まず昨夜何とかこの本にとりかかったのはかなり前だが、色々な本をパラに読んでいたので、今日の早朝やっと読み了えることができた。
「源さんの読書日記」の紹介とも重複するが、ちょっと紹介しよう。
表題作で巻頭の作でもある「ペルシャの幻術師」は、司馬氏の幻のデビュー作という。昭和31年の第8回講談倶楽部賞を受賞した作品だが、解説によれば、選考ではそれほど好評でなく、海音寺潮五郎さんが一人強く押して受賞したらしい。選考者の間で、あまり評判がよくなかったのは、日本人が一人も出てこないことや、幻想的な小説であったためのようだ。今では考えられないことだが、昔は幻想的な小説は流行らなかったようだ。でも今までの型を破る作品を切り開いたという意味で、意義ある作品だったようである。
他に「戈壁(ゴビ)の匈奴」、「兜率天の巡礼」、「下請忍者」、「外法仏」、「牛黄加持」、「飛び加藤」、「果心居士の幻術」が収められている。「戈壁(ゴビ)の匈奴」は西夏の世界一といわれる美女を求めてジンギスカン(鉄木真)が、西夏に五度も攻め入る話。「兜率天の巡礼」は閼伽道竜という元大学教授の妻のルーツを求めての幻想の話。「下請忍者」、「外法仏」、「牛黄加持」、「飛び加藤」、「果心居士の幻術」は、日本における忍者や幻術師の話を取り扱ったもの。
この本の中の作品は、どれも「梟の城」で直木賞を受賞する前の初期の作品で、司馬氏自身あまり評価していなかった作品らしいが、どうしてどうして現代の売れているが(私の眼から見ると未熟に思える)幻想小説家などと比べたらやはりずっと力量が上と感じる作品である。
ぜひ皆さんにも読んでいただきたい作品である。