辞典といっても日経文庫の本なので、集中して読めば1、2日で読める。用語も、文庫に収まる程度をピックアップしているので、重要タームが集められたものと考えていい。
編者の深尾光洋さんは、私にとっては思い出の深い人だ。(30年近く前)某私大の政経学部経済学科に入り、金融を専攻していた私だが、経済や金融の本は数式やグラフで示せばわかりやすいところ、やたらと文章で長く説明し、かえって分り難くなる本が多かった。
関連する簿記なども全く面白くない事もあり、金融論は自分の性格に合わないかなあと少し思い始めた頃、出会った本が深尾光洋さんの本『為替レートと金融市場』だ。行列・数列・微分・積分など数学のオンパレード。深尾氏自身、京大の工学部卒で日銀へ入った方で、当時の金融理論の新鋭として活躍しておられる方だった。
高校時代理系とはいえ、かなり手強く感じたこの本を、私は夢中になって自主的に(学校で使った教材ではない)取り組んだ思い出がある。今思うと深尾氏は日本の金融工学の理論を説いた魁的な人だったような気がする。
私はその人の影響もあり、卒論は金融とは少し離れた、数学を多用し、ゼミの教授もあまり意見を挟めないようなものを提出して卒業している。
ゼミの途中で、金融は面白い面もあるが、どうも金勘定は性格に合わないと思ったのだ。それに教授からケインズ理論を押し付けられるのにも少し抵抗感があり、故意に金融そのものから少し遠ざかったのも理由の1つだ。
確か内容は、多財多部門のレオンチェフ型オープンモデルを使って、ハロッド=ドーマーの成長理論を分析するというものだ。(段ボールに入れてしまってあった卒論(写し)も、会社時代の度重なる引っ越しで、紛失してしまった。よって正確なタイトルは忘れた)。金融学ではないが、同じマクロ経済学ということで先生には大目に見てもらった。
余談が過ぎた。
この本を読んだ契機は、先日採り上げた宿輪純一氏の『通貨経済学入門』である。それほど難しい用語は出ず、結局ほとんど用いなかったのだが、念の為、古本屋で買ってきたこの『金融用語辞典』を脇において読んだ。
その後、この本をそのまま放置するのは勿体ない気がして、読み通した訳だ。私が持っているのは、第2版で2007年2月7日11刷のもの。「ビッグバン、金融監督庁、外為法改正、電子マネーなど、変革期にある金融に関する用語を追加した改訂版。」2011年版があるなら、かなり変わったのかもしれないが、金融部外者の私にはこれで十分である。
これを読んで思うのは、金融用語は好む好まざるにかかわらず現代社会(少なくとも経済関係の)記事の中心になってきたと思う事だ。日経新聞など新聞の経済欄を読むにも、いい参考になる携帯に便利な本ではなかろうか。
この金融辞典は事典といった感じではないが、深尾光洋氏が数学が得意とはいえ、別に数式が沢山出て来て、数学嫌いな方が頭が痛くなるような本ではない。逆にほとんど全く数式はなかったと思う。読んだだけである程度わかる辞書に仕上がっている。
文庫サイズだから、金融を専攻しようか感がている学生などはポケットにしまいこんで、通学の途中に読み、覚えるのも悪くはない。
お薦めの一冊です。
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