私は大の佐藤雅美ファンである。
この本で縮尻鏡三郎シリーズの第8弾になる。
大番屋の元締でその仕事を勤めながら万(よろず)相談事を受け付けているという拝郷鏡三郎を主人公とした小説だ。
NHKで以前ドラマ化したこともあるのでご存知の方もあろうが、拝郷鏡三郎が「縮尻」のあだ名が冠せられたのは、以下のような理由による。
彼は元々評定所の留役までのぼった御家人だったが、上司から命ぜられたある仕事が思わぬ展開になり、彼に尻拭いさせる形で責任を取らされ免職。それがもとで縮尻御家人と呼ばれるようになった訳だ。縮尻は勿論「しくじった」とかいう時の「しくじる」を宛字したもの。
私は、一応このシリーズのこの巻以前のものを含め全て読んでいる。
ただ今回は縮尻鏡三郎シリーズの1冊とはいえ、鏡三郎はお義理程度に登場するだけ。全然主人公的役割をしていない。
話だが、冒頭、江戸でも越後屋三越と並ぶ呉服問屋・日本橋の白木屋の地面をある老婆がここは先祖の拝領地としてもらった地所ですと町奉行所に訴える、ところから始まる。話を聞いてみると、その老婆の後ろに控えた軍師らしき浪人が、話が展開するうちに実は意外な人物であることがわかってくる。これが今回の主人公といっていい人物だ。
鏡三郎らは当初その柴田帯刀なる浪人を、元いた藩屋敷などを通じて色々調べるが、調べてみると、人の命を奪うことを何とも思わぬ凄腕で、色々な事件に関わる怪しげな男らっしいとわかる。それで、別のある殺人事件の犯人ではとと疑ったりする。
しかし中半からは帯刀の素性も分かり、当初想像していたのとはかなり違う人物であることが次第に分かり、ついには居酒屋で語り合うほど意気投合する。
後半からは、そういう訳でがらっと前半と話の向きが変わるが、あまり書くと興が醒めるのでこの辺にしておく。・・・
筋立てが巧みでストーリーテラーの佐藤雅美氏の人気時代小説、第8弾オススメです。
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