最近、時々この作家の本を読む。これでおそらく5冊目。
この小説は「湯屋守り源三郎捕物控」シリーズは第三弾になる。それ以前の2冊も勿論読んでいる。
この記事を書いた後、引き続き第四弾を読むつもりでいる。
第二弾を紹介した記事の時も主人公を紹介しているが、一応ここでも紹介しておく。
主人公の空木源三郎こと源さんは、深川おけら長屋に住むが、実は南町奉行・筒見総一郎政則の実弟で、出自を隠して日本橋南部の湯屋 組合傘下の湯屋守りとして用心棒を勤める。
彼の素性を知るのは、南町定町廻り同心の黒米徹之進や日本橋南部の湯屋組合の幹部など一部の者。
源三郎は、たんなる[湯屋守り]ではない。市中の民びとのなかに紛れ込んで、「諸々の悪事をさぐり、暴き出すべし」との密命を受けた、町奉行の個人的な密偵であり探索方であった、という設定。
常連の登場人物としては、深川おけら長屋の住人達。
主人公とお互い意識し合う恋仲に近い関係の女目明しのおみつ、自称戯作者の関亭万馬、三味線を教えるお香、ぼて振りの六助、第2弾から登場して常連となった元下野藤浦藩士の浪人・田所文太夫、おみつの手下で飾職人の健太など。
今回は、その中の関亭万馬が、疫病神のように何度も問題を引起す。
最初の事件。万馬とそっくりな男が、深川入船町の湯屋で覗き見していたのを女客に見咎められ湯をかけられた。
犯人の男は逃げたが、湯屋守りなどが犯人を追っているうちに、水にびしょ濡れで犯人の格好と瓜二つの万馬が捕まり、御用。
万馬が全身水で濡れていたのは、ある店の門前で小僧に誤ってかけられたのだ。たまたま運悪く彼と服装や人相がそっくりな男を追っていた者達に犯人はこいつに違いないと捕まえられたのだ。
源三郎は真犯人を捕まえ、万馬への嫌疑を晴らして彼を無罪にしてやる。覗き見程度の事件なので町奉行所が関与するほどの事件でもないが、この件を契機に彼は兄から奉行所に呼び出される。
用事は表向きには、今まで源三郎らが町中の事件解決に何度か協力したことへの報奨として、おけら長屋の面々を日光参詣の旅へ連れて行けという。
が真の用件は、第二弾の中心事件であった下野藤浦藩の元家老らによる悪事の騒動の決着がどうついたか探索してこいという密命であった。
という訳で源三郎は、おみつ他彼を入れておけら長屋の6人で旅に出かける。
最初の日は千住泊り。椀・木皿・塗り箸などの漆器の卸業を営む大店・千疋屋に泊まる。その店の内儀は、おみつそっくりのお絹という女性であった。
6人は千疋屋の主に酒食を供されたが、その後眠れずにいた万馬は町に繰り出し、飲み屋でまた騒ぎを起こす。
戯作者を称える万馬には講釈師癖があり、名前や町の由来など己が知る知識を人前で話すのが好きなのだ。千住の居酒屋に来ても、旅に出る前入手した千住宿のそういった知識を自慢げに披露して騒ぎを起こしたのだ。
つまり‘千住宿で一番古い店は、千疋屋(山崎家)だ’‘いや柏屋(柏原家)だ’、‘千疋屋には千疋屋の古さを確証する千住という地名のもとになった千手観音が実際にある’だとか‘いやそんなのはデマだ’という言い争い、つまり町で古くからある確執に火をつけてしまったのだ。
双方睨みあう形の場に駆けつけた源三郎は、騒動をおさめるが、この件が後に思わぬ方向へ発展し大きな事件を引起す。また万馬は、源三郎ら一行が藤浦藩経由、日光参詣及び界隈の温泉めぐりの旅の間中、疫病神のような役回りを演じることになる。
還路、一行が川治の百姓家に泊まった時、万馬はなかなか眠れないので夜中闇の中を温泉に行くが、不穏な輩たちの悪の密談を聞いてしまう。断片的に聞き取れた状態なので詳しくはわからないが、どうやら千疋屋の内儀・お絹を誘拐するような話らしい。
その話を万馬から聞いた源三郎らは、千疋屋の内儀・お絹が危ないと、千住へ急ぐが・…。
私としては、この本を一読してかなり楽しめた。
ただもしこのシリーズの第二弾の作品を、最近ではなくかなり昔に読んでいたら、ちょっと困惑したかもしれない。私は者覚えが悪い。1年もしない間に本の内容は殆ど忘れてしまう。このブログも、本好きな方への本の紹介の意味もあるが、実はそんな私の備忘録の意味合いがかなりある。
シリーズものでも、前の本の話を知らなくても(忘れても)、困らずに読める本もあるが、この本は前作がわからないと、‘ちょっと田所文太夫さん、あんたは誰?’‘藤浦藩の騒動って何?’となってしまい、何となく面白くない気分を惹き起こす可能性が高いような気がした。
よってお薦めのシリーズものの時代小説だが、途中を飛ばすことなく、順番に読み進めていってほしいと思う。
それだけ最後に注意し、この本の紹介を終える。
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