この本は、本好きのコミュニティサイト「本が好き!」で頂いた献本である。献本の抽選に応募しようと思ったのは、年老いた両親とも同居しており、医療や看護に結構関心が深いからである。
ホスピタリティ(hospitality)とは、心のこもったおもてなし、歓待、また歓待の精神のことを言う。
この本の簡単な紹介文を読んだ後、タイトルにホスピタリティという言葉が出てくる事から想像して、日野原重明先生が訳したオスラー博士の講演集のような内容の本かと思った。あの講演集の本は、昨年時間をかけてじっくりと読ませてもらった。本当にいい本だった
医師にしろ看護婦にしろ、臨床に臨む態度、精神、心構えがしっかりしていないと医療の信頼度が落ちる。今から1世紀ほど前に亡くなったオスラー氏は臨床の在り方を改善しようと、全米やイギリスなどあちこち講演してまわったのだ。
日野原先生はアメリカ留学した時、向こうの臨床のありように目を瞠ったそうである。そしてそのオスラー氏の本に気付く。
この本もタイトルからして、そのような内容が書いてある思ったのだ。
この本にはオスラー氏の名前は一度も出てこない。著者の念頭にもないかもしれない。が、私の想像は大きくは外れていなかったと思う。ただこちらの本の方はかなりノウハウ的色彩が強い。マナー本といった感じである。
看護のホスピタリティのより深い理解や心構えを身につけるのは、やはりオスラーさんの本を何度か読んだ方がいいかなと思う。
こちらはオスラーさんの本と比較すると、ホスピタリティの入門編ともいえる。
著者は元国際線のスチュワーデスもしていたことのある女性だそうで、そういう意味ではおもてなしやマナーといった接客の心構えやそのための知識は徹底的に叩き込まれてきたようだ。
この本を読んで思ったのだが、この本でいうホスピタリティとマナーとは特別看護だけに当てはまる事でなく、全ての職場、現場で役に立つ本だと思った。
宣伝コピー文には「医療看護の現場で、オフィスで、日常生活のあらゆる場面で、ぬくもりある人間関係を築くためのマナーを紹介」とある。著者自身、看護だけにターゲットを絞るのではなく、他の領域での応用も念頭に置いて書いているようだ。
マナーなどもかなりきめ細かく書いてある。たとえばドアの開け方のきめ細かなマナー、状況に応じた人との距離を十㎝単位で書いたり、お辞儀の角度を何度とか書いたり・・・。そこまでやるべきかなと思うが著者のよう元スチュワーデスなどなら昔は実行してきたのだろう。
また読んでいて常識的と思える事柄も留意事項として色々揚がってくる。
が、折角こういう本を読むのだ。謙虚に耳を傾け再認識、再注意した方がいいかなと思って読んだ。
不注意からの事故・失敗などというものは、常識的と思える注意事項にマンネリ感を覚え、脇が甘くなることから起こりがちなものだ。
驕りなどは、自分を矯しながらでも押さえ、自己研鑽に努めるべきだと戒めたい。
またホスピタリティ、おもてなしの原点は「相手を視野に入れ、自分の懐に招じ入れ、できる限りの歓待をし、しかも見返りを求めないところにあるといえる」とこの本では述べている。
ボランティア的仕事も、自分に少しでも見返りの気持ちがあると、馬鹿をみる事が多い。そういう時はこの本ではないが、自分の心のどこかに「・・・したのに(してあげたのに)」と恩着せがましい心が生じていたと考えた方が良い。
この本の中にも例えとして出てきたが、美しい花が何の見返りもなく凛として咲いているように、ホスピタリティやマナーが当然のごとく振る舞えることこそが美しい、言い換えれば崇高な生き方なのだと思う。
社会の色々な場面でホスピタリティとマナーを活かし(応用し)ていくためのノウハウ的なマナー本、心得書であるが、じっくり読むと結構深い内容もあり、勉強になる本だ。
お薦めの一冊です。
←ランキングに参加しています。