『こいわすれ』(畠中恵著・文藝春秋)を読了した
<百字紹介文>
「まんまこと」シリーズ第3弾。主人公の高橋麻之助(町名主の跡取息子)の妻・おす寿ずが懐妊。彼は彼女の体が心配ながら、親友二人も含めた3人に関わる事件を次々と協力して解決していくが、お寿ずが・・・・・・
<詳しい紹介文>
「まんまこと」シリーズ第3弾である。
著者の「しゃばけ」シリーズと比べたら、少し大人向きの時代小説である。
(両シリーズとも既刊は全て読んでいる)
まず両シリーズの全体的に見た違い(私の印象だが)を述べる。
(この本自体の内容の紹介は後半に書く)
「しゃばけ」シリーズは、主人公・脇役が少年や楽しい妖(あやかし)達であるが、こちら「まんまこと」シリーズは主人公・脇役が一応大人の仲間入りをした青年の男女中心である。
よってしゃばけシリーズでは、恋の話も時に出るが(滅多に無い)、まだ少年少女の恋であるに対して、こちらは20代の大人の恋心・夫婦愛などの愛情を描いている。
10代の少女らの想いも交差するが、人間関係・心理描写などの描き方も大分趣が異なる。
主人公は町名主のお気楽な跡取息子・高橋麻之助、それに親友二人だ。
一人は同じく町名主の跡取息子であったが、最近父親を亡くして正式に町名主になった八木清十郎と、もう一人は町奉行所の堅物の見習い同心・相馬吉五郎。
この3人を中心とした常連が固い絆で協力し、事件など解決していくというパターンだ。
私自身、著者の作品を多数読んでいるから面白いことは保証する。人気作家であることも間違いない。が流行娯楽時代小説作家とは言え、優れた作家という訳ではない。少し酷な評価をすれば、社会描写や深い人間像などの描写は無い。
この作家と同様、自作品に時々少年少女が登場する宮部みゆきさんの方が、その辺の実力は相当上のような気がする。
昔の時代小説作家、例えば藤沢周平、山本周五郎、池波正太郎などの作品には、人情や江戸情緒、江戸時代という封建の世が生み出す、深いところまで掘り下げた人間模様など傑作が多々あった。
(そんな文豪と比較するのは酷な話だが)それらと比べると、やはりレベルは落ちる。漫画家出身のこの著者の今の段階ではこの辺りが限度だろう。また著者自身も、そこまで深く人間を掘り下げて描こうという気はないのだろう。
活字離れが進み、ライトノベルという小中学生並みの軽い小説が大人の間でも流行る昨今、そういう深い人間像を描く時代小説を書こうものなら、若者から敬遠されるのがオチかもしれない。
活字離れの日本人を少しでも引き止めておくには、また日本人を活字離れから少しずつ読書好きにするには、こういう作家がもっともっと必要なのかもしれない。
漫画より多少マシと考えて、プラス思考で考えるべきなのか。何か日本人は、社会で大事な問題を、しばしばこういう風に自分に言い訳をして、結果として悪い方向へ悪い方向へと進んだ気もするので複雑な気持ちである。
これをここまで読んだ人は、今回の私はいつになく手厳しい批評だと思う人がいるかもしれない。別に今回特につまらなかったとか、拙い点が目に付いたという訳ではない。
たまには(個人的な見地によるが)相対的評価など書くのも悪くないと思ったまでだ。
要するに気まぐれで、今回はこういうスタイルの紹介にしたのだ。ご了解頂きたい。
遅くなったが肝心のこの本のストーリーの紹介を次に書く。
前巻『こいしり』で、主人公の麻之助は、お武家の娘・お寿ずと結婚。今回はお寿ずが懐妊し、彼女の体を大事に思いやる彼の姿がこの巻を通して、基調のように流れる。
以下各話の前振りの粗筋を書く。
収録作品は、6話。
第1話「おさかなばなし」
おいてけ掘りの畔で河童が起こしたと噂される金盗り、人攫い等の騒動に、主人公を中心とした3人の男らも関わり、事件解決に乗り出す。
第2話「お江戸の一番」
江戸時代、色々な番付が作られたが、狂歌作家と画家というジャンルの違った二つの人々をランキングした番付が巻き起こした騒動を麻之助が裁く。
第3話「御身の名は」
モテルほどの男でもない麻之助のもとに、会いたいと待ち合わせの日時場所を指定する女からの無名の手紙が届く。が、出向く度はぐらかされ4度も空振りになる。一体相手は何者か?・…
第4話「おとこだて」
両国界隈で若いものを束ねる顔役の貞は吉五郎に男惚し勝手に義兄弟を名乗っているが、いなせな男で女にモテる。
ある時、瓦版に、武家の妻などに貢がせる色男の話が載り、町の噂になる。貞はその色男が自分の事と人々に勘違いされると怒り、麻之助らの助けも借り、その元凶の色男を探すが・…
第5話「鬼神のお告げ」
庚申待ちの夜に三尸の虫のお告げを聞いたという古着屋が、湯島天満宮の富くじで、お告げどおりの番号の札で六百両の大当たり。・…
少しネタバレになるが、この話の最後で、お寿ずが赤子と一緒に産後間もなく亡くなる。
第6話「こいわすれ」
お寿ずの死後、様子がおかしくなった麻之助が、ある日、清十郎と一緒に歩いていると、神田川に架かる柳橋から落ちそうになる娘を見つけた。駆け寄り腕を掴むが、一緒に川に落ちてしまう。が川下に偶然いた4人の船頭らに助けられ二人とも九死に一生を得るが・…。
最後に上で色々批評を述べましたが、娯楽時代小説としてはやはりお薦めです。
畠中恵ファン必読の一冊です。


能登をこよなく愛する好奇心旺盛な40代後半のブルーカラーの源さんです。趣味の1つ読書(本の紹介・書評中心)のブログです。年間150冊前後読みます。2005年からこのブログを始め、既に1千冊以上を紹介しています。
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