昨日に引き続き、この「湯屋守り源三郎捕物控」シリーズで、第四弾である。
キャラクターなどは、昨日の記事にも書いたので今日は殆ど省く。
前段のあらましを幾分書こう。
今回は、冒頭から主人公の源三郎が、夕暮れの篠つく雨の中、覆面をした5人の刺客に襲われる。襲われた時、着流しに羽織をまとった姿で無腰であった。
といっても彼は日本橋南部の湯屋組合傘下の用心棒・湯屋守りとして働いているだけでなく、神道無念流の 免許皆伝の腕前の達人。また柔術の腕前も相当なもの。
相手方には、一人を除いて剣をまともに使えそうな者がいない。それを見て取ると、剣術を大して心得ていないような浪人から刀を抜き取り、4人までを峰打ちなどで倒した。
残る一人と対決している際、近くを巡回中の定町廻りの黒米徹之進が騒ぎに気付いて呼子を吹いたため、暴漢らは逃げ去った。
源三郎が脛を斬りつけた一人だけ、逃げられず捕らえられたが、犯人の手がかりとなる大した収穫は得られなかった。
彼はこの事件の前にも最近何度か誰かに狙われ危険な目に遭っていた。
ある日は、大川端を歩いていたら、塀に立てかけてあった材木が彼の方に倒れてきた。
ある日は、霊岸島の湯屋の釜焚き場に寄ってくれという伝言をもらって行ってみると、火の燃える音がして火事になる寸前。勿論、その湯屋の主人はそんな伝言などしていなかった。
またある日は、毎夜のようにいくおけら長屋近くの十割蕎麦の信濃屋へ行った際、女装したらしき男にあやうく毒殺されそうにもなる。
源三郎は、他人に恨まれるような事はした覚えは無いが、今までの事件で逆恨みする人物がいるかと聞かれれば山ほどいるはずなので、心当たりは無い。
さらにある日、源三郎は湯屋組合に詰所いる昼日中から、どうも誰かに見張られている気配。
それで彼は同じ長屋に住む剣の達人・田所文太夫に使い走りで伝言を届ける。彼が帰る時間帯を教え、途中迎えに来て、助っ人してくれるよう頼んだのだ。
帰り道、予想通り暴漢に襲われた。文太夫が助太刀に現れたお蔭と、またもや黒米の旦那に呼子を吹かれた為、暴漢達は逃げた。が、今回は文太夫の機転で女目明しのおみつを尾行のために呼んであったので、暴漢達の屯(たむろす)す場所が、谷中の謙徳院であることが分る。
源三郎は謙徳院と聞き、以前その寺の僧が霊岸島の湯でのぼせて倒れた際、後で谷中の寺まで送っていった事など思い出す。
理由は分らぬがその寺に何かありそうだと、おみつらに協力してもらい寺に関する聞き込む。そして分ってきたのがその寺で賭場が開かれ、何人かの者が悲惨な目にあっていることや、富くじ興行に関する悪しき噂であった・・…。
たまたまその探索途中、源三郎は谷中で、六助(深川おけら長屋に住む棒手振り)と出くわした。六助はその谷中の茶屋(おかめ茶屋)に惚れた女(おゆき)が出来て半年ほど前から毎日のように通っているのだった。
そこは謙徳院からも四町(約400m)ほどしか離れていない。謙徳院に巣くう怪しげな者達も訪れているようなので、源三郎はおかめ茶屋に協力してもらい、相手方からの情報を引き出そうとするが・…(あらすじはここ迄としておく。纏めるのが下手でまたかなり長くなった(苦笑))
第三弾までは大して目立たなかった六助に、今回はかなりのスポットライトが当る。40歳を過ぎて恋のお相手が出来たり、岡っ引になった気分で張り切ってみたり。
でも巻末では、彼にとっては哀しい結末もあったりして、思わずホロリとさせられる。
他に今回目立つキャラクターとしては、源三郎の好敵手、浪人どもの頭を勤める高岡吟四郎である。最後は 主人公が勝つにしても、好敵手はこのように強くなくては面白くない。
このシリーズでは、剣の相手として毎回のように好敵手が現れるが、ワンパターンという気はしない。
最後の対決では、必ずしも源三郎の腕が上で勝っているのではなく、天佑などもあって勝っている辺りも良い。余りにも天下無双の剣の使い手が主人公では、真実味や面白味が無くなる。
このシリーズの第一弾からずっと、その辺の加減は適度で上手いと思う。オーソドックスな感じではあるが、奇抜な展開よりマシ。
最後にもう一人、今後気になるキャラクターとしては、黒米徹之進に付き添って定町廻りを見習い中の同心・山木浩太郎を挙げたい。栗鼠のごとき可愛い顔をした若者だが、頭脳明晰でしかも剣の腕も立つようである。
この後続くシリーズで、どう活躍するのか楽しみである。
お薦めの一冊です。
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