<百字紹介文>
岳真也氏の大好評シリーズ「湯屋守り源三郎捕物控」の第7弾である。今回は12年前に起きた付火事件と関連していると思われる連続付火事件を、ライバルの火付盗賊改方の同心と協力しながら解決するという内容です。
<詳しい紹介文>
湯屋守源三郎シリーズの第7弾である。このシリーズは確か昨年7月から読み始めている。勿論既刊は全て読んでいる。
このシリーズの本を読むたびに繰り返しているかもしれないが、一応簡単な登場人物の紹介をする。
主人公は、日本橋南部の湯屋組合傘下の用心棒を勤める源さん。深川堀川町の信濃屋の裏店・おけら長屋に住む住人である。普段の彼の姿は、町人の姿であるが、実は旗本空木(うつぎ)家の三男房で、南町奉行を務める筒見総一郎政則の末弟の空木源三郎である。
長兄の総一郎は、空木家の長男だったが、筒見家から望まれて筒見家に養子となり、出世を重ね江戸南町奉行となった。奉行という立場の為に自身では町中(まちなか)は見回れず、巷間に住む源三郎を通して目を光らせるとともに、時には町方役人を助けて事件を解決するよう密命を与えているという設定。
彼を取巻く主な登場人物としては、南町奉行所・定廻り同心・黒米徹之進、同じく南町奉行所の見習い同心・山木浩太郎、源三郎を慕う女目明し・おみつと彼女の手下、源三郎が住む「おけら長屋」の住人で蕎麦の店・信濃屋の常連(おみつが家主である)達-自称戯作者の関亭万馬、三味線を教えるお香、ぼて振りの六助など。
粗筋を少し述べる。
秋のある日、浅草のこととい湯が火付けで焼失。源三郎の管掌内の湯屋ではなかったが彼はたまたま遠望し駆けつける。外で祖父さんを助けてくれと叫ぶ娘(七重)の願いを聞き、源三郎は亥助を助け出すが肺腑がやられており、亥助は数日後亡くなってしまう。
この亥助と七重の祖父・孫娘は、12年前に付火で焼失した日本橋室町の足袋問屋・大黒屋の隠居と店主の娘で、いわば大黒屋の生き残りであった。この二人を除いた、店の他の者は主人を含め全員がその火事で焼死していた。奇遇にも当時まだ幼子であった七重を助け出したのが、おみつの父親で源三郎の命の恩人・白鷺の銀次であった。
12年前の火事の際、亥助は離れの建屋にいて逃れる事が出来たのだ。彼は火盗改に3箱の千両箱が火付け盗賊に盗まれたらしいと訴えたが、証人もおらず聞き入れてもらえなかったという。これを知った源三郎は今回の付火と12年前の付火は何かしら関係があるのではないかと考え、南町奉行を務める兄の総一郎にも再捜査を始める事を告げる。
それから半月程経った頃、今度は日本橋でも1,2を競う割烹「たまかわ」が付火にあった。その手口は、12年前の付火や先日の「こととい湯」の付火同様、菜種油を使ったものであった。…
これ以上書きすぎると、ネタバレになりかねないのでこの辺でやめておく。
個人的な感想を言えば、事件の真相解明の展開の仕方がちょっと安直かなという気がした。おみつが、七重と その従兄弟・惟八を尾行して得た情報と、悪党の一人を捕まえての尋問で、事件のほぼ全容が急に明るみになる。
尋問の仕方が上手なので・・と小説の中で述べているが、犯人の一味がこんなに簡単に吐くと、読み手にとってはちょっと気抜けする。
今回は火付盗賊改方同心とも協力して事件を解決に導くのだが、その辺も個人的にはイマイチ盛り上がらなかったような気がした。むしろ火盗改と町方との確執を前面に出した方が、難事件という感じになり良かったのではと。
このシリーズはどれも200頁程度の書き下ろしである。事情を推量・斟酌すれば、制限字数で収めないといけないなど作者の側にも色々事情があったのかもしれぬ。
そういう事にあまり拘らねば、娯楽時代小説、捕物小説として十分楽しめる本である。
色々難を付けたが、実のところ私はもうこのシリーズに嵌っている。ホンネは次回作が待ち遠しい。テレビドラマ化してもいいのではないかと思っているくらいだ。
お薦めの一冊です。
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