物理学はいかに創られたか―初期の観念から相対性理論及び量子論への思想の発展 (下巻) (岩波新書 赤版 (51))
石原 純 / / 岩波書店
ISBN : 4004000157
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昨日上巻を読んだばかりだが、今日は仕事もなかったので、下巻の方を一気に読んでみた。
下巻の第Ⅲ章からは、本格的に相対性理論に入ってくる。
上巻でも出てきたマックスウェルの方程式が導き出された電磁場、つまり「場」の問題から、相対理論は起こります。またこの頃には、光素が伝わる媒質としてのエーテルの性質を追求することを完全に放棄することになります。すなわちエーテルという仮定上の物質を完全に否定します。
そして昔の理論の矛盾と不合理が、時空連続体、すなわち物理的な世界におけるあらゆる出来事の舞台に、新しい性質を帰属させるよう物理学に強要。これにより、相対性理論は、特殊相対性理論、そしてさらには一般性相対理論という二段階を踏んで発展することになります。
(特殊相対性理論と一般相対性理論の違いは、この第Ⅱ章の一番最後に、この章としてのまとめが書いてありますが、そこに非常にうまく説明されています。私が下手な説明を書く必要もないでしょう!)
相対性理論は、私などの凡人には、何度読んでも難しい。私らが感覚的に容易に納得できる物理学とは大いに違う。何度読んでもやっぱり、なかなかすんなりとは受け入れにくい。
真空中での光の速度はあらゆる座標系において同一であるとか、光速に近い速度で進む物体は、動く方向に長さが縮むとか・・・。
また質量とエネルギーの等質は、あの有名な式で知ってはいるが、「物体はエネルギーの大きな貯蔵者であると共に、エネルギーは質量を持っているのです。このようにして、質量とエネルギーの間の差別は既に性質的なものではないですから、性質的に物体と場を差別することはできないわけです。現にエネルギーの大部分は物体の中に集中しているのです。それと同時に、質点を取り囲んでいる場は、たとえ比較的に少量であるにしても、やはりエネルギーを洗うわしているのです。
ですからこう言ってもいいでしょう。エネルギーが多量に集中している場が物体であって、エネルギーの集中が少ない場所が場であると。しかしもしもそうであるなら、物体と場の間の相違は、性質的なものではなくて、むしろ数量的なものになってしまいます。ですから物体と場とを、相互に全く性質を異にした2つのものと見なすのは無意味であり、従って場と物体とを明瞭に分離する一定の表面を考えることも出来ません。」
順々に説明されれば、そのように考えねばならぬかと思うが、慣れるには難しい気がした。
この下巻では第Ⅴ章で「量子論」を説明しています。これをあげねばやはり現代物理学では、片手落ちというか不十分といえるでしょう。こちらは、「個々のものでなく集群を支配する法則を形成します。性質でなく、確率が記述され、体系の将来を明らかにする法則ではなく、確率の時間による変化を支配し、従って個々のものの大きな集合に関する法則が立てられます。」
この量子論も、相対性理論以上に、何度読んでもなかなか理解できないものである。この本の中では、現代物理学に欠かせぬ理論なので、採り上げているが、相対性理論のアインシュタインが書いているせいか、60頁ほどで簡単に説明して終わっている。
量子物理学が、それまでの物理学が説明できなかった沢山の事実を説明し、それらの大部分が、理論と観測のすばらしい一致をみているが、これを一般相対性理論との統一、というか全てを場の概念に統一しようとすると、量子物理学が物質と場の2つの概念に基づいた二元論なので、足踏みし全然実現に向かわないとも述べている。
この本は1939年に書かれた本であるが、この状況は、素粒子などの事ががかなりわかってきた現在にあっても、あまり変わっていないように思う。
アインシュタインとインフェルトという超大御所が書いた本とはいえ、かなり古い本で、その上に数式が全く出こない、説明文だけで頭でイメージしながら読み進める本だけに、慣れないと読みにくいと感じる人もいるかもしれない。しかしこの本では次のように書かれています。
「物理学の理論を立てるのには、根本的な思考が最も本質的な役目を演じます。物理学の書物は複雑な数学公式で充たされていますが、どの物理理論にしても、その端緒となるのは観念や思考であって、公式ではありません。思考は、それを実験と比較し得るようにするために、その後に数量的な理論として数学的な形式を取るようにしなければならないのです。」
私も最近このことがわかりかけてきました。この本は、上のように言いつつも素人を突き放すのではなく、難しい物理理論を理解できるようわかりやすく書いている苦労が伺えます。めったにない好書です。
できれば理系、特に物理関係の方面を目指す高校生には、是非とも薦めたい、読んでほしい本です。
今後も、これら物理学上の未知の謎というか宇宙の神秘に関する本を読み続け、私なりに宇宙観を作り上げていきたいと考えています。