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『永遠のなかに生きる』(柳澤桂子著・集英社)を読了した

永遠のなかに生きる

柳澤 桂子 / 集英社

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 柳澤桂子さんの本は最近比較的多く読んでいる。1969年、三菱化成生命科学研究所主任だった時、原因不明の難病に罹り、以後闘病生活を送りながら、生命科学者、サイエンスライターとして啓蒙的な書物を多数書いてきた方だ。
 このブログでも6冊紹介している。
 ●『意識の進化とDNA』(集英社)
 ●『遺伝子治療への警告』(岩波書店)
 ●『ヒトゲノムとあなた』(集英社)
 ●『二重らせんの私-生命科学者の生まれるまで-』(早川書房)
 ●『生命の不思議』(集英社)
 ● 『脳が考える脳-「想像力」の不思議』(講談社ブルーバックス) 
 彼女は2004年の春、思いがけなく「般若心経」を現代詩に訳すという仕事と、「般若心経」に関連して、信仰告白した書を出版してから、安心感や悟りのようなものだろうか?何か感じるところがあったらしく、文章を書く意欲を失ったようだ。
 そんな心境だった彼女に、集英社の方が、既に書いた彼女の文章で日の目に見ずにしまわれている文章を纏めることを勧め、出来たのがこの本のようだ。

 彼女は子供の頃から、「いのち」や「死」というものに対する感受性が強かったようだ。クモを自ら石で潰し殺して、それを観察して絵に描いたり、捨てられた子犬や子猫を拾ってきては何とか育てようとして、助けられずに死んでいく姿などを見て、涙を流すという経験を何度もしたという。

 そんな彼女が、地球上に原核生物、真性細菌、古細菌、真核生物・…などと生命が生まれてから進化していく歴史を説明。そして生命誕生から34億年も経ってやっと多細胞生物が生まれ、さらにカンブリア紀など通して多種多様に進化し、魚類、両生類、爬虫類、恐竜、鳥類、哺乳類、類人猿、そして人間へといたる歴史を、生命科学が遺伝子レベルで解明したDNAなど分子生物学による成果も交え説明してくれる。

 ただし、あまり分子生物学の知識には深入りせず、一般人がエッセイとして楽しめる程度に、平易に書かれています。彼女の文章を初めて読む人は、その女性らしい繊細な感性で書かれた文章の虜になるかもしれません。

 彼女は「生と死は文字通り表裏一体であり、夥しい死に支えられて生は輝くのです」と説く。『永遠のなかに生きる』というタイトルのこの本の主題は、死生観と言っても間違いなかろう。
ある箇所では、彼女の闘病生活を通して、そこから築かれた家族の絆や死生観を述べる。また他の箇所では、生命科学者らしく、生命がプログラムとして自らもつ「アトポーシス」という「細胞の死」から得られる死生観などから、「生」というものを見直してみる。
 
 人生を有意義に生きるには、死に対して目を瞑るのではなく、彼女のように、全ての人に必ず訪れる死というものをじっと見つめ、死生観をもって生きることが大切なのだと、改めて考えさせられた。

 平易な文章ですが、学術的・抽象的な思考活動ではなく、家族崩壊の危機まで体験し得られた具体的な教訓が述べられ、私は単なる事実を超えた悟りのような深い意味合いを感じた。

 今回も参考として目次に書かれた各エッセイのタイトルを列挙しておきます。「はじめに」、「いのちと死の感触」、「いのちとは何か」、「死とは何か」、「生命の歴史は死の歴史」、「人間とは何か」、「病気と人間」、「いのちのはじまりとおわりを考える」、「豊かな未来に向けて」、「あとがき」。

 また本の帯紙に、これまた私が好きな多田富雄氏からこの本に対して贈られた言葉が添えてあったので、それも転記しておく。
 「柳澤桂子さんは、生命科学が遺伝子レベルで解明した生命の神秘を、深い思索を通して日常の言葉に翻訳してくれた。最先端の科学が明らかにした「死の遺伝子」が教える生命の意味とは何か、「死」を通してこそ永遠の「生」を生きるというわけは何なのかをこの本は解き明かす。」
 多くの人にお薦めしたい一冊です。 

(追記)
 この本の中には、沢山の日本画家・福井爽人(ふくいさわと)氏の絵が取り入れられています。各絵は特に本の内容とは関係ないようである。沢山のきれいな絵で本を飾ってみたいという著者の考えによるものらしい。絵だけでも十分楽しめる本である。
 (この記事は、七尾市立本府中図書館から借りてきた本を参考に書いています)

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by une_genzaburo | 2008-12-30 19:43 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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