<百字紹介文>
「妻は、くの一」シリーズの第2弾。妻を探すために江戸に出てきた平戸藩士・雙星彦馬(主人公)だが、妻は容易には見つからない。前平戸藩主・松浦静山との御目通りも実現。静山の夢とも関わりながら彦馬は・・・。
<詳しい紹介文>
『妻は、くの一』シリーズの第2弾である。
第一弾の方の感想で「めぼしい話がなく、何か物足りない感じがする」といった。こちらを読んで思ったことも、まだ何か全体の一部の話のようで、作者は巻ごとにある程度話をまとめて区切りをつけようというつもりはないようだ。
第10弾でどうも完結するようだから、そこまで読んでやはり一気呵成に読まないといけないのかもしれない。
第1弾は、頭脳明晰だが星のことなど天文に夢中で平戸では変人扱いされていた雙星彦馬(ふたぼしひこま) (主人公)を、江戸という舞台に連れ出すためのプロローグのような巻だったと考えた方がわかりやすい。
失踪した妻(それもある事件に関わった密偵と思われる女)がいそうに思われる江戸へ出る為、遠縁の者を後継ぎにして自分は隠居し出かけるが普通はそんなに簡単には行かぬだろう。
第1弾の巻末で彦馬は、竹馬の友・西海屋千右衛門を通して平戸藩前藩主・松浦静山に御目通の機会を与えられ、連れだって邸(平戸藩下屋敷)を訪問する話が出てくる。仕掛けは単純、第2弾以降で彦馬に活躍させるためのお膳立てだ。
こう見てくるとプロローグに1冊費やした割には、その持って行き方が、ちょっと安直な感じがしないでもないが、娯楽時代小説だ、まあ煩い事はあまり言わない。
勿論、中に収められた話は、幾つかの事件が出て来る。またその謎解きや解決の糸口を主人公の雙星彦馬が見つけるというパターンもあるように思う。
事件の内容も、彼が師匠を務める寺子屋に関わるものや、江戸の巷の事件、彦馬の平戸藩の隠居した前藩主・松浦静山に関わるものなど色々出てくる。
江戸を舞台に、捕物帖的話が出てくるから捕物帖か?というと、そういう感じでもない。南町奉行所・臨時廻り同心の原田朔之助を時折助けたりもするが、巷の事件だけがこの小説の事件ではない。
くの一(女忍者)の密偵が出てくるから忍者ものか?というと、ちょっと忍者ものというには忍者の登場回数が少ない。
では日本を開国したいという夢を持ちそのための資金稼ぎのため密貿易をしたりする松浦静山と、その臭いを嗅ぎつけその動かぬ証拠を掴もうとする幕府側の暗闘を描いた小説か?というと、それもちょっと偏り過ぎている気がする。
彦馬は、時には奇譚を集めて『甲子夜話(かっしやわ)』という本を書いている松浦静山のために、巷の奇譚の真相を調べたりもする。
要はそういったものが色々入ったちゃんぽんのようなものだ。その方がネタが多く、書き続けやすいのだろう。何でもありの「雙星彦馬事件簿」と言った方がイメージが掴みやすいかもしれない。
この第2弾に関する紹介をまだほとんどしていない。
収録話は、第1話「墓場から来た女」、第2話「星の井戸」、第3話「山茶花合戦」、第4話「踊る猫」、第5話「海の犬」の5話だ。各話の粗筋など詳しい紹介はやめておく。
少しだけ(妻)織江の動向を中心にあらすじを書く。
寺子屋が休みの日などを利用して妻を探す彦馬だが、いまだ妻(織江)は見つからない。しかし織江の方は、とっくに彦馬が江戸に出て来たことを知っているが、遠くから見守るだけ。
織江は、一度彼女を憎むくの一と組まされ松浦静山が住む平戸藩下屋敷に下女として入ることになるが、危険を感じて、母とともの毒キノコを食べ食中毒を起こすという狂言を演じて何とか難を逃れる。
その際、相手のくの一は、密偵とバレテ、静山に殺されてしまう。
織江は、中毒から回復後、平戸藩下屋敷に入る手立てを考え、松浦静山が美味しいご飯を炊く者を欲しがっている事を突きとめる。町中で美味いオニギリを売って、静山に近寄るキッカケを見つけた彼女は飯炊き女として雇われ、もぐり込む事に成功する。
ただしこれらの手立ては雙星彦馬に会うためではなく、あくまで密偵としての仕事上、上司の川村真一郎の命令によって図ったことだ。
その後、外出の機会を利用して、将軍家直属のお庭者が多く集まる日比谷御門の桜田屋敷の川村のもとへ報告におもむいた織江は、彼の妻になれ、と言われる。
密偵の仕事が一段落するまでは、川村の妻となる話は進展しないが、この先どうなるか気になる所である。
第3弾も近々紹介する予定だ。乞うご期待!
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