当シリーズ第10弾、最終巻である。
何とか最後まで読むことができた。
第9弾の紹介記事でも書いたが、このシリーズは、50過ぎのこのオッサンをホントによく泣かせてくれたよ。
最終巻だけあって、(悲願や問題だったことは)あれもこれもハッピーエンドで終わる。それだけにどういうハッピーエンドかなど書くと面白くなくなってしまうから、今巻のあらましはちょっと書けない。
それで重複・繰り返しになるかもしれないが、このシリーズ全体を通して流れる、大きな流れをあらまし的に簡単に説明しておこう。
第1巻では、享和2年(1802)大坂の水害で、主人公澪(天満橋)と野江(高麗橋淡路屋の一人娘)の幼馴染二人が、二人共とも両親をなくして天涯孤独の身となる。
澪は、大坂の名料理店・天満一丁庵に引き取られ奉公人として働き始めるが、そこの主人・嘉兵衛に彼女の天性を味覚を見出され、嘉兵衛から厳しく料理人として仕込まれるが、一方、野江の方はその後行方知らずとなってしまう。
しかし、澪が新しい生活を始めてまだそんなに経たない天満一丁庵も、隣店の出火により類焼する。大坂の資産を皆失くした、嘉兵衛・芳夫婦と澪の3人は、天満一丁庵の江戸店を任せていた嘉兵衛の一人息子・佐兵衛を頼って江戸に出るが、江戸に出てみたら、佐兵衛は、吉原通いで散財して店を潰してしまったとかで行方をくらましていた。
嘉兵衛は心労でその後間もなく亡くなり、芳と澪は江戸の片隅の長屋でひっそりと親子のように暮らす。やがて澪は、蕎麦屋つる屋の店主・種市から働かないかと持ちかけられ、そこの料理人として働き、その後めきめきと料理人としての実力を発揮し、注目をあびる事となる。
澪はそのうち、吉原の妓楼扇屋に幼馴染の野江が、吉原一の花魁あさひ太夫として暮らしていることを知る。澪はそれ以降、何とか野江を苦界から身請けするのが彼女の1つの夢となる。また天満一丁庵を再興するのも、芳の恩に報いるためであり、それも夢となる。若い娘に重荷がのしかかる訳だ。
天満一丁庵江戸店だった建家は、汚い手をつかいのしあがってきた登龍楼に乗っ取られ、そこの店となる。その後、料理番付で、何度も、登龍楼と、つる屋が大関位を争うことになるが……。
また野江を身請けするには四千両という途方もない金額を用意しないといけない。でも澪は諦めず、何とかその夢を果たそうと己の料理を頼りに、ただ時ばかりが過ぎ行く状況に焦りながらも必死に頑張る姿がシリーズ全体を通して描かれる。
澪の最初の想い人・小松原や、澪をいつも温かく見守る医師・源斉、料理人又次、札差の摂津屋助五郎、翁屋伝右衛門、戯作作家・清右衛門、版元・坂村堂嘉久etc….. 色々な重要な登場人物がいるが、ここで一々説明していては、いくら字数があっても足りない。
1つだけこの最終巻の大きな事件を書いておくと、芳が望まれて後妻として再婚することになった老舗料理屋「一柳」の主人・柳吾が、将軍家しか食べられない「酪」を作っていたとして奉行所に捕縛され、取り調べのため長く拘留されることになる。
皆が心労で疲れ、一時は最悪の状況のようになるが、天満一丁庵ゆかりのある男の出現を契機に、流れは急に変わり出し、一気に色々な事態が、好転し、最終的には、あれもそれもこれも…という感じで皆ハッピーエンドになる。
最後まで読んでみると、髙田郁さんは、最初の第1巻から、色々と伏線を敷き、全体のストーリーの構想をある程度前もってやはり考えて書いたようだな。
でないと、なかなかこのように大団円の物語にはできないはずだ。
流石である。小説家はやはりこうでなくっちゃ!ね!
オススメの時代小説です。