(この作品に関しては、ほぼ似た内容を
「源さんの書評」にも採り上げました。この本の書評は
ココに書いてあります。)
第一部の方のコメントでも書いたが、この本では、戦国時代、起きた多くの事件・戦いが、筋者・鉢屋が裏で関わり、大きな影響を与えたということになっている。勿論フィクションである。
たとえば桶狭間の戦いも、鉢屋が今川義元をあの場所に導き、織田信長に討たせたということになる。『武功夜話』でも蜂須賀小六らが、土豪に化けて桶狭間付近で今川を饗応する話が出てくるが、この本では完全に鉢屋の計略として、この裏工作が行われている。
この筋者たちのネットワークは、秀吉を、鉢屋の総元締・乱裁石念(あやたちのせきねん)の後を継ぐ人物として認め、天下人にしようと後援する。秀吉は信長の後の二番手として、当初は信長も同時に後援する。金ヶ埼の撤退も、姉川の戦いも、長篠の戦いも、姉川の戦いも、皆鉢屋の筋者が何かしら助力する。
乱裁石念が、上月城の近くで、罠に陥り死ぬと、秀吉がその後を継いだ。
信長が、その蠱疾を強めていくと、千宗易、今井宗久など鉢屋一党は、信長謀殺の計を練る。そして中国方面へ秀吉・光秀双方が征西した時点で、秀吉の方から信長への出師を願い、信長が西へ移動後、家康には東から攻めてもらい、姫路あたりで信長を挟み討ちにすることで、裏工作する。
さて秀吉が中国方面の要衝・高松城を包囲し水攻めをはじめると、予定通りに信長へ援軍要請した。信長は光秀に秀吉を助けるよう命じて、自分は上洛し、本能寺に泊まった。ここで光秀は鉢屋との約定を破り、丹波亀山から老いの坂を下ると、京の信長が泊まる本能寺に討ち入り、信長を討ち果たす。しかしそれも十数日の天下だった。
秀吉は中国から大返しで反転し、約定をたがえた光秀を、山崎の合戦で討ち取る。柴田勝家も数年後倒すと、秀吉は天下をとる。しかし官位を昇進させていくうちに、秀吉は、次第に筋者としての誇りを捨ててしまう。筋者の総元締でありながら、筋者が弥勒下生の世で生きられるようにするという願いを忘れてしまう。その上、浅井の恨みを晴らそうという茶々(淀君)の手練手管に操られどんどん荒む。苛斂誅求、贅沢三昧、豪華な生活、朝鮮出兵など行う。
鉢屋の筋者としての生き方を守ろうとする母の仲と、妻のお寧は、子として(夫としての)秀吉に見切りをつけ、鉢屋の総元締を秀吉から、同じ阿弥衆の出の家康に、鉢屋の総元締を継がそうと決心する。・・・・・
かなり詳しくストーリーを書いてしまった。まあとにかく、鉢屋が秀吉の生涯の事件の殆ど全てに関わるとしている作品だ。小説なのだから、細かいことは言わずに、楽しむのが一番かもしれない。
((七尾市立)田鶴浜図書館から借りてきて読む)