(この作品に関しては、ほぼ似た内容を
「源さんの書評」にも採り上げました。この本の書評は
ココに書いてあります。)
先日
『草賊』(戸部新十郎著・毎日新聞社)を読了したことは、このブログ内の記事でもお伝えした。その本が実は
今は『蜂須賀小六』と題を改め、その中の「草賊の章」という1章になっていたとこがわかってから、何とか早く続きを読みたいと思って、幾つかの図書館で探していた。そして七尾市本府中図書館(七尾サンライフプラザ内)の文庫本のコーナーのところで、この本を見つけ、早速借りてきて読んだ訳である。
この戸部新十郎氏は、私が住む
七尾市が誇る地元出身作家である。杉森久英氏なども直木賞をとったので有名だが、私は杉森氏はちょっと爺臭くて、戸部氏の方が断然好きである。七尾市はもっともっとこの作家を顕彰してもいいと思う。
話がちょっとそれてしまった。この本は、蜂須賀小六と義兄弟だった前野将右衛門の子孫が書いた「武功夜話」(尤も偽書という説もあるが(私は本物と思っている))の内容は、反映されていないらしく、将右衛門が出てこないほか、信長と生駒家及び吉乃の関係があまりでてこない。
最近の作品は、遠藤周作氏、佐藤雅美氏、浜野卓也氏など、ほとんど「武功夜話」の内容が取り入れられている。司馬さんも、おそらくとりいれているはずだ。
蜂須賀党という名は現在では川並衆の中の一つの党といった感じで解されていますが、川並衆という言葉も、この小説の中では一、二度出てきただけで、濃尾境界付近の三川流域の川並衆の親玉というより、有力土豪、土臭いイメージで書いている。それは仕方ないことだと思う。でもそれを補って余りある力量で書かれ、決して他の作品にひけをとらない作品に仕上がっていると思います。
前にも書いたが、
私は日本の武将の中でこの蜂須賀小六正勝が一番好きである。この戸部新十郎氏も、どうも私が小六を好きな点に、興味を覚えるらしく、他の作品以上にそのあたりの性格を描き出しているように思う。
人に尽くし(ここでは秀吉)、本当は一番の功労者であるのに、誇ることもなく、ただ秀吉が立身出世し秀吉が喜ぶことを喜びとする。普通は功名を競い、出来るだけ出世しようとするのだが、名利には全く無頓着、そぶりはほとんどない。何せ、以前は自分の家来だった秀吉に仕え、それもその人が好きで、一生懸命仕えるのだ。何ともカッコイイではないか。私は、こういう人物こそ、男の中の男だと思う。その上に、非常にシャイで、息子(小六)の事を心の中ではよく思いやっているが、それを表には出さず、空とぼけたりする。何ともいい親父ではないか。
ここで言い忘れたことを思い出した。この本の中に出てくる蜂須賀小六とは普通の場合と違い、蜂須賀小六正家及びその息子蜂須賀小六家政(または政家)をさしている。いわば小六と名乗った父子二代にわたる歴史小説となっているようだ。
「草賊の章」(「草賊」)では、墨俣城を築いたあたりで終わっていたが、この「卍旗の章」では、その後から、大阪湾での第一回目の織田水軍(九鬼水軍他)VS毛利水軍(村上水軍、乃美水軍他)が行われ、織田方が敗北したあたりで話は終わっている。
ところで卍だが、これは蜂須賀家の家紋。小六も黒い陣羽織の背に卍を白く染め抜かせ、先頭を切って駆け抜けた。家臣はそれを追いかけるように敵陣へ突っ込むのである。元野武士だろうが、これこそ武士の指揮官の鑑である。男である。こんな終わりに来て、また余談となってしまった。
まあとにかく本当に面白い。続きの章は「西海の章」ということで、最終章となる。ほんとにわくわくしてきて続きが楽しみだ。これからまた布団の中に入って、読むつもりである。(^^)
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