『蜩ノ記』(葉室凛著・祥伝社)と同じ(架空の)豊後羽根藩での、『蜩ノ記』の事件から2年後から始まる話とあったので、続編かと思ったら、主人公は全く違った人物で、登場人物も全くと言っていいほど別でした。
よってこちらだけ読んでも全然支障はありません。
読んでいて私はフト、水前寺清子の『いっぽんどっこの唄』の「♪襤褸(ぼろ)は着てても心の錦~」という歌詞をちょっと思い出した。
日本人が好きな武士の矜持のようなものを主人公に感じた。
「落ちた花は二度咲かぬ」という言葉に抗してでも、もう一度何とか綺麗な花を咲かせてみようとする主人公・伊吹櫂蔵やそれを助けようとするお芳の姿に、何度も声援を送りたくなった。
どんなに落ちぶれようと、心は決して卑怯な者になびかず、蔑みを受けようとも、清く正しく振舞うことによっって再び美しい花を咲かせる夢を抱いて、安楽に死を選ばずに、耐えて耐えて生き抜く。
人生をただ何となく生きることになれてしまった自分に、喝を入れてもっと真剣に生きねばと反省させてくれた。
人生の価値は、やはり生き方にあるのだと思う。
いい言葉も多々出てきた。1つ挙げる。
「ひとはおのれの思いのみに生きるのではなく、ひとの思いもいきるものだ」.....櫂蔵が巻末近くで語る言葉です。
人間は認識しているしてないに関わらず、自分が享受しているありとあらゆる事柄は他人に助けられ今がある。
恩などというものは大抵は返せない場合がほとんどではないだろうか。
自分に深く心掛けてくれた人がいるならば、その思いを無駄にせぬよう、自分が世に貢献することで返していく。叶えていく。
私もそんな生き方が出来ればいいが.....
まだまだ試練が足りないですわ <(^^;
参考にあらすじを書こうと思ったが、疲れてきた。
面倒なのでネット上の内容紹介(「BOOK」データベースより)を転載させてもらいます。m(_"_)m
「俊英と謳われた豊後・羽根藩の伊吹櫂蔵は、狷介さゆえに役目をしくじりお役御免、今や“襤褸蔵(ぼろぞう)”と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。前日、何事かを伝えにきた弟を無下に追い返していた櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から弟と同じ新田開発奉行並として出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がる決意を固めるが…。」
私の感じでは『蜩ノ記』より良かったような気がします(『蜩ノ記』の内容を忘れただけかな??)
時代小説の傑作です。
おススメの一冊です