を読んでも大丈夫だろう。これからもどんどん化学関係の本をこのブログで紹介していきたいと思う。
この本の最後の第6章は「化学は生命と環境を支える」で、DNAなどの遺伝子に関する話や環境問題なども出てくるが、環境問題は幾つかの内容は衝撃だった。
DDTやPCBの食物連鎖による生物胎内への蓄積は、イカなどの魚介類に通常濃度の何百倍、何万倍という高濃縮に及んでいるという。また石油燃焼によるCO2(二酸化炭素)の排出量は、分子量から計算すると石油の重さの3倍ものCO2を空気中へ排出していることになるという。言われて見て初めて気付き、驚いた。他にもフロンによるオゾン層の破壊や環境ホルモンなど色々出てくる。環境問題に対しては、一人一人できるだけ正確な化学の知識を身に着けて、真剣に取り組む問題だと思った。
お薦めの一冊です。
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