<百字紹介文>
空海・高野山検定公式テキスト(総本山金剛峯寺と高野山大学が監修)である。空海の生涯、言葉、高野山の紹介等が平易な文章で纏められたガイド本。検定を受験するしないに関わらず空海及び高野山ファン必読の本だ。
<百字紹介文>
表紙には、上記のタイトル表記の他に「空海・高野山検定公式テキスト」及び「絶対にしっておきたい!」という強調語も付記してある。
私は別に空海・高野山検定を受けるつもりはないが、空海は大好きな歴史上の人物の一人でもある。日本の宗教史上では、私の中では親鸞、道元と並んで3本の指に入ると思う。
我家の家業も景気が良ければこの検定を受けるために出かけてもいいのだが、生憎ここ十数年ずっと不景気である。
この本自体も買ったのではなく、図書館から借りてきたものだ。
興味が尽きない空海をさらに深く知るために読んでみた。
今までに空海や真言宗に関しては、司馬遼太郎著『空海の風景』や陳舜臣著『曼陀羅の人』、服部真澄著『最勝王』、夢枕獏著『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』などの小説、ひろさちやなど宗教思想家やその他宗教家の本など多数読み学んできた。
読めば読むほど知りたくなる人物といえよう。
この本は、空海・高野山検定の公式テキストというだけあって、各項目を見開き2ページで非常にうまくまとめている。
ちなみに章名だけ参考に列記すると
第1章 真言宗の開祖 空海の生涯
第2章 密教の教え 空海の言葉
第3章 密教の聖地 高野山の至宝
第4章 世界遺産の霊場 高野山巡礼
巻末に「高野山略年表」と高野山365日(1月から12月までの主な行事と法会)が掲載されている。
歴史家の書いた本ではないので、超人的というか神がかり的な業もそのままエピソードとして伝えているが、そのようなものは別に注意せよといわれなくとも、史実ではないと分るからこれで十分である。
むしろそのようなエピソードも含めて知ることは宗教史的には意味ある事だと考える。
今回は図書館(七尾市立中央図書館)から借りてきたが、これだけ上手くまとめてあるのを見ると、やはり買って持っておきたくなった。
紹介されている空海の言葉はそんなに多くはないが、第2章で幾つか挙げて解説している。
現代に通じる言葉が多かったようじ思う(そういうものを特に集めたのかな??)
例えば「物の興廃は必ず人による。人の昇沈は定(さだ)んで道にあり。」
何時の世にも人材の育成こそ興起の要なのだろう。
またこういうのもあった。
「求道の志は己を道法に忘る。なお輪王の仙に仕へしが如し。」
こちらは先ほどの句と違って解説が必要だろう。
本の中の現代語訳ではこう書いてある。
「求道の志というのは、その教えを学ぶために自分自身を忘れ、時としては自分自身を犠牲にしてでもその教えを学ぼうとすることである。それあたかも釈尊が前世で教えを学ぶために、仙人を師匠として仕えたようなものである。」
最近の風潮は、辛い求道を避けるため、言い訳をつくり自分にも他人にも易しい道を選択し進むことにあるように思う。しかしその道は益々自分を低く押し留め、よって成長を抑制し、ひいては日本を衰えさせる事に繋がっていくだろう。
「物の興廃は必ず人による」と知覚し、まず自分からその状況を打開すべく求道の道に自分自身をも犠牲にして邁進すべきなのだろう。
しかし(こう書く私も)有言実行はなかなか難しい。
今後も敬仰する空海の事績・言葉などを折りにふれ勉強し、自己の目標として人格の陶冶に努めたいと思う。
空海・高野山検定を受ける受けないに関わらず多くの人に薦めたい一冊である。
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