海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年 (1980年)
塩野 七生 / 中央公論社
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海の都の物語〈続〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (1981年)
塩野 七生 / 中央公論社
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大学時代に読んだ本だが、久しぶりに読んでみた。
2回目のせいだろうか。比較的早く読めた。といっても10日間ほどかかった。
今回も、紹介記事を書きたいところだが、
ちょっと大作過ぎて纏めるのに大変なのと、現在風邪をひいており、体力が無い。
詳しい紹介は、今回は遠慮して、病気回復後余裕があればしたいと思う。ただし日を置けば置くほど大作だけに難しいだろう。いつもほど詳しくは書かないが、少しだけ書いておく。
ヴェネツィアといえばシェイクスピアの『ベニスの商人』お思い出す方もいて、嫌悪感をもよおす方もいるかもしれないが、この本を読めば、偏見であることがわかるだろう。
それは十字軍遠征当時、回教徒との貿易を禁止されても、オリエント地方のキリスト教徒を介在させて貿易を継続したり、国家として貿易に取り組むにあたり、宗教色を排して、西洋経済の主導権を握ったことによる。
西洋史を知らない人は、ヴェネツィア共和国という言い方を聞いても、現在のイタリア北東部のアドリア海に面したヴェネツイア市を思いうかべる人もいるかもしれないが、昔はイタリア北東部からアドリア海東岸(クロアチアやダルマツィアなど)含めた広大な領域を支配していた国家であった。
この本のサブタイトルは「ヴェネツィア共和国の一千年」だが、中世時代に侵略を恐れて海辺の潟・ラグーン上に都市を築いてから、1797年のナポレオンの侵攻によって幕を閉じるまで約1先年もの間、ヨーロッパ有数の共和国として存在し続けた国家である。
ここからは、有名なヴェネツィアン・カットのガラス細工やレースの織者、有名な絵画など芸術だけを生み出したのではなく、大資本家の投資による資本がなくても商売ができる海上融資制度や限定合資会社(コレガンツァ)、帳簿上の記載だけで金が動かせる銀行制度、複式簿記など現代の経済制度の基本的枠組みがここヴェネツィアで発明されたのであった。
国家体制としては元首(ドージェ)がいるが、一人の権力者に権力を集中させることはせず、国家運営を誤らない共和国体制を構築。
最大のライヴァル、ジェノバを長期の戦いの末破り、一時期地中海の覇者となる。覇者の地位から落ちても、長く地中海貿易の有力な国家として存続し続けたのであった。
兎に角面白い本です。
私は、大学時代、西洋経済史に凝っていて大塚久雄という大家の『株式会社発生史論』という本を読んでから、ヴェネツィアんび興味を持ち、西洋史家のフェルナン・ブローデルやW/H/マクニールなどのヴェネツィア関係の本を沢山読みましたが、この本が自分では一番面白かったです。
現在の日本にもきっと役に立つ事柄が、あちこちに見出される非常に有意義な本です。
全ての皆様にお薦めしたい一冊です。
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