1987(昭和62)年ノーベル医学生理学賞を受賞した利根川進氏が、それから一年ほど後の10月1日に行った特別講演と、その5日後に、当時の協和発酵社長・加藤幹夫氏と行った対談が収められている。
ただしこの本は、非売本である。かなり古い本であるが、私は最近ブックオフで見つけ100円で購入した。
利根川進氏がノーベル賞を受賞した理由は、「抗体多様性生成の遺伝原則」である。
私が説明すると不正確かもしれないが、あえて簡単にいうと、脊椎動物以上の動物の体内において、免疫システムの中心的役割を担う抗体が、非常に膨大な種類の抗原に対してどうして、どうやってそれに対応できる多様性を作り出しているのかといった謎を改名した功績だ。
その業績で、利根川氏は、ノーベル医学生理学賞をその年単独受賞をしている。
最近、平和賞や文学賞以外で、ノーベル賞の単独受賞は珍しくなってきた。
凄いことである。もうその後、昨年の山中伸弥氏をはじめ多数の受賞者を出しているが、それでもここ数十年の日本人の受賞者の中では、私は一番価値が高い受賞でないかと思っている。
内容的にも、この謎が解明できるまでは、この謎は大いなる謎だった。それをいとも簡単、という訳ではないが、あっさりと解明してしまったのだ。
私はそういう訳でこの利根川進氏を日本人の科学者の中でも取分け高く評価している。
ただしこの本では、それほどノーベル化学賞を受賞したその業績の説明は詳しくはない。
そういう期待をこめて読むなら他の本がいいかもしれない。
最近、利根川氏は、脳科学・神経科学の方に関心を持ち、そちら関係の本の方がより多く出ているように思う。
このブログでも『精神と物質』(利根川進&立花隆、・文春文庫)、『私の脳科学講義』(利根川進著・岩波新書)など紹介している。
今回はただし、自分にとってはそれほど収穫はなかったように思う。
勿論、大した本ではないと言う訳ではない。
私よりむしろこれから科学者を目指す若者が読むべき本だといいたいのだ。。
科学者としての資質、科学者となるためにはどんな準備・勉強が必要か、日本と欧米などの科学研究のあり方の違い、科学者として成功した理由の推測・・・
講演録の方にしても、対談にしてもそういう話が色々出てくる。
今では、利根川氏はかなり脳科学・神経科学に傾斜しているが、この頃はまだそこまではハマっていない感じだ。脳科学はまだ趣味の段階のようなことを言っている(勿論謙遜の言葉であろうが)。
そういう訳で(私も現在かなり興味をもっている)脳科学の方の話も、まだあまり書かれていない。
もっと色々この本の事を紹介してもいいのだが、この本はかなり昔に出版された本だ。
しかも非売本。入手は難しかろう。
よって紹介は、この辺でやめておく。
あしからず。
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