以前『海国記 平家の時代(上・下)』を読んだが、氏の本はそれ以来である。
弘法大師空海を主人公とした小説である。
司馬遼太郎さんの『空海の風景』や陳舜臣さんの『曼陀羅の人』は、中国渡来時の話が中心となっているが、この小説では、逆に中国渡来時の模様は一切描かれていない。渡来前と渡来後の空海が描かれている。
史実にはある程度したがっているが、かなりフィクション色の濃い小説である。私としては桓武天皇や嵯峨天皇の即位の経緯をあまり知らなかったが、この小説で色々知ることができ、その意味でも興味深く、面白い本であった。
【参 考】
Amazon.co.jpの本の紹介文を下に参考のため転記する
「空海とその時代。王とは、仏教とは、生きる意味とは何か。すべてを開く秘密の鍵。渾身の長篇小説。 」
(「BOOK」データベースより)
「大毘盧遮那成仏神変加持経」―秘密宗への扉。都が平城から長岡へと遷される時代、皇太弟・伊予親王の密命を帯びて、求法の旅に出た若者は、仏法の奥義に触れることができるのか。入唐以前の空海の謎に包まれた半生を、卓抜な構想と推理で描く。 」 (文庫上巻「BOOK著者紹介情報」より)
「唐から帰朝した空海は、秘密宗の奥義を得て、各所で講説を続ける。一方、謀叛の罪に問われた伊予親王は、幽閉ののち自害する。前半生の記憶のなかに、殺人を犯す自分を見る空海。政争渦巻く地上で、生死の呪縛を解き、生滅を超えゆく道への鍵は開かれるのか。」(文庫下巻「BOOK著者紹介情報」より)
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dannonihachiさんからこの紹介文に対して次のようなコメントをもらったので追記しておく
タイトル:
桓武天皇
三田誠広の「桓武天皇」を読んだ。
個人的にはよく読む歴史小説は全て義経以降で700年前後のものは守備範囲外だった。いつものごとく図書館で適当に物色してきたのだが、、いやいやどうして読み応え十分で楽しめた。ストリーは出生時は傍流でとても将来の天皇候補と目されていなかった主人公が紆余曲折を経て皇帝として君臨するまでの物語。当時は当然象徴天皇ではなく絶対的な権力者として天皇が政界を司っていたので、その骨肉の権力闘争は生臭いものだったのだろう。また物語に厚みを加える脇役もすごい。「孫氏」を国内で初めて理解し実践した武将 吉備真備、万葉集でおなじみの大伴家持、藤原氏で当時権力を欲しいままにした仲麻呂、怪僧 道鏡そして百済王家の敬福と歴史の授業で習った面々がちりばめられている。
しかし、物語の面白さもさることながら私にとって興味深かったのは、桓武天皇が百済王家とのハーフである点だ。現在からは想像も出来ないが、皇族に渡来人の血が入っていることになる。私の記憶力が弱いせいでなければ、恐らくこの事実はほとんど教育現場で触れられていないのではないか?