<百字紹介文>
壬生浪士や攘夷派の志士が暗闘する風雲急を告げる幕末京都。そこを舞台に「目利き」「見立て」の才で道具屋の若夫婦が強く温かく真摯に夫婦愛で生きる姿を描く。坂本龍馬他、歴史上の人物も多数登場して面白さ倍増!
<詳しい紹介文>
失敗した。シリーズものであるのに気づかず最後まで読んでしまった。この『赤絵そうめん』は、この「とびきり屋見立て帖」シリーズの第3弾であった。
しかしあまり不都合は感じなかった。後日、第1弾、第2弾も読むことにしたい。
図書館の新規購入本のコーナーに並べてあったのだが、その表紙のほんわかと明るい絵が一目で気に入ったのだ。表題作の一場面を絵にしたもののようだが、爽やかで明るい赤絵の椀に素麺を入れた絵をドーンと前に描き、その向こうには親しみ深い丸顔の主人公夫婦らしい2人が、その椀があるこちらを見ながらかしこまっている構図である。
きっと小説の内容も、人情味溢れたあたたかな内容の時代小説ではなかろうかと推測して借りてきたのだが、予想通りであった。
時代背景だが、幕末の京都。小説の中には、坂本龍馬、芹沢鴨、近藤勇、桂小五郎、三条実美など歴史上有名な実在の人物も登場する。
主人公は、茶道具や掛け軸、屏風・・・様々な道具を売る道具屋「とびきり屋」を営む若夫婦、真之介とその妻‘ゆず’である。
「わけありの道具を「見立て」、癖のある人々を「目利き」しながら、ふたりは少しずつ成長してゆく―。動乱の京都を舞台に、「道具」と夫婦愛を描」いた作品のようだ。
一応今回読んだ内容に基づきキャラクター紹介する。
まず真之介。彼は捨て子であったが、京都の道具屋の大店・からふね屋の善右衛門に拾われて育てられ、番頭にまでなった男。一方、ゆずは善右衛門の娘。
ゆずは茶道の東の家元の若旦那・宗春に見初められ、許嫁(いいなずけ)となった。しかし(途中の経緯を知らないので明確には言えないが)ゆずは、どうも真之介と相思相愛でかつ宗春を嫌ったのだろう、真之介と駆け落ちをして、一緒になったようだ。
茶道の東の家元に出入りし上客とする‘からふね屋’善右衛門としては、飼い犬に噛まれ、宝まで盗まれたようなものだ。善右衛門が真之介に‘恩を忘れるな’とか‘恩を返せ’などと恩着せ言葉を吐く場面が何度かあるが、最後まで読んでみるとそれほど嫌味な人間でもなさそうだ。
キャラクター的に少し粘着質でその上、変な趣味があるのが、東の家元の若旦那・宗春。真之介・ゆず夫婦と因縁深い関係にあるらしく何ども登場する。
また先にあげた坂本龍馬をはじめとした歴史上の人物達も、皆「とびきり屋」の客として登場する。その他、(こちらは架空の人物のようだが)豪商の銅屋(あかがねや)吉左衛門、廻船商の隠居・三国屋権太郎などが主な登場人物である。
収録話は、第1話「赤絵そうめん」、第2話「しょんべん吉左衛門」、第3話「からこ夢幻」、第4話「笑う髑髏(しゃれこうべ)」、第5話「うつろ花」、第6話「虹の花」
各話の粗筋を書くと長くなりそうなので辞めておくが、各話では「とびきり屋」の夫婦が、お客のために道具を見立て、それぞれの客に満足してもらいエンドとなっている。
道具屋というものは、この本を読んでなるほどと思ったが、道具を売るだけでなく、金持ちなどの倉庫に蔵されている道具を彼らの「目利き」で整理したり、先ほど言った「見立て」のお手伝い、例えば茶会の席の設定などもしたらしい。
夫婦で始めた店ながら、今回は銅屋さんに見込まれ二人はチャンスを掴む。
坂本龍馬が、ちょくちょく店を訪れ、助言をしたり、協力をしたりする。
なるほど龍馬らしいと思う印象深い言葉が出てきたので、最後にちょっと紹介する。
ある場面で、龍馬が‘日本はアメリカのせいで、これから天下国家がひっくり返る’と夫婦に語る。心配顔の夫婦に龍馬は‘だが大丈夫!’いくら天地がひっくり返っても、人の理(ことわり)は一つ。世界中どこでも同じだという。
それでゆずが、その世界に共通するたった一つの理とは何かと問い、龍馬は次のように答える。
「人のためになることをすれば、皆がよろこぶということじゃ」
そうである、確かに宗教は異なれど、この理は変わらない。
本当に龍馬がこういう言葉を吐いたかどうか知らぬが、ズバッと物事の核心をつくところがいかにも龍馬らしい。
他の歴史的人物のキャラクターも上手く掴んでいると思う。
巻末では芹沢鴨がいよいよ行き詰まり、火付けなど乱行に走り出している。次巻あたりで近藤勇に殺されるのかな?
が、はやる心を抑えて、私は次は遡って第1弾、第2弾を読まねばならぬ。
やっぱり失敗したなーーー(笑)
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