ブックオフで半年ほど前にたった100円で買った本だ。しばらく放っておいたがもうそろそろ読んでおこうと思い読んでみた。
有機ELに関しては、5,6年前より興味があった。この本を読み、私の身の回りを探してみたら、携帯電話や乗用車に搭載のパネルなどがどうも有機EL商品のようだ。
この本が出版された2003年当時は、まだ有機ELで商品化されたものは少なかった。2003年当時は、パイオニアなどが先行していたようだ。2年前にソニーが、世界初の有機ELのカラーテレビなど商品化したりして、現在は徐々に浸透してきているといった感じだ。でもこの著者が想像したほど、液晶やプラズマ・ディスプレイを駆逐していないように思う。市場の席捲とまでの勢いはまだ見られない。
おそらく寿命や発光効率ほか色々な問題が、まだ数多く残るのだろう。今後の改善を期待したい。
この本は、そんな有機ELの世界的権威である著者が、有機ELの動作原理から製造の実際までを平易な文体で解説した本だ。私のような素人でもよくわかる。これを読んでいるだけで、金さえあれば自分で、有機ELディスプレイが作れるのではないかと思うくらい平易かつ詳細にまとまった本である。
著者略歴をみると、早稲田大学を卒業。米留学、山形大学工学部教授となっている。2002年10月から始まった有機EL国家プロジェクトの座長(経済産業省プロジェクト「高効率有機デバイスの開発」)となっている。つまり有機EL関連企業をまとめる日本のリーダーだ。
本の中では、日台韓や欧米などの有機EL関連企業の動向を比較検討して、現時点での優劣や今後の日本のとるべき方向まで書いてあるが、逆にこの本を参考にして、外国の企業が技術力をアップさせてしまうのではと心配になるくらいの格好の入門書となっている。
肝心の有機ELの説明が遅くなったが、有機EL(Electroluminescence/エレクトロルミネッセンス)とは、ガラスやプラスチックなどを材料とした基盤の上に有機物を塗布し、そこに電気を通すと有機物がきれいに発光(luminescence)するというものだ。これを使ってテレビやパソコン、携帯電話、PDA、デジカメ、自動車搭載のパネルなどのディスプレイや面タイプの照明に利用することなどの商品化が現在行われているようだ。
現在世の中に普及しているフラット・ディスプレイの代表といえば液晶である。最近私の兄などもシャープ亀山工場製の液晶大型テレビを購入して自慢していた。著者は、有機ELが商品化・普及してくれば、液晶など比較にならないほどいい点が多数あるという。
液晶とその潜在能力を比較しただけでも消費電力、応答スピード、大型化、画質、コスト、視覚野、輝度、フレキシビオリティ(ペーパーのように畳むことも可能)、耐震体熱性などにおいて有機ELが上回るという。例えばコストにつてだが、開発においても、液晶やコピー機の開発で培ってきた技術・ノウハウをかなりの部分で利用できるので、かなり抑えることができるという。
著者は、2003年時点での有機ELの詳しい製造工程や製造機器の写真や配置図まで用意して、詳しくかつ平易に解説している。
とにかく(おそらく)電気や化学の素人でも概略理解できるだろうと思われるぐらいの、いい入門書だ。私は別に有機ELに関係する仕事をしている訳ではないが、非常に楽しく読めた。お薦めの1冊です。
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