限定BOX①に引き続き、こちらも「本が好き!」(本好きのコミュニティサイト)から献本として頂いた本だ。
今回献本として頂いたのは、限定BOX①の続きにあたる5巻から8巻(完)までの4巻。
甲賀武芸帳とは、甲賀歴代の忍者によって集められた天下の一代秘密が記されたもので、いわばストーリー展開のキーである。
そこには幕府に不満を持つ者にどういう武家や商人などがいるか等名前が列記されていたり、どこにどういう財宝が有るかなどが書かれているという。よってそれを入手し、それらの者と連絡を取ったり、その財力などを使うことによって、天下を取る事が出来ると言われている巻物で、2巻からなる。
この武芸帳は、この漫画の主人公・石丸の育ての親で忍者の師匠である甲賀流忍者・石雲が以前は守っていた。だがある日石雲は九州霧島の忍者・筑波剣流に襲われ殺されてしまう。そして武芸帳2巻も奪われ、その後その2巻の巻物は、それを欲する者らの間で、何度も奪い奪われ転々とする。
甲賀武芸帳を狙うものは、BOX①と同様、剣流、疾風小僧、柳生十兵衛と柳生但馬守、越後屋などが出てくるが、この後半のBOX②以降展開の様子が少し変わってくる。
まず甲賀武芸帳を狙う者として、新たに由比正雪や宮本武蔵、早打ちジョーなどという外人までが登場してくる。
由比正雪といえば、この当時幕府転覆を計画し失敗した人物だ。彼の仲間として丸橋忠弥が必ずと言って登場するが、この漫画でも出てくる。ただしこの漫画の中に出てくる武芸者の中ではあまり強くは描かれておらず、呆気なくやられる(笑)
当初悪役として登場してきた‘霞のお婆’は、BOX①の終りの方で、他人に喜んでもらうことで幸せを感じる事を知り、次第に善性を現し、石丸の味方となっていく。
また武芸者の矜持からか、私利私欲で武芸帳を狙っていた疾風小僧や柳生十兵衛も、主人公石丸が甲賀武芸帳を奪い返す真意を知り、途中から次第に意識を変えていく。
疾風小僧は、完全に石丸の味方として協力するようになるし、柳生十兵衛は自分を助けた者への恩もあり、恩を仇で返すような非人間的行動を嫌い、父に逆らい行動しだす。
BOX①の方では、武芸帳があっちこっち、とにかく奪い合いが繰り返され、展開も早く頭を整理しながら読まないと、訳が分らなくなりそうな所が多少あった。
が、BOX②の方では、上で説明したような個々の登場人物の心境の変化などから、少し気取った言い方をすれば、人間の善性の回復のようなものが謳われているようにも思う。
現代のドライな感覚の漫画や、手塚治虫や弘兼憲史などの人間性を深く抉って描いたような漫画などと比べると、そのテーマの表現手法などは素朴な感じがする。
近年、社会がギスギスして時に生き難さを感じたりするのは、こういう人間本来の善性、素朴な感覚を忘れてしまったためではないかと思ったりもした。
だが今年3月11日、東北関東大震災が起きて以来、日本も少し変ったように感じる。
何かこういう忘れられていたような人間性を思い返し、その良さを再認識する事が多くなったように思うのだ。
こういう古き良き時代の巨匠の漫画を、復刻版で読み直すことも、同様な意味で非常にいいことだと思う。
昔こういう漫画に親しんだことのある人も、また若い世代の方でこういう漫画を初めて読む人にも、お薦めの漫画です。
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