<百字紹介文>
「妻は、くの一」シリーズの第3弾。松浦静山にも気に入られ下屋敷に出入りするようになった彦馬は、天文観測を付き合わされたり、随筆「甲子夜話」に載せるネタの為、巷で起きた怪事等を調べるよう頼まれたりする。
<詳しい紹介文>
『妻は、くの一』シリーズの第3弾である。
平戸でのほんの短い夫婦生活をおくった後に失踪した妻・織江を探しに江戸へ出てきた雙星彦馬(ふたぼしひこま)だが、数か月経つがまだ見つけることが出来ずにいた。
彼は前平戸藩主・松浦静山に気に入られ、度々隠居所となっている本所の下屋敷に出入りするようになった。そこに何と織江が平戸藩の秘密を調べに飯炊き女として潜入していようとは知らずに、静山に呼び出されて、天文の話など歓談などしたり、時には「甲子夜話」を書き綴る静山のために巷で起きる事件を調べたりする…。
今回も5話を収録。それぞれ簡単に前半のあらましを書いておく。
第1話「赤いカラス」
ある日静山から、彦馬の友人・西海屋千右衛門が神田明神近くで赤いカラスを見かけたという話を聞く。要はその話を調べよとの静山の示唆だ。彦馬は千右衛門からも状況を聞き、現地におもむく。彼もそのカラスを見つけるが、と同時に不思議な女も見かける…。
第2話「はまぐり湯」
彦馬はある日彼が住む町(妻恋町)の湯屋の2階で転寝をしていた。階下で騒がしくなったので降りてみると、湯船の底に二枚貝の貝殻がバラバラになって一杯あるという。彼が先ほど湯に入った時はなかった筈。誰かの悪戯らしくその日は騒ぎは収まるが、翌日同じ湯で今度は殺人事件が起きた・…
第3話「人形は歩く」
怪異を怖れぬ静山は、物好きにも夜ひとりでに歩くと気味悪がられた人形を仕入れてきた。それは600年程前に製作された中国製の李白の人形だった。正月のある日、彦馬は静山からそれを下屋敷で見せられた。話の成り行きで、その夜静山は上屋敷で泊まる予定だから、代りに彦馬がそこに泊まり看視して実際に歩くか確かめよと言われる・…。
第4話「読心術」
正月三日に、静山と彦馬、西海屋千右衛門、原田朔之助の4人は連れ立って浅草見物に出かけた。凄まじい人出で賑わう浅草界隈は、多くの出店のほか、皿回し、角兵衛獅子、太神楽など大道芸人も沢山いた。その中に今評判の人の心を読み、それを証すかのような賭けを行っている男がいた。静山らは興味を覚えて試ししてみるが・…。
第5話「後生小判」
彦馬の寺子屋に通っていた‘おふじ’が最近来なくなった。他の子どもらに聞くと両国橋の下で見かけたという。「橋の下で」という言葉に引っかかった彦馬が現場へ行ってみると、「後生小判」という変わった店を彼女の親が橋上で開いていた。
あの世でも金に困らぬよう15文で小判を(おふじの親父から)買い、功徳を施すためにその小判を橋の上から投げて逃がしてやるという趣向だ。実は橋の下に‘おふじ’がいて、(客から見つからぬように)泳ぎながらその落とした小判をキャッチして儲けるというもの。
貧しいとはいえ、真冬の水中での過酷な働きに驚いた彦馬は、彼女の父親を説得し、おふじを以前の通り寺子屋へ通わせる事を約束させるとともに、商売の内容も変えさせるが・…
この第5弾では、新たに若き日の鳥居甲斐守も登場する。後に‘’妖怪’と渾名された彼を彷彿させるような行動、蘭癖大名を密偵を使って偵察することなども行う。また織江の上司・川村真一郎もしばらく報告が無い織江に不審を抱き、織江を直接尾行看視しはじめた。彼は、織江を自分の妻にしようと考えていた。
いわば彦馬のライバル、この後の展開は如何に?気になるところだ。
第4弾も近々読んで紹介したい。乞うご期待。
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