『陰陽師 鉄輪(かなわ)』(文藝春秋)は、勿論、
夢枕獏氏の陰陽師シリーズの作品で、今回は村上豊氏の絵も沢山盛り込まれた作品となっている。
《 これは夢枕獏氏の陰陽師シリーズの作品である。私の書評のコーナーや、この読書日記では、まだ採り上げたことが無いが、実はこのシリーズの作品もほとんど読んでいる。陰陽師ファンの一人のつもりである。
中能登町の鹿島図書館で見つけて、まだ読んだことが無いような気がして借りてきた。あと同じシリーズの『陰陽師 瀧夜叉姫(上・下)』も借りてきた。
この『鉄輪』の話はしかしながら、読んでみると、以前読んだ『生成り姫』の中の「丑の刻参り」「鉄輪」「生成り姫」の3話の内容や登場人物などを少し変えて書き換え、その上で村上さんの絵を沢山副えて、つくり直したもののようだった。
ただし他にも、ほぼ同じ内容の舞踊劇の台本として書かれた「鉄輪恋鬼孔雀舞(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)」という作品も併せて収録されていた。
「鉄輪」の話の内容。藤原為良に捨てられた女(徳子姫)が、毎夜丑の刻に、貴船神社に参り、藁の人形で為良を呪っていた。それを見た神社の者が、その行為を辞めさそうと、その女が出向いてくるのを待ちうけ、今晩不思議な夢を見て、汝らしきものがきたら、今夜を最後に汝が願い聞き届けたり、「身には赤き衣を截ち着、顔には丹を塗り、髪には鉄輪(かなわ)を戴(いただ)き、三つの脚に火を灯(とも)し、怒る心を持つならば、すなわち鬼神となるべし」と伝えた。
しかしそれを聞いた女は喜んだ。そしてその後、言われた格好で為良の邸に現れる。源博雅から、事前にその話を聞いて事件に対処するために安倍晴明は、準備をして女を待つが・・・・・
ただし「鉄輪恋鬼孔雀舞(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)」では、鬼に生成りになる女は、徳子姫で変わりはないが、女を裏切る相手が、藤原兼家と変更されている。
絵本なので、2時間もあれば十分読める本である。皆さんも、村上さんの何とも言えぬユーモラスでいて、なおかつ話に併せ、どこかもの悲しい絵がまたとてもいい雰囲気を本の中に醸し出しています。皆さんも読んでみてはいかが。
最後に、私はNHKの「陰陽師」も、映画の「陰陽師」も全て観ているが、映画の晴明・野村万斎も悪くは無いが、原作に近い雰囲気を醸し出していたようなのは、NHKの「陰陽師」の安倍晴明こと、稲垣吾郎の方だった気がする。あのあまり力まぬ「呪」の説明の仕方など、私が本で読んだイメージとぴったりだった。またNHKで続編が作られる事を期待したい。 》