『勉学術』(白取春彦著・Discover21)を読了した
タイトル通り勉学術の本ではあるが、独学を強く薦めるならいっそ「独学術」にすれば良かったと思う。
第1章「勉学は独学にかぎる」。この本の主題を冒頭にドーンともってきたのだろう。何の異存も無い。私も、学生時代は勉強は独学に限るとつくづく感じた人間だ。
いきなり我家の事を述べるが、私の母は、戦時中に子供時代を過ごしたため尋常小学校しか出ていない。 それも軍事教練などの為、勉強もあまりさせてもらえなかったという。何か思う通りに書類の文章などが書けなかったりするとすぐ、せめて子供の頃もう少し勉強させてくれればよかったのにと嘆く。
そんな母に私は‘大学へ入ってみれば分るけど、結局、勉強は独学が一番なんだよ’、と一度だけ言った事がある。母は大学では勉強のコツも教えていると勘違いしているようで、あっさりそれを否定したのだ。私はそれ以来、母の同じような言葉を聞いても、心の中で否定するに留めている。
大学まで行かせてもらった私からすると、確かに大学に進学し、実際を見たのと見ないのでは違うが、結局大学の勉強も独学に限ると今でも信じている(特に文科系では)。
講義など幾ら熱心に聴いてノートをとってもあまり役には立たない。私は黒板にほとんど何も書かない先生の講義でも必至にノートをとった(超マジメ学生だった)。がそんなものは単位試験に役立つだけで、身に付く勉強でも、後に役立つ勉強でもなかったように思う。
知識が真に身に付くのは、講義や教科書のなかに出ている参考文献や、自分で本屋で吟味した本を読むことによってである。あくまで自主的な読書によってだ。
私は大学時代、専門書や新書、文庫など1千冊以上は読んだ。毎日のように大学生協の本屋や近くの神田の本屋街に行き、何かしら本を買い、寝るのも惜しんで読んでいたのを覚えている。(私は遅読である。本の種類にもよるが1時間に3,40頁程度しか読めない)
3,4年の専門課程で金融論ゼミに入ったが、教授がケインズ派でその考えをゼミ生に押し付けるタイプだった。私は面白くなく自分で何種類もの経済学史を読み、自分が納得できる学説を説く学者を見つけ、その人の本にどっぷりとハマるような勉強をしていた。
独学で勉強したのは、専門の経済学ではジョン・スチュアート・ミル、シュンペーター、ガルブレイス、レオンチェフ、マックス・ヴェーバー、大塚久雄などである。
他にも歴史学、政治学、外交学、社会学さらには心理学、科学(物理学・化学・生物学etc)、数学など自分の興味に従い、独学で読んだ本が一番頭に入った。
最近の脳科学の成果も裏付けているようだが、著者が言うように自主的に勉強した知識しか身に付かないように思う。よって独学こそ最良の勉強方だと(私も)今でも信じている。
この本にも出てくる「入門書ではなく原典を読め」「哲学書は最初から最後まで読む必要はない」は確かにその通りだと思う。
私も古典だとつい敬遠して、入門書から入ってしまう事が多い。勿論、読了どころか数頁で撃退されてしまうような難解な古典も多いが、必ずしもそうではない。
私が一応読み通すことが出来たのは、哲学者ではジャン・ジャック・ルソー、ショウーペンハウエル、カール=バルト、オルテガ・イ・ガセット、ヤスパースなどの本である。恐れずに一度ぶち当たってみればいいと思う。古典は岩波文庫などで廉価で売っているから、途中で断念しても大して惜しくはなかろう。またの機会に挑戦もできる。
著者と私が意見を異にする点も少々ある。
著者は本というものは最初から最後まで読む必要はないというが、私の場合は前書きからあとがきまで全て読まないと読んだ気にならない。著者ほど資金に豊富でなく、全部読まないと勿体無いというケチな性格も影響しているように思う。(全部読む必要はないという事を多く知識人が薦めているから私の方が間違いなのだろう)
「西洋を知るには聖書を読むしかない」との著者の主張は分る。しかし著者の、キリスト教の教養が全ての宗教に関する教養の上に立つ、とでも言うような考えには抵抗感がある。英語が実質国際語の現状ではそうかもしれないが私としては仏教の思想こそ、21世紀において全世界の人に知られるべき思想と考えている。そこはどうしても反発したくなる。
また著者は「読書百篇、意おのずから通ず」を否定する。分らない本は何度読もうと分るものではなく、別の本を読むことによって分るようになると言う。
私は必ずしもそうではないと思う。間髪おかずに繰り返して読んでも効果は少ないが、適度に間隔を置いて再読、再々読する(復習する)ことは、私は本から知識を吸収するには一番いい方法だと考えている。勿論、別の本を読むことによって視野が広がり以前より理解しやすくなるという事は否定しないが。
上記のように数点異議もあるが、全般的に言えばこの著者の主張は、賛同できるものだ。言い換えればほぼ私が日頃考えていた事を明快に代弁してくれたような感じで、思わず首肯した箇所も多かった。
この一度限りの人生を有意義に生きるためにも、日頃のコツコツとした不断なる独学が最も自分を内側から変えていくものであると私は信じる。
そしてそういった人生こそ、人類が古代から積み重ねてきた知識という普遍的な宝を享受し、自分を内側から輝かせ、真の幸福を掴むことを可能にするのではないかと思う。
お薦めの一冊です。


能登をこよなく愛する好奇心旺盛な40代後半のブルーカラーの源さんです。趣味の1つ読書(本の紹介・書評中心)のブログです。年間150冊前後読みます。2005年からこのブログを始め、既に1千冊以上を紹介しています。
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