黒岩重吾氏はつい最近平成15年に亡くなった作家だ。古代を舞台にした歴史小説を多く書かれていた作家というのが私の印象だ。私は、彼の作品は、これ以外ではまだ3冊ほどしか読んでいない。といっても性に合わないとかいうのではない。日本の古代には興味が無いわけではないが、他の時代に比べると多少興味が少ないので、こうなったのかもしれない。
この作品は、
『斑鳩宮始末記』の続編とのことだが、表紙をみても、それらしき記述はなかったので、『斑鳩・・・』はまだ読んでいなかったが、読んだ。読むうちにシリーズものではないかと思ったが、後ろの解説を読んで、やはりと思った。シリーズ本は、順番に読むに限る。
ただし作品自体は、この本だけ読んでも何の支障なく読める。廏戸皇太子(聖徳太子)の下で働く秦造河勝(はたのみやっこかわかつ)の部下で、斑鳩宮の犯罪調査の役についている調首子麻呂(つぎのおびと・ねまろ)を主人公とした小説である。中に出てくる事件は架空の話だが、時代というか年代ははっきり示され、その頃何が起きていたかも(時には事件の背景ともなって)古代歴史小説の大家らしくさらりと書かれていて、古代史ファンにはたまらないのではなかろうか。興味のある方には、一読をお薦めする。