水上勉氏の手になる童話だ。
あらすじだが
主人公は、ある町外れにある寺の沼に棲むトノサマガエルのブンナ。
彼は跳躍と木登りが大好きで、大の冒険好き。
沼の側に椎木の大木があったが、彼はよく、その木を少し登って高みから周囲を見渡す事が好きだった。
しかし天辺までは登った事はなかった。
高みに登れば登るほど視界が広がり遠くまで見渡せる喜びを知った彼は、ある日とうと天辺まで登ってしまう。
天辺は雷が落ちて木が折れた痕で、チョットした平坦地になっていた。
ブンナが想像した通り眺めは素晴らしいものだった。
そこは鳶が来る可能性があると雀から聞いていたブンナだったが、いざという時は天辺に堆積してる土の中に潜ればいいと考え一晩泊ってしまう。
そこは実は鳶が獲ってきた餌の一時保管所だった。
翌朝、さあ木から降りようかとした矢先、鳶がやって来て獲ってきた動物を落としていく。
そこに連れてこられた動物たち(雀、百舌、蛇、鼠、ウシガエル、ツグミ)は、半死半生の目に合わされて、鳶の餌食となるまでの僅かな時間を、後悔したり、懺悔したり、自分だけ生きようとした。
それらの傷ついた動物たちにも食われる恐れのあるブンナは以後土の中から出られなくなる。
彼らが語る話を土の中から聞く事で、この世の道理や生きるとはどういうことか等、色々学んでいく.....といった話です。
一流の小説家による動物を擬人化した童話だけに、子供でも読める話ではあるが、人生論などに置き換えれば非常に深い内容である。
水上勉氏の本は、実は私はこの本が初めてだが、こんな作家だったのかと思った。勿論興味増幅。
これからは、もっと水上氏の本も読んでみようと思う。
(追 伸)
主人公の名前ブンナだが、この話の中ではブンナ自身その謂れは知らないような事が書かれているが、巻末の解説によると、ブンナとは釈迦の弟子の1人の名に因んで付けられたもの。つまりこの童話は、賢明な弟子の苦悩を、ブンナは蛙の身でなめるという物語ということらしい。
私が実際に読んだ文庫のカバーは、下の写真のものです。