著述家などめざす人でなくてもこれからの時代は「書く力」が非常に重要になる。なぜなら「書く力」は構築力、考える力でもある。この本を読んで、それが人生を意義あるものにするかどうか左右する可能性もあるように思えた。
先の記事でも斎藤孝氏の本『読書のチカラ』を採り上げた。今回は読む方でなく、書く方の話。タイトルは『原稿用紙10枚を書く力』である。
原稿用紙10枚程度の長文を書く自信が無いわけではないが、常々我が駄文に呆れている。この書評のサイトは不特定多数への書評・本の紹介の意味もあるが、自分の読んだ本の備忘録の意味もある。
公開している以上、公への配慮の方が大事なのだが、自分用には備忘録という私用目的。私も家業がある身なので、あまり時間はかけられない。自由に使える短い時間を利用し、ついついマシンガンのようにキーボードを打ち、大して推敲もせずにアップしてしまう。結果はこのようなお粗末な塊のコーナーである。
反省は常々している。文章作成法のような本を参考に少しずつでもいいから改善したいと思っている。そんな訳で、一昨日古本屋へちょっと足を運んだら、斎藤氏のこの本がたった100円で売っていたので買った。
『読書の・・・』では著者は「読むことはスポーツだ」とキャッチフレーズを挙げていたが、こちらでも良く似た「書くことはスポーツだ」と言う。要はそれなりの長文を書けるようになるには、それなりの訓練が必要ということである。
まえがきで「書く力は、読書力と深い関係がある。書く力がない人は、たいてい読む力もない」とある。私がもし読書量が少ないなら、書くことに並行して読書に力を入れねばならぬが、そちらは一応人並み以上は読んでいる。改善の余地はあるが、まあそれほど悩む状況にはない。
原稿用紙10枚を書く力は、訓練次第で確実に身につけられると言う。同感だ。著者はさらに「もっと大事なことは、「書く力」を身につけることで、読書力がつくだけでなく、これからの社会でもっと必要とされる「考える力」をつけることができるということだ」と言う。
つまり訓練次第で、私としては駄文も改善できるだけでなく、読書力や「考える力」を同時にパワーアップできるということになる。となれば、訓練せねばならぬ。
私もこれまで、社会人として、またブログなどで文章を色々練ってきた。よって本文で薦めている方法の幾つかは自分でも既に気づき、以前から実行してきたことも結構あった。
例えば、意味の分かる文章を書くために、話し手として外人を念頭に書くこともある。
日本語は曖昧な表現が比較的多い言語だ。よって日本語を英語にする場合には、色々な語を付け足したりして訳さねばならぬことが多い。それに対してすぐ英語に訳せるような文章は、大概誰が読んでも分かり易い文章だ。
著者もよく似た考えをもっていた。
といっても著者はプロである。読書や文章の方法に関しては、自分などと比べると“なるほど流石だ”と大きく頷かせるものがある。
第2章の「「書く力」とは構築力だ」は大いに参考になった。その題だけ読めば当然だと思うが、自分自身今までの認識が甘かった気がした。斎藤氏のようなプロに師事し、真似ごとでもいいから試行錯誤・訓練する必要性を感じた。
例えば斎藤氏は「性格の違う三つのキーコンセプトを取りだして、その三つをつなげる論理を組み立てていく。」という方法を薦めている。なるほどと思った。
テーマとキーコンセプトを斎藤氏はよく混同し易いと述べていた。私も区別をつけずに書いていたように思う。あるテーマについて、書きたい「何か」がキーコンセプトで、そのキーコンセプトが書く方向性を左右するという。
文章構築のために「キーワードからキーコンセプトをタイトルになるようにキーフレーズに練り上げていく」訓練作業をもっともっとすべきなのだろう。
キーワード、キーコンセプト、テーマ、キーフレーズ等を明確に区別し、章立て、節、小項目など、文章を書き始める前にきちっと練って準備構築する訓練を、余裕のある時間に重ねたいと思う。
第3章は「「文体」を身につける」だ。文章に生命力をもたせるのが「文体」だそうだ。また「書く人の立ち位置を示すもの」でもあるという。存在感を示すようなスタイルでもあるという。自分はまだまだそこまでに至っていない。
「文体」を身につけるには、文章「構築力」がまず問われ、それからだという。先は遠いが、一層読書に励み文章力も鍛えながら、存在感を出せるような「文章」を書けるよう一歩一歩着実に登るしかない。
上記に述べた以外にも、参考になる指摘は非常に多かった。例えばローグ」に書かれていた「起承転結の「転」から文章は考える」は、暗黙の文章作成法の基本のようで忘れがちだし、読書の際、その「転」の一点を見極めるように読むと、作者の思考回路が見えてくるなどもなるほどと思えた。
より良き読書家やより良い文章を書ける人物になりたいと思う方には、この本はお薦めの一冊です。(今回も、この記事駄文性はあまり改善できませんでしたが(苦笑))
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