『科学の扉をノックする』(小川洋子著・集英社)を読了した
科学の扉をノックする小川 洋子 / / 集英社
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小川さんは以前『博士が愛した数式』という映画の原作で話題になった作家です。このブログでもその作品を取り上げています。今回は小説ではなく、科学に関わる研究者やスポーツトレーナーなどを訪問し、取材した内容を書いたものだ。小川さんは、『博士が愛した数式』を書いた作家だが、どうも科学に関してはズブの素人で、そのかわり科学への興味はいっぱいある方のようだ。
ある分野に関して取材する前の彼女のイメージなど読んでいると、とてつもない科学音痴であることがよくわかる。この本ではそういう科学音痴的側面を隠して取り繕うのではなく、むしろ晒(さら)して素朴な疑問をぶつけ、所々で自分なりに理解した内容を纏(まと)めて書いている。頭がいいのだろう。科学音痴な人ながら、纏めた文章は非常に分かりやすい。
インタビューは7つの分野で、その内容を7章に分けて書いている。
○第1章 「宇宙を知ることは自分を知ること」
国立天文台の渡辺潤一准教授を訪問し、恒星、惑星、衛星、彗星、太陽系、銀河などの話を紹介。私は宇宙関係の本はよく読むので基本的な事は知っている。私として興味を持った箇所は、三鷹の国立天文台の地下深くにTAMA300という全長300mのトンネルからなる装置があり、重力波を捕らえようとしている話であった。ニュートリノを観測したカミオカンデは、そのことでニュートリノ科学が出来たという理由で小柴昌俊氏が受賞し、有名になったが、重力波の巨大な装置があの三鷹のあの地の地下深くにあるとは知らなかった。
○第2章 「鉱物は大地の芸術家」
鉱物化学研究所の堀秀道所長を訪問しての対談。堀秀道氏の本は買ったり借りたりして読んだ事はないが、(七尾)市内の図書館の科学コーナーに何冊かあるので、今まで数度立ち読みした事はある。鉱物と岩石の違いを私も理解していなかった。岩石は色々な成分が混じっているが、鉱物は結晶体で1つの成分からなる。つまり岩石は鉱物の集合体。ああなるほどと思った。
興味深かった話は、地震の予知の方法として鉱物学者からの提案であった。温泉中のアンモニウム量の異常を調べるのが1つ。もう1つは、鉱物中に稀に見られる圧電現象を持つものがあるが(たとえば花崗岩の主成分は水晶で圧電現象を示す。クオーク時計の原理はこれである)、地震が起きる時、電気的な現象が起きても不思議ではないから、そこから生じる電波的な現象が電磁波を攪拌する可能性があるから、それを調べてはどうか、という案である。ただし地震学者の方からは無視されているそうである。
それから詳しくは書かないが、鉱物学でX線を利用し原子の位置をピークで出す機械の計算式に、虚数が使われているというのも興味深かった。
○第3章 「命の泉“サムシング・グレート”」
筑波大学名誉教授の村上和夫氏を訪問して対談。この村上氏の主著『生命の暗号』はこのブログでも以前紹介している(今回は詳説しないが、興味のある方は、以前の記事を参考に読んで欲しい)。私は遺伝子に関する話が、科学の中で好きな分野ベスト3(遺伝子、素粒子、宇宙論)であり、よく読む。
○第4章 「微小な世界を映し出す巨大な目」
兵庫県佐用郡の播磨科学公園都市(といっても山の中のようだ)にあるスプリング8(大型放射光施設)を訪問。ここは日本原子力研究所と理化学研究所が共同で建設。1997年に完成、供用開始。運営は財団法人高輝度光科学センター。私はダン・ブラウンの小説『天使と悪魔』で有名になったCERNはもう出来た時から注目して知っていたが、こういう施設が日本にあるとは全く知らなかった。施設の古宮聡研究員や広報の女性に案内されての取材記だ。
○第5章 「人間味あふれる愛すべき生物、粘菌」
細胞性粘菌の研究をしている竹内郁夫京都大学名誉教授を訪問しての取材記だ。小川さんも私も知らなかったが、粘菌には2種類あり、南方熊楠などが調べた粘菌は、一つの細胞の中に何個もの核がある多核性のタイプのもので、核分裂の際に細胞分裂が起こらず(細胞壁)をつくらない。それに対して竹内氏が研究しているのは真正粘菌と呼ばれる真核細胞の粘菌である。動物と植物の中間のような生き物、アメーバだ。不思議なライフサイクルを持っており、胞子から出て来たアメーバーは、餌を取り入れながら分裂し、数を増やす。餌がなくなると、胞子を作るためにアメーバは集まり、子実体を形成。その際、集まってきた位置(全体の中の位置の偶然性)で、ある位置のものは自己犠牲により(死んで硬くなり)胞子を支える子実体となり、残る位置のものは胞子の部分となるという。
○第6章 「平等に生物をいとおしむ学問“遺体科学”」
東京大学総合研究博物館の遠藤秀樹を訪問しての取材記。動物の遺体を文化の礎として保存する「遺体科学」を提唱している学者で、動物の遺体を無目的・無制限に収集し、自分でその遺体から何かの真実を引き出すことができなくても、次世代、後の世にその可能性をつなげることで(将来もしかしたら絶滅するかもしれない可能性も含めて)貴重な検体資料を残していこうということのようだ。遠藤氏が発見したパンダが竹を掴む手の骨格の仕組みの話など面白い話が多い。
○第7章 「肉体と感覚、この矛盾に挑む」
阪神タイガーストレーニングコーチの続木敏之氏を訪問しての取材記だ。著者は私と同じ阪神ファンらしい。最新のトレーニング事情などが出てくる。
最後に、本の最後のページに著者の略歴と顔写真が載っていた。歳は何と私と同じであった。表紙にドアをノックする少し額の大きい可愛らしい女性の絵が描かれているが、写真で見る著者も額の少し大きいまさにこの絵と似た可愛らしい40代美人だ。
私も男だ(それもいまだ独身)。美人だと、宮部みゆきさんとか阿川弘子さんとか、ついつい読みたくなる(笑)。今後も他の作品色々読んでみようと思ってる。
お薦めの一冊です。
(この記事は七尾市立中央図書館(ミナクル3F)から借りてきた本を参考に書いています)
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能登をこよなく愛する好奇心旺盛な40代後半のブルーカラーの源さんです。趣味の1つ読書(本の紹介・書評中心)のブログです。年間150冊前後読みます。2005年からこのブログを始め、既に1千冊以上を紹介しています。
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