『銀二貫』(髙田郁著・幻冬舎)を読了した
一晩で一気に読み終えた。
髙田さんの本は、『みをつくし料理帖』シリーズを読むようになってから、よく読むようになった。
まず最初にどうでもいい感想かもしれないが、一番はじめに思ったことを書く。
この本の前を読む前に宮部みゆきさんの『桜ほうさら』を読んだ。『桜ほうさら』の主人公の想い女・和香は顔半分は痣のように見えるという設定であったが、偶然にも、こちらの『銀二貫』の主人公の想い女・真帆にも、途中からであるが、大火で火傷し、顔半分醜くなってしまうという似た状況が出てきた。偶然だがよく似た設定だなと思った。
それではあらすじを少し書こう。
舞台は江戸中期。ある日大坂天満の寒天問屋・井川屋和助が京都郊外深草郷で、仇討ちに遭遇した。和助は、討たれて父を亡くしたまだ子供に過ぎぬ鶴之助も討手に討たれそうになっていたのを、間に割って入り銀二貫で助ける。
その後、鶴之助は和助に引き取られ、名前も松吉と改め、寒天問屋の丁稚として、商人の厳しい躾・生活に耐え、第二の人生を歩む。
和助と番頭・善次郎には1つの夢があった。
彼等が信心する天満宮神社にいつか銀二貫を寄進したいという願いである。
実は和助が鶴之助を助ける際、使ったお金もそれに使う予定だった。この事件に行きあった事により、その祈願成就は遅れる事になったのだが、その後も災難が続き、成就一歩手前で何度か延期になる。
松吉は、亡き恩人の夢や、和助や善次郎の夢・天満宮への銀二貫の寄進に向けて、苦心惨憺の努力を続け大きく成長し、ついには彼自身開発した弾力性が強い糸寒天を使って、それまでになかった洗練された羊羹(煉羊羹)も開発し、夢も・・・という話である。
(この小説に書かれた説明によれば、寛永年間の後半に至るまで、羊羹といえば蒸羊羹しかなかったようだ)
大体こんなところかな。
著者の髙田郁さんは、昔私もよく読んで泣かせてもらった山本周五郎氏の影響を強く受けた作家なので、泣かせ方までよく似てる感じがする。
40過ぎて涙腺が緩んだ大人(現在既に51歳)には、たまらん作品が多い。
特に今日は、寝不足のせいもあろうが、後半やはり目頭が熱くなり、涙の淵から自然と溢れ出た。
お薦めのいい作品である。
『芭蕉庵捕物帳』(新宮正春著・福武書店)を読了した
松尾芭蕉は、伊賀忍者の首領・百地三太夫の血筋をひく子孫というのは本当だとして、彼自身は忍者としてではなくとも、伊賀者として動いていたことあるのかな?と、ふと思ったが・・・
この小説では河合曾良はじめ、多くの弟子が実は伊賀者(隠密)として出てくる。
可能性はゼロではないにしろ、フィクションだわな!
ところで、今までに歴史的有名人が捕物に関わる小説、久生十蘭『平賀源内捕物帳』、笹沢左保『俳人一茶捕物帳』シリーズ、同『玄白歌磨捕物帳』、築山桂『緒方洪庵事件帳〜浪花の花』色々読んできたが、今回は松尾芭蕉だった。
まだこういう趣向の捕物小説色々ありそうだな。
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