「夢曳き船」(山本一力著・徳間書店) 「材木商・伊勢杉陣左衛門は向島の料亭・吉野の新築普請に用いる杉材木千本を一万両で請け負う。ところが江戸まで運ぶ途中、下田沖で時化に遭って七百本の杉が残らず流された。残りの三百本は熱田湊に留め置かれ、山元も回漕問屋も、金を先払いしない限りは一本も回さないという。窮地に立たされた伊勢杉に、晋平が助け舟を出した。箱崎町の貸し元、あやめの恒吉に四千両を用立ててほしいと願い出る。首尾よく熊野杉が納められれば、吉野から材木代残金八千両が手に入る。それを全額、恒吉に支払うという提案である。首尾よく運べば四千両の儲け。逆目が出たら四千両の損。博打にも似た大勝負に乗った恒吉は、果たして、無事、江戸に杉を運びいれることができるのか。命を賭けた男の矜持と侠気。目指すは江戸。嵐に襲われ大波に翻弄されながらの凄絶な杉回漕を描く長篇時代小説。」(Amazon.co.jpの本の紹介文を転記)
個人的には、自分の性格というか価値観と大きく違うので、イマイチだった。
キャッチコピーに「杉回漕にかけた男たちの矜持と侠気」あるが、私の性格としては投機的なことは好まない。勝負に出ないといけない時には博打のような勝負に出ることも人生には1,2度必要なことがわかるが、この本を読んでいると、回漕中、風雨波浪が強まる中、強いて嵐の中に突っ込んでいくような場面が3度ある。1度ならまだしも3度はどうかと思う。
それに本当に称えられるような勇気とは、こんな「匹夫の勇」のような勇気だろうか?私は、賛同出来ない。私は、学生の頃、山登りをしていたが、危険が多いだけに、計画をきちんと立て準備に怠り無く安全第一で行動するのが常だった。
有名な植村直巳さんは大学の先輩にあたるが、単独行動の壮挙が多いとはいえ、本など読んでみると安全対策は十全にして臨んでいることがわかる。1984年マッキンリーの冬期単独登頂に成功後、遭難し消息を絶っているが、自然を馬鹿にした結果ではない。大学時代は山岳部の落ちこぼれで、努力して世界一流の冒険家となった人物だ。自然の恐ろしさを知り尽くし、万全の対策の上でしか行動しなかったように思う。
それと較べると、この本に出てくる勇気、侠気はちょっと私には頷けない。小説としては面白いかもしれないが、フィクションの世界の娯楽読物としてしか評価できない。
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