鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)さんの本は、時々読む。日野原重明さんとともに好きなお医者さんである。どちらも講演会で直接会っている(日野原さんとは、講演会以外にも、今から20年程前、聖路加国際病院建直し工事を始める前に、メーカー側の関係者の一員として会ったりもしている)。
昨年の5月4日、NHK第一「いのちの対話」の公開放送が津幡町の文化会館「シグナス」で行なわれたのを聴きにいったのだ。ホスト役の鎌田の他、超売れっ子作家の山本一力さん、 論語塾講師・安岡定子(陽明学者・安岡正篤氏の孫)、本條秀太郎(三味線奏者)、アナウンサーは村上信夫という豪華な顔ぶれだった。
私は、眠れない時、NHKラジオ第一「ラジオ深夜便」を聞くことが時々あるの。その番組で、鎌田さんがよく出演され、思わずポロっと泣けてくる話をしていた。そこから私は、鎌田さんファンになった。私は、小説にしても泣かせてくれるこういう人情話が大好きなのだ。
今回紹介する『がんばらない』は、あとがきを読むと、その「ラジオ深夜便」が契機になって出来た本らしい。集英社の人が、その深夜放送を聞いていて、やはり泣かされたのであろう、書籍化の話を持ちかけたという。
この本も実によく泣かせてくれる。30代過ぎてからどうも涙腺が緩くなったせいもあろうが、ジーンと感動する話を聞くと、時には人前でも涙ぐむようになってしまった。大の男としては恥ずかしいのだが、おそらく副交感神経なのだろう、制御が利かない。図書館でも読んでいたのだが、隣に人がいるのも忘れて涙を流してしまった。花粉症であるかのように花をかみながら誤魔化してはみたが・・・。
私も、年寄りの両親を2人抱える身である。80代半ばの父親は、本人が病院へ行きたがらないが、もうかなり介護が必要な状況となっているし、70代半ばの母親にも今後はあまり負担はかけられない。私自身、四十肩、ギックリ腰、腰痛、足の関節痛、老眼と、40代過ぎてから非常に急激な老化を感じ、この本で語られる話は他人事ではなくなってきた。
また蒲田さんが参考に2箇所であげたインディアンの言葉は、医療とは直接関係内が、私に衝撃にも近い深い感動を与えてくれた。特にシアトル大酋長がUSAのピアス大統領に宛てて書いた手紙は、地球環境が叫ばれる現代あらためて読むと、素朴とも思われる語り口だが、驚異とも思われるほど深い内容を蔵しており、深く深く尊敬の念を抱くものだった。
後半はいつもの手抜きだが、Amazon.co.jpの本の紹介文を転記して参考とさせてもらう。
「八ケ岳山麓にある諏訪中央病院院長の鎌田實氏は、単に命を引きのばすだけの医療には批判的な名物医だ。この本はそんな彼が、日々患者と接する中でとらえた様々のエピソードを綴った感動のエッセイ。」(単行本の方の『がんばらない』:出版社/著者からの内容紹介より)
「医師と患者の心のかよい、患者と家族のあたたかい絆、看護婦さんたちの献身、涙をおさえることができない美しい奇跡がここに書かれている。病院の廊下には、知的障害をもつ女性が描いた書がかかげてある。「がんばらない」…誰もがその前に立ちつくす。なんという勇気のある言葉。」(単行本の方の『がんばらない』:「BOOK」データベースより)
「本当に豊かな生、また死とはなんだろう。延命だけの治療には批判的であり、患者の側に立った医療を目指している名物医が、日々患者やその家族に接する中で綴った、感動エッセイ。(解説・荻野アンナ)」(文庫本の方の『がんばらない』:出版社/著者からの内容紹介より)
「リンパ肉腫の青年が言った。「自分の入る墓を見てきた。八ケ岳の見える景色のいい所だったよ」青年にぼくはささやいた。「よくがんばってきたね」最後まで青年は誠実に生きて、死んだ。そこには忘れさられた「魂への心くばり」があった。テレビドラマ化されるなど、マスコミの話題をさらった感動の書をあなたに。」(文庫本の方の『がんばらない』:「BOOK」データベースより)
本の中に出てくる作者の言葉、患者の言葉、患者を取り巻く看護婦・親族・知人・友人の沢山の言葉に、人間らしく生きるとはどういうことか、患者・家族の立場にたった真の介護・医療のあり方などの真髄とも思える深いものが多く、非常に為になった本である。
お薦めの一冊です。
(この記事は七尾市立田鶴浜図書館から借りてきた本を読んで書いたものです)
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