by une_genzaburo
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この本は「本が好き!」というサイトから献本して頂いた1冊だ。書評を書くことを条件にもらった本だ。 1つ前の記事(『道元』(立松和平著・小学館)の感想・紹介文)でも書いたように、仏教には結構興味があるし、特に我家の宗旨である浄土真宗はなおさらだ。 宗祖の親鸞に関しては、自分の全てを晒け出し末世に阿弥陀信仰を信じてとことん生き抜いた、強烈な人生というか生き様に、惹かれるものがある。 宗教家としてのみならず、思想家としても親鸞は凄いと思っている。易しいように思え得て意外と難解な(誤解し易い)『歎異抄』なども既に何人かの解説書など読んでいるが、わかったようでなかなか理解しきれない点もある。 実のところ、親鸞の教えは、何度読んでも分かり難い(誤解し易い)ものが多い。誤解されやすいので、親鸞自身『歎異抄』は、自分の教えをよく理解した一部の人しか見せるな、ということを言ったのである。 この本にはなぜか出てこなかったが、有名な「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや。」いわゆる悪人正機説(悪人正機説ということばは出てくるがなぜか、この有名な言葉はこの本に載っていない)も、誤解し易い言葉の一つであろう。悪いことをすればするほど救われると誤解されやすい。 またどのような人物、悪人でも念仏したいと一念発起した後、極楽往生間違いなしという、その一念発起などという語も、かなりの誤解されている。 一念発起とは、そもそも仏教語で「疑いのない信心がおこること。阿弥陀仏の本願を信ずる心が初めておこること。」 しかしこの一念発起がなかなか難しい。この本では、趣味や生甲斐、人生の目標とも違う、人生の目的を考える。そして「なぜ生きる」の問いの答えとして、人生の目的を悟ることと考え、その人生の目的を悟る方法が、親鸞の説いた教えに従うこととなる。この本では、一念発起した時に、同時に人生の目的も悟ることになる。 何かちょっと強引な説法で、新興宗教の匂いがするかもしれない。事実監修者の高森顕徹は、浄土真宗親鸞会という新興宗教の1つを設立した人物らしい。「宗祖親鸞聖人の教えを広めることを唯一の目的として、親鸞、覚如、蓮如の文を根拠にして、それを忠実に解説する」という教義で各地に説法を行っているらしい。 そういう意味では、いかがわしい新興宗教とは少し違うようだ。親鸞の教えを十分に把えていることは事実のようだ。自分さえしっかりしていれば、敬遠せずとも充分に役に立つ本といえる。 さきほど人生の目的を悟る方法として、この本では、親鸞の説いた教えに従うことと言ったが、この本の主旨からいうと少し正確さを欠く。 この本では、なぜ生きるかについて、こういう。 「人生の目的とは何か。親鸞聖人の答えは簡潔で明快だ。 「いきる目的は、金でもなければ財でもない。名誉でもなければ地位でもない。人生の苦悩の根源を断ちきられ、“よくぞ人間に生まれたものぞ”と生命の歓喜を得て、未来永遠の幸福に生きること」となる。 この親鸞聖人の教えを分かりやすく説いた文章を、親鸞の著『教行心証』や『和賛』、親鸞の言葉を収録した『歎異抄』等などを参考に、または色々なたとえ話を交えて説明する。 「弥陀の誓願」「難度海」「無碍の光明」「無明の闇」「二種深信(しんじん)」「機の深信」「法の深信」「摂取不捨の利益(りやく)」「易往而無人(いおうむにん)」などちょっと難しい仏教語も、非常にうまく説明していると思う。 私は今回、特に「深信(しんじん)」という言葉を用いた説明で、かなりの事がわかったように思う。今までも「深信」ということばに触れてきたのかも知れないが、ほとんど記憶がない。 「深信」とは、深く信じて疑わないということではなく、「露チリほども疑いもなく、明らかに知らされたこと」という。この著者は言う。「「信じる」と「深信」とは異なる。どこが違うのか。信じるのは疑いがあるからである。疑う余地が全くないことは「知っている」という。」 これを読んだ瞬間、頭に何かガーンと来た。 結局、往生(「死ぬ」や「困る」という俗な意味でなく、仏教でいうところの往生=極楽浄土に往き、生まれ変わること)には、疑いもなく信じるような境地に達せねば成らぬとなる。その時こそ、真の意味での一念発起の時でもあり、「機の深信」と「法の深信」を同時に悟り、「摂取不捨の利益」も悟り、・・・・親鸞が言葉を違えて色々に説く悟りを一瞬にして悟ることになる。 世間に歪曲して流布された他力本願や悪人正機説などから、浄土真宗が教える道は楽だ易しいと考えられがちだが、難しいかもしれない。疑わずにただ信じればいいと言うかもしれないが、人間そんなに簡単に他人の言を信じるものではない。 やはり親鸞も艱難辛苦を経験したように、自分も人生を歩む上で色々艱難辛苦に遭いながら、少しずつ信じていくのが普通かもしれない。そういう意味では「深信」などという境地に私も一生成れない凡人の可能性が高いようである。 「なぜ生きる」という問いに対する答えを見つけるというより、浄土真宗や親鸞について、少し理解を進めたいという人には、役に立つ本ではなかろうか。 お薦めの一冊です。 ←ランキングに参加しています。
by une_genzaburo
| 2010-08-21 14:31
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