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『人間から出発する社会』(V.ジスカール=デスタン著・磯村尚徳ほか訳・ダイヤモンド社)を読了した

人間から出発する社会 (1977年)

V.ジスカール=デスタン / ダイヤモンド社

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  ジスカール=デスタン氏は、3代前のフランス大統領である。現大統領はニコラ・サルコジ。その前はジャック・シラク、2代前はフランソワ・ミッテラン、そして3代前がこの本の著者ヴァレリー・ジスカールー=デスタン(在位期間:1974年5月27日〜1981年5月21日)である。

 ちなみに4代前は、ジョルジュ・ポンピドゥ、5代前があのシャルル・ド・ゴールで第五共和制初代大統領である。ここまでは私もこれらの大統領の動向を生のニュースで見ていた記憶がある。

 この本は、ジスカール=デスタンが大統領に就任してから2年目(1976年)に書いた本である。
 原題(デモクラティ・フランセーズ(Democratie Francaise))は訳すと『フランスの民主主義』だ。
 内容は選挙向けに書かれたものではなく、貴族出身で当時のフランスの最高の知識人・頭脳の持ち主でもあったジスカール=デスタン大統領が、フランス社会の現状分析と展望などを述べた政治哲学セエッセイともいうべきほんとなっている。

 この本を読んだのは特に深い意味はない。本棚の片隅にあって読んでなかったのを読んでみたのだ(勿論私が買った本ではない)。

 全体的な印象をまず述べよう。NHKの磯村氏及び荻野氏の訳が悪いのか(訳者は大統領の文章自体が非常に難解だというが)、高校生の下手くそな直訳的翻訳文のような感じで非常に閉口させられた。数回じっくり考えて読まないと意味が把握できない文章なのだ。
 が何とか四苦八苦して意味を掴むと、その含蓄の深い言葉に流石だと感嘆せずにはおれない凄さがあった。

 ジスカールー=デスタンの政策の基本姿勢は、タイトルにあるように「人間から出発する社会」のようだ。
フランスの現代史は、ほとんど詳しいことは知らないが、この本が書かれた当時は東西冷戦の真っ最中の時期だろう。

 フランスは、世界で最初に市民革命が起きた国で自由への信奉が強い国だが、マルクス以降は、ヨーロッパの中にあって社会主義、共産主義の支持者がある程度の割合を占める左翼が結構幅を利かせている国だ。

 ジスカール=デスタンは、中道諸派の1つである独立共和派というグループを率いていたものの、ドゴール派とも距離を置いてきた。ポンピドゥー死亡に伴う大統領選挙でドゴール派が分裂、シャバン=デルマス候補が頼りないということで、ドゴール派からも数多くジスカール=デスタンに票をもらい、僅差で社共連立の統一候補ミッテランに勝利して大統領になったらしい。

 彼は古典的自由主義も、マルクス主義も選択しない。現実を分析するに不十分な理論として否定する。彼によればイデオロギーの役割は、現実を分析するに十分な説明を提供し、行動を導くことだという。

 彼は競争原理が横行する自由主義には疑問を感じ、自由であるが責任ある人間の共同体からなる社会を目指したようだ。
 支配・被支配、管理者・非管理者のような階級社会ではなく、コミュニケーションと参加の社会。わかり易く云えば個人が自己の能力を様々に発揮したり政治的・社会的発言ができる意思疎通がスムーズな参加型の共同体的社会を目指したということだろう。

 経済発展も、大企業中心の発展ではなく、人間の創造的活動の展開として構想されねばならぬ・・云々と書かれている。

 独占などの不正義排除を目指し、教育などでは、出身や収入の差に関係なく、機会の平等化お目指し、様々な職業につく道を与えることなど色々政策を実施したようだ。当たり前の政策のようだが、フランスのような階級社会が定着していた国家では困難な道であったろう。

 彼の戦略としては、古典的自由主義でもなく、教条的な社会主義でもない第3の道、集団主義を排除し、また資本主義的でもない複数主義的(権力の複数主義的構造をもった中央集権的とは対立する概念のようだ)企画による民主主義を考えたようだ。

 といっても複数主義とか、集団主義とかいう言葉は普通ほかのの本ではあまり使われない。彼は、「社会主義」や「資本主義」という言葉を敢えて注意深く避けて、このような慣れぬ言葉を用いたようだが、私も短い説明では、その用語を十分に説明できない気がする。

 書かれたのは35、6年前の非常に古い本だ。克服すべき課題・問題点で揚げている項目など見ると、野放し・行き過ぎの競争原理などで無秩序になりがちな自由主義経済、行政改革、自然破壊からエコロジー(環境生態学)への転換など、現代の我々の問題でもあるものが多い。

 30年、40年経っても、実のところそれほど社会は改善されていなかったということだろうか。

 現代でも考えさせられる記述が多い本である。また難解な本だけに、難解な本の内容紹介となると自分はまだまだ未熟で、その能力の無さをつくづく感じさせられる(あとがきを読むと磯村氏は、原文の印象を反映すべく敢えて直訳的のままにしたとのことだが)。

 拙いレビューで皆さんには申し訳ないが、自分の理解能力を少し超えるこのような重厚な本を読むの事は個人的には成長するためのいい刺激と感じており、今後もどしどし挑戦したいと考えている。
 

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by une_genzaburo | 2011-10-26 18:39 | 読書 | Trackback | Comments(1)
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Commented by TERAI at 2011-10-27 01:07 x
磯村尚徳さんですか。ニュースセンター9時の初代キャスターですよね。海外特派員も長かったのではないですか。懐かしいです。
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