この本は、日本人で初めて163日間(2009年12月21日~2010年6月1日)という長期の宇宙滞在をし、国際宇宙ステーション(ISS)でのミッションを遂行した野口聡一さんが、宇宙から毎日のように撮り続けた地球や天体の写真を、ツイッターという仕組みを通してリアルタイムで紹介したもので、その一部を採り上げ本にしたものだ。
リアルタイムでは、写真の説明として、ほんの一行程度の文を英語でツィートしたらしい。それらの英文ツィートは、この本の中では勿論日本語に訳されているが、簡単な英文なので、それも一緒によめば英語の勉強にもなる。
野口さんは、地球の美しさは完璧だという。私は確かにどの写真も美しいと思う。特に海が好きな私は青い海が写った写真は皆好きである。ただ正直に言うと、素直にワンダフル!とは言えない写真も幾つかあった。
私のような緑多き田舎に育った日本人としては、緑の無い剥き出しの台地は、たとえ美しく見えても、好きになれないのだと知った。
砂漠の赤い土の写真や、本来は白い色はずの岩塩の平地が、夕方の撮影なのだろうか、真っ赤に染まった木の木目のように見えるもの、オーストアリアのエアーロック近くの、ただただ岩土のみに大地の写真などには、雄大さは感じる。
が、私には日本の国土の方がいいなあという気がした。
またマダガスカル島の河口付近の海の色が、赤や黄や青の絵の具を溶いて流したように見えるのを野口さんは、森林伐採による大規模な土壌流出の影響と説明している。青くない海の写真は、海の好きな私には、見た目にも嫌悪感を感じる。
これらを見ながら私は、宇宙から地球を見るということは、即第三者の眼で地球を眺めるということであり、環境問題を考えるにはいい材料だと思った。
日本を上空から移した写真も幾つか出てきた。大分県宇佐市付近、兵庫県姫路付近など何枚かあったが、日本の写真はどれも緑豊かな感じがした(上空から移した写真の森林部分は必ずしも緑色ではないが)。
野口さんが、宇宙に飛び出して、地球と1対1で対峙した時、地球の周囲には他に生きているものはなく(すなわち死の世界で)、それだけに地球を一つの生物と感じ、自分もその中の小さな生きものの1つであり、地球へ戻っていくべき存在だと感じたというのは、わかる気がする。
先ほど私は、宇宙からの写真は自分には必ずしも好ましいものばかりではないことを述べた。
ただ美醜を超えた観点に立ち、この野口さんが撮った写真に対しての私の驚きを述べるなら、次のような事がいえるだろう。
すなわち宇宙からの眺めは視点・視角が普通と違うので、ちょっと想像を超えるものあるということだ。
例えばエアーズロック(世界最大の1つ岩の岩山)を上から眺めた写真を最初見た時、私は錯覚した。
エアーズロックの岩山が、突き出た山ではなく、逆に穴を掘ったかのような巨大な窪地に見えたのだ。
こんなことは地上数千mでも起きないのではないか。地上400kmの上空ならではの写真による錯覚である。
大気現象の1つ、雲などが気流によって作り出されるカルマン渦の模様なども、地上ではなかなかここまで綺麗には見えないだろう。
世界遺産や都市などを撮影したものも色々と興味深いものだった。
この本は、写真が豊富な分、文章量が少ない。ただ今回私は、写真に見入って、じっくりと鑑賞しながら頁をめくっていたので、全部見終えるのに2時間以上かかってしまった。
おそらく皆さんもこの本を開けば惹きつけられ、没入してしまうでしょう。
最後に参考に目次タイトルを列記しておきます。
○ 水の星
○ 天体ショーへようこそ
○ 不思議の星
○ 天国の島々
○ 宇宙から見た世界遺産
○ 文明の輝き
○ 富士山
以上
お薦めの一冊です。
←ランキングに参加しています。