著者の孫崎氏は、満州出身だが私が住む石川県小松市で育ち、金沢大学附属高校、東大法学部を出て外務省に入って長く外交の仕事をしていた人らしい。
昨年亡くなったあの岡崎久彦氏が情報調査局長時代は下僚の情報分析課長として働いていたこともあるとか。
またネットなど孫崎氏の事を調べてみると、民主党が自民党から政権を奪還した時の鳩山元首相の「政策ブレーン」と称される一群の人々の一人としても活躍していたことがあるそうだ(といっても私はミンス党も鳩山元首相もそれほど好きではない)。
ただ彼の説論を強く批判される方も多いようだが、少なくともこの本に出てくる尖閣諸島問題の棚上げ論があった話などはどうも事実らしく、マスコミ報道も、多方面から情報を仕入れないと、騙されるなあと感じた。
読む前から批判的に読むのではなく、政治的な支持・不支持は脇に置いて読んでみた。すると内容的には非常に面白かった。
認識不足だったかなと思う点など幾つかあげよう。
まずは先にもちょっと挙げたが尖閣諸島問題の棚上げ論。この本によると1972年の田中角栄と周恩来の会談で、尖閣諸島問題の棚上げの合意があり、また1978年の園田直外相と鄧小平との会談で同様に棚上げの再確認があったと。
私は、日本政府が公式に認めていないにしても、談話録などがあるということからすると本当だろうな、と思った。
驚いたような記述がまだあった。日本は敗戦後ポツダム宣言受諾により、カイロ宣言を受け入れることになったが、そこには日本の主権の及ぶ範囲に関し、本州、北海道、四国、九州並びに占領国側が決定する諸小島に限るとあり、実は小諸島についてはその後詳細に決定的には決めていなかったようだ。
沖縄がアメリカから返還されるにあたって、米国は尖閣諸島について声明している。そこで尖閣列島は日本の管轄下にあると述べているが、どうも状況的に見てただ実効支配していると言っただけの事のようだ。他方では米国はまた尖閣諸島問題は係争中であるとして、米国は最終的な主権問題には(つまり日中の紛争には)関わらないとしている。つまり紛争中である限り肩入れして日本側を味方することはない、と言っているのだ。
1960年の安保条約第5条(簡単にいうと日米どちらか一方の国が敵に攻撃された時、共同の的として行動すること)が適用されるのは、管轄権下の地域に対してだという。
つまり尖閣諸島はまだ係争中であり、一応は日本が実効支配で管轄しているが、米国はここに関しては肩入れしないと言っており、もし中国が上陸し一時的にでも実効支配するなら安保条約第5条の適用地区から外れ、介入しない公算が大きいというのだ。
米国は、日本の有り様を、自国の国益に合わせて、思い通りに操作してきたというのも、その通りのような気がする。
この本では、尖閣問題を引き起こすよう謀略した源をたどると、どうやら米国らしいとなっているが、私もそんな感じは以前からしていた。
この本の著者によると、日本を米国の思い通りに操作するジャパン・ハンドラーという一群の者たちがいて、日本政治家も外務省も自衛隊も、米国を恐れて、彼らの意向に合わせて政策を決めてきたという。米国に不利になる、日中の接近は阻害し、また同様に日米地位協定の改訂や廃止などは極力、そうならぬよう工作し、それに操られてきた日本。
どうしようもなく情けない日本。徹底的に狡猾なアメリカである。
ここまで米国が、狡猾だと中国より嫌な相手だと言えなくもない。
米軍が駐屯している以上、主権は日本にあっても、実は占領されているのとあまり変わらず、強いことも言えない国・日本。
この本を読んでいると、果たして日本は、主権国家か、と思いたくなる。
読んでいて、軍事・外交問題の裏側には、日本国民に知らされていない事も沢山あり、日本国・米国・中国などに騙されないためには、自分なりに知る努力をする事が必要なのかなと感じた。
オススメの一冊です。
(またまた非常に長い駄文になってしまいました。スイマセン!)
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