夢枕獏氏の『陰陽師』シリーズは、この巻で何巻になるのだろうか?
絵本ものも含めるとおそらく十数巻になると思うが。
彼の陰陽師ものは、(今回『蒼猴ノ巻』を読んだので)最新刊を除いてほとんど読んでいるはずだ。
彼の影響で、陰陽師ものに完全にはまってしまった私である。
陰陽師関係は、夢枕氏以外も含めるとおそらく4、50冊は読んでいると思う。
それだけハマったう夢枕氏の『陰陽師』シリーズだが、実は数日前まで最新刊『蛍火ノ巻』が出たのを知らなかった。
本屋の店頭の平積みの場所でそれを発見。まだ『蒼猴ノ巻』を読んでいないので、図書館へ行き、慌てて借りてきて読んだ次第である。
今巻の収録話
「鬼市」、「役君の橋」、「からくり道士」、「蛇の道行」、「月の路」、「蝦蟇念仏」、「仙桃奇譚」、「安達原」、「首をかたむける女」、「舟」の10話である。
『本朝神仙伝』の名などもこの巻の中で登場していたが、夢枕氏のこの『陰陽師』シリーズでは、数々の奇譚的本から沢山ネタやヒントを得て、時には古きものを彼なりにアレンジして、そこに安倍晴明を関わらせることによって絶妙な物語に仕上げている。
今回は間接的だが、役小角や孫悟空(斉天大聖)の話なども出てきた。
また有名な「安達原」も夢枕氏なりの独特のアレンジで、新たな息を吹き込み佳品に仕上げている。
江戸時代、大坂に山片蟠桃という商人出身の学者がいたが、その「蟠桃」の名の由来も知った(山片蟠桃の蟠桃は彼が「番頭」であった洒落であったが)。崑崙山の西王母どの庭に生える蟠桃の木が、この言葉の由来のようだ。
晴明と彼の親友・源博雅の仲も、最初の巻からずっとかわらず続き、いい雰囲気を作り出している。また博雅の龍笛・葉二(はふたつ:南大門に棲む鬼からもらった笛)の響きも益々冴えを見せる。
色々な雑学知識も得られるし、奇譚としても各話とも非常にコンパクトに上手く仕上がっていて、楽しく読める本だ。
この巻も勿論、オススメの一冊です。
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