創造性への対話―江崎玲於奈対談集 (1974年)
江崎 玲於奈 / / 中央公論社
ISBN : B000JA1WFS
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今回の本は1974年発刊のかなり古い本です。著者は、江崎玲於奈氏、勿論あのノーベル物理学賞を受賞した江崎氏だ。
この本は、江崎玲於奈氏がトンネル・ダイオードの発見の業績に対して1973年にノーベル物理学賞を受賞した翌年、湯川秀樹氏や堀込庸三氏など多くの日本人と、日本人の(科学的)創造性について話し合った対談集です。
対談者は、湯川秀樹氏、堀米庸三氏(西洋史家)、大庭みな子(芥川賞受賞作家)、司馬遼太郎氏(作家)、杉浦栄三氏(中日新聞論説主幹)、早石修氏(医学部教授)、川村肇(固体物理学)、森山欽司(科学技術庁長官)、江藤淳(評論家)、植村泰忠氏(理学部教授)です。
読んでいても、かなり今日との違いが感じられ、それだけに当時の雰囲気が漂い、そういう意味でも興味もそそられるような、色々な意味で興味をそそられる本です。
内容としては、日本人の創造性について対談しているので、その観点からの日本人論のような感じになっています。
私が、読んでいてなるほどと思った内容を参考のために下に少し記す。
創造性のためには、西洋人のような強靭な、持続的な思考力も必要だが、もう一つ対話という意味のダイアローグが日本人は弱いとか必要ということなど何度も言っている。私なども、そうだ。本は読むけど、あまり対話は得意ではない。西洋の科学者は、日本人の科学者と比べると、精力的な対話を通して情報を得たり、思考を深めていくことが多いことを指摘。
西洋人と日本人の科学観の違いも述べる。日本は、明治以来、西洋に追いつけ追い越せということで、積極的に欧米の科学知識や技術の成果を導入したため、科学技術というような言い方が普通となっているように科学と技術が1つのまとまりのように受け取られている。
それに対して欧米ではサイエンスというものはフランシス以来科学思想として発達し、1つの科学哲学として存在しているが、日本の科学には哲学がない。単に技術の基礎知識のような感じで受け取っているなどと指摘。
江崎氏は、サイエンス(科学)とエンジニア(技術)は、全く別なものと認識する必要があると述べる。
読んでいて面白かった言葉を抜書きする。
「日本の社会は、半導体の技術的なことにおたとえるなら、シリコンの単結晶の上にトランジスタやダイオードの機能を組み込んだ高密度集積回路(LSI)のようなものです。能率がよくて強いが、どこかが悪くなると、そこだけ直すことが出来ず、全部を替えなければならない欠点があるわけです。それなのに日本の社会は、新しい問題が起きた時それをはっきりとらえず、部分的修正でうやむやにしてしまう。」
読んでいて大笑いをしてしまった。30年以上経ってもいまだに全然変わっていない!
また「日本の科学者は、ある事柄について、それが重要であるかないか自分で判断できない場合が多く、したがって外国で重要と判断されたことを輸入してきて、それを発展させることしかしないでしょう。このへんはカネでは解決できない問題ですね。」
科学者に限らず、何事も世界で評価されないと、高い評価や認識が得られない。これもいまだに一つも変わらない日本の特徴ではなかろうか。
川村肇氏との対談では、受賞理由となったトンネル・ダイオード関連の専門的な話が出てくるが、殆ど理解できなかった。まあそんな事は気にせずに読めばいいのではないだろうか。川村氏との対談でも、専門の話がわからなくても両者が言いたいことは大概わかる。
高名な科学者の本と言ってあまり敬遠しない方がいいと思う。
お薦めの1冊です。
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