私は今まであまり西洋史に関する本を紹介してこなかったが、実は結構この分野が好きである。特に中世史が好きである。高校の時、理系にいたわりには、世界史が得意だったのもあると思う。S台予備学校へ行っても、名前が試験の上位成績者リストに載るくらい良かった。
このS台予備学校は本当に良かった。大学以上に影響を受けたかもしれない。ここは受験テクニックを教えてくれるのかと思いきや、英語、世界史、数学・・・・皆全く反対で、基礎や長文読解、スタンダードな問題の理解など、徹底的常道というか正攻法の授業であった。
実は西欧中世史が好きになったのも、ここの世界史の大岡先生の影響が強い(今から27,8年近く前、大岡先生元気かな~?)。この先生は、よく参考図書をあげていた。そしてそれを読んで感想を書いてきた人には、寸評を書いてくれた。私は有名なS台の先生と親しくなりたかったので、何度も感想文を出したものだった。
その時に読んだ本は、マルク・ブロック、リシュアン・フェーブル、ジャック・ルゴフ、ヨハン・ホイジンガ、木村尚三郎、増田四郎、高橋幸吉郎、大塚久雄などの西欧史、西欧社会史、西欧経済史などの本だった。この予備校時代に、歴史の見方がまるっきり変わったし、ブロックやホイジンガ、増田四郎などの影響で中世史が一層好きになったのを記憶している。そして大学に進んでからは西洋経済史や西洋社会史を好んで勉強したのを覚えている。おそらくこういった影響がなかったら大学(経済)であまり勉強せず遊んでいたろうと思う。
さて余談ばかり長くなってしまったが、今回紹介するのは、200点にものぼる中世のミニアチュールをカラーで掲載し、当時の社会を活き活きと描き出している本である。著者は、フランソワ・イシェという人で(ただし私も今回始めて聞いた名だ)、フランスの職人社会や建築職人の同業者組合史で第一人者にあたる人だそうだ。「絵解き」と書いてあっても、絵ばかりが多い本ではなく、説明文も一般向けであるとはいえ非常に詳しい。
具体的には、当時の社会を形成していた聖職者、戦士(騎士=貴族)、庶民(農民、職人、商人)の三階層の姿、都市、森、戦争、飢饉、ペストなどの姿を、ミニアチュールで絵解きをしながら理解していく訳だが、それらの絵を現代的視点で見たり、どのようにして描かれたか考えないで、絵を誤解しがちになるのを(歴史家でさえ誤解が多いようだ)、防ぐように所々注意を喚起して解説しているので、非常に親切な本である。
絵が多いので、本当に楽しい気分になる。歴史の参考書とは、こうあるべきかもしれない。
西欧史に興味のある方、またできれば進学希望で世界史を選択している高校生にも薦めたい一冊である。
(この記事は、七尾市サンライフプラザの市立本府中図書館から借りてきた本を見てかいています)