佐藤雅美氏は、特に好きな作家の一人だ。この半次捕物控シリーズも勿論既刊は全て読んでいる。今巻で第7弾になるそうだ。このブログでは、『泣く子と小三郎』、『髻塚不首尾一件始末』も以前紹介している。
今巻を通して度々登場するのが蟋蟀小三郎。確か第3巻から登場したが、このシリーズではもう欠かせない登場人物となった。ただ昔と違い食い、阿漕な稼業で食いつなぐ浪人ではなくなり、弁天橋の近くに“烏天狗流指南”という看板を掲げて、道場をもっている。当初は、2,3年も経ったらいい破落戸(ごろつき)になるだろうような悪ガキを15人ばかり、脅しつけて無理やり弟子にしたが、厳しい稽古が躾になると、今ではかなり評判をとって、ひ弱な子を持つ親が小三郎の道場に子息を通わせ繁盛している。
その道場は、当時江戸一番と言われた皆川一心斎の道場とも近く、小三郎は一心斎にも一目置かれる。一心斎が年老いて道場を閉めて売り渡すという話が持ち上がると、一心斎の門弟と小三郎との間に道場の所有・門弟の引継ぎにあたって江戸中を騒がす揉め事が起きるほどまでになる(第7話「取らぬ狸の皮算用」)。
そんな小三郎は、昔と比べると悪い稼業はあまりしなくなったが、最近迎えたおちよさんという女房がいるのに(この妻‘ちよ’を貰う前にも、実は越前丸岡に妻がいた)、まだ女癖は直らず、後家でその後さる大名家に仕えた佐和という女性に横恋慕。向うは全く記憶さえないとうのにいきなり恋文を渡し、自分と一緒になるべきなどと独りよがりをいう始末。それで相手にされぬので半次に取り成しなどを頼もうとする。
以前はこんな件(くだり)に出会うと、何と厄病神な奴だなと思ったものだ。が、最近は何か可愛げさえ感じるようになった。時に半次の蔑む態度などに腹を立てるが、どうも彼を気に入っているようで、今巻では危うく半次が殺されそうになるところを助けたりもする。
一応8作品のタイトル名だけ挙げておこう。
第1話「膏薬と娘心」
第2話「柳原土手白昼の大捕物」
第3話「玉木の娘は」
第4話「真田源左衛門の消えた三十日」
第5話「殺人鬼・左利きの遣い手」
第6話「奇特の幼女と押し込み強盗」
第7話「取らぬ狸の皮算用」
第8話「天才絵師と幻の生首」
表題作の「天才絵師と幻の生首」に関しては、帯紙にちょっと前ふりが書いてある。参考に下に転記しておく。
「九つの子が、拾った生首を写生した。その絵を瓦版にして売ったところ江戸中が大騒ぎに。北の御番所の名誉にかけても生首の主を探せと、またまた無理難題が半次に持ち込まれて…。 」
今回も面白いこと請合。お薦めの一冊である。
(今日は午後からちょっと困難で重要な仕事があるので、これから入念な準備をするつもりだ。よっていつもより短めにした。偶にはこれ位の長さもあっさりとしていていいだろう。)
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