(この作品に関しては、ほぼ似た内容を
「源さんの書評」にも採り上げました。この本の書評は
ココに書いてあります。)
今日は暇だったので、この本を一気に読んだ。
今回は幾つかの短編を収めた形ではなく、「鬼平犯科帳」などの言い方を用いれば、特別長編といった感じで、この本一冊で一つの事件の解決・仕置きを行うという内容になっている。
しかも事件の主な舞台は、京都ではなく、岐阜町である。
粗筋を少し書く。
足引き寺の一党の一人・地蔵寺の宗徳が、浄土宗総本山知恩院に命じられて、無住寺となった岐阜の歓喜山・安楽寺に、留守居僧の住職として、しばらくいくよう命じられた。宗徳は、人間の言葉を解する飼犬の豪に対し、しばらく今日で留守をするように命じたが、豪は彼を慕い、彼の匂いをおってついに岐阜の寺までたどり着いてしまった。
豪は岐阜へ向かう途中、茶店で食い逃げし街道人足から追われていた訳有の小僧・定助を助ける。定助は、京の茶道具屋「高瀬屋」で小僧として働いていたが、郷里岐阜の経師屋茜屋で職人として働いていた父親が辻斬りで殺されたのを知り、病気で臥せっている母親や幼い妹二人を帰って養わねばならないと思い、店がクビになるのを承知で飛び出してきたのであった。宗徳は、豪と一緒に安楽寺にやってきた定助の話を聞き、彼が奉公していた京のや、彼の父が奉公していた経師屋のその後の対応に不審を抱く。
宗徳は、豪を使いとして京の地蔵寺まで奔らせた。京の高瀬屋を調べさせるよう京の仲間に依頼、その後も飛脚を何度も通せた。与惣次にも従僧として、岐阜に来てもらい宗徳を助ける。
定助の父親を殺したと思われる剣客は、すぐに見当がつくが、その背後には何か良からぬ動きがあるように思え、京と岐阜の足引き寺のメンバーが連携して、二つの店の動きを探るのであった。・・・・・・
澤田さんお得意の骨董や絵画、陶磁器などがからむ事件の話である。
今回の話には、私が住む石川県やお隣の富山県が、色々と関係してくる。
事件自体では、(私が住む)七尾市出身の長谷川等伯の贋作も大きく絡んでくるし、また登場人物の中には、富山藩(加賀藩の支藩)出身の者も登場する。そして加賀藩の支藩・大聖寺藩や九谷焼の名までもが、ある登場人物の逃亡先の中の話で出てくるのだ。
以前にも紹介したが、澤田さんは「闇の絵巻」で長谷川等伯やその子・久蔵が、狩野派などと格闘する様を描いたりもしている。
何か、小説の中で自分の住む地域が関わってくると、事実でなく単なるフィクションでも少し嬉しいものである。
こういう事件解決型の時代小説の場合、私はコンパクトで引き締まった短編ものの話も勿論好きだが、こういう長編ものも、短編とは違った良さ、話に緊迫感のようなものが短編よろ多く感じられ好きである。今後も、時々、このシリーズにおいてできれば長編ものを書いてほしいと思う。