『新版 原発のどこが危険か-世界の事故と原発』(桜井淳著・朝日新聞出版)を読了した
<百字紹介文>
大惨事となった東京電力福島第一原発事故が起こる相当以前から、原子力関係の専門家の中で孤軍奮闘して原発の問題性や危険性を訴えてきた桜井淳氏が、一般向けに書いた、今回の事故を予言したかのような貴重な一冊。
<詳しい紹介文>
専門家が書いた本だけに、一般向けとはいえ結構難しい箇所も有った。図などじっくり見ながら2度繰り返して読んだ(実は3週間ほど前から読み始めていた)。正直言ってそれでも分らない箇所もあったが、趣旨や概略は理解できたと思っている。
著者が「1995年に刊行の旧版に、2011年の福島原発事故に関する詳細な考察を加え、新版として緊急出版」したと帯紙にコピー文にあるが、福島原発事故に関する内容は、新版まえがきやあとがきに十数頁あるだけで、あとは旧版の内容である。
かといって内容的に古いかというと、この本に書かれた問題点はまさに今の原発の問題点でもあると思った。
著者は、原発の事故発生時の三つの命綱として、1、炉内の制御棒、2、緊急炉心冷却装置(ECCS)、3つめに非常用ディーゼル発電装置を挙げて、その中でも特に外部電源喪失(いわゆるブラック・アウト)に関わる3の重要性を挙げていた。
日本は、軽水炉式・沸騰水型原子炉が国内の原発の約4割を占め、それにおける非常用ディーゼル発電が万が一停止した時、制御が利かなくなり、メルトダウンに至る公算が大の事を指摘している。まるで福島第一原発の事故を予言していたかのようである。
この本に上げられた数々の原子力発電の問題点は、ずさんな運営管理をしている旧ソ連の原発の問題であっても、十分日本で起こりうるようで怖い気がした。
何より日本の原子力発電の一部が(例えば私が住む石川県の隣県福井県の美浜原発など)、もう設計上寿命の時期に来ており、それを国や電力会社は技術基準を緩めたりして誤魔化しているに過ぎないことを知った時にはゾッとした。
それも多くの原発の原子炉などで設計数値より早い時間で、脆弱化が進んでいるという。例えば高速の中性子が圧力容器の壁にぶつかって中性子脆化を促進し、冷却材など入れた時の加圧熱衝撃にだんだんと耐えられなくなり、高温度までしか下げられなくなるという。
そしてその危険性を示す技術基準の脆性遷移温度が、日本(のみならず世界)各地の原発で、どんどん高温化する傾向にあり、これが各地の原発で、設計段階で考えられていた年数より、ずっと早く進んでいるという。
素人的には、原子炉に問題があった時には単に緊急停止をして急激に冷やせばいいと考えてしまうが、実はそれは非常に拙いことのようだ。
先ほどもちょっと書いたが、加圧熱衝撃で、原子炉圧力容器の厚い金属の壁等が劣化し、下手をすると亀裂が入ったり、破裂して大惨事になる恐れがあるという。
伝熱管など管類や蒸気発生器などなども亀裂・破裂やピンホールによって、それが契機となり大惨事に繋がる場合もあるそうだ。
管内など金属の脆化(ぜいか)の原因などには、他にもコロージョン(電気化学的な腐食)、エロージョン(酸化膜の剥離除去)などによる減肉減少など色々あるようだが、この本にはそういう原因が沢山出てくるので、ここでは詳しくは書かない。
人為的な問題点も色々出てきた。意外と体質的な理由は、世界各地よく似ている気もした。
100万キロワットの発電所が1日営業運転すると大体1億円利益が出るという。それで電力会社は出来るだけ運転をして儲けようとする。
不具合に遭遇しても、守らねばならぬマニュアルを無視して出来るだけ営業を続けられえるなら続けようとする傾向というか電力会社の性格があり、それが事故に繋がることの契機になることが多いようだ。
安全第一という言葉は、電力会社にとっては、単なる外向け・宣伝用の繕い言葉に過ぎぬのであろう。著者は運転至上主義に陥った極めて危険な体質だと指摘する。
私が住む能登には志賀原子力発電所がある。私の家から直線で約20kmしか離れていない。そこでも場合によっては怖い事象を引起す故障事故があったという。というのは1号機の2台ある再循環ポンプのうちの1台が動かなくなったのに、その後12時間も運転を継続し、その間に故障の原因を特定し残り1台を直そうとしたが、結局やむなく原子炉を停止したという。
この再循環ポンプの故障は、詳しくは書かないが、本来炉心を通過する冷却材の密度はこのポンプにより均質になるが、停止するとその均質さを乱し空間分布の密度に差を生み、酷いときには炉心損傷にまで繋がる事もあるようだ。
また数年前には、志賀原発の10kmほど沖を震源とする能登半島地震(能登の広い範囲で震度6強)があった。北陸電力は特に問題は無かったように言っているが、疑わしく思っている。
電力会社はどこも、定期点検なども下請け任せで、形式だけ繕い、下から上がって来た検査書類に担当官の判子を幾つも押すが、自分達ではろくに現地での目視確認はしていないようだ。
・・…あれやこれや、安全性を無視した運転をしながら片や安全神話を謳ってきた原発。本当に読んでいて恐ろしくなってしまった。
この著者・桜井淳は、原子力関係の専門家の中で一人孤軍奮闘してこのような本を書いたりしてきたので、以前相当嫌がらせや強迫じみたことも受けたらしい。
過去の事故の実際例を丹念に調べ上げ、検証しているのが素人にもよく分り、信じるのに足るものがある。
原発推進派は、ここまで来たら恥じてしかるべきではなかろうか。
廃炉の技術さえ確立されていない原発など、私は推進することは人間の将来に消しがた禍根を遺すことであり、できる限り早く全廃すべきと思う。
できるだけ多くの日本人に読んでもらいたい一冊です。


能登をこよなく愛する好奇心旺盛な40代後半のブルーカラーの源さんです。趣味の1つ読書(本の紹介・書評中心)のブログです。年間150冊前後読みます。2005年からこのブログを始め、既に1千冊以上を紹介しています。
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