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『アーネスト・サトウ伝』(B・M・アレン著・庄田元男訳・平凡社/東洋文庫)を読了した

アーネスト・サトウ伝 (東洋文庫 (648))

B・M・アレン / 平凡社

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 日本史に詳しくない人は、アーネスト・サトウ(1843~1929)という名を聞くと、日系人?などと思うかもしれないが、日系の血などは入っていない英国人の外交官である。
 それも幕末・明治維新期の日本史、さらには三国干渉後から日露戦争における場面でも大きく日本史に関わった人物である。

 また彼は、私が住む能登・七尾にも、慶応2年(1867)英国軍艦で訪れ、上陸し、七尾で加賀藩に七尾港を開港させる交渉を行い、それが不成功に終わった後、七尾から大坂まで陸地の旅をしたことなどあった(詳しくはサトウの回顧録『一外交官の明治維新』などに載っている)ので、個人的には郷土史的な意味でも非常に関心のある人物だ。
 ただし七尾でのエピソードは、この本では85頁にチラッと七尾の名前が出るだけで、詳しい話は何も書かれていない。

 ところで、この本が書かれた経緯だが、生涯独身で通したアーネスト・サトウが昭和4年(1929)に86歳の長寿で亡くなった後、彼の8歳上の姉の長男(つまりサトウの甥)A・L・アレンは、サトウの唯一の遺言執行人であった。
 
 が既にA・L・アレンは高齢(この本を刊行した時は72歳)なので、身内のバーナード・メリディス・アレン(文学修士・法学修士・またこの本以外にも幾つかの伝記などを著した作家でもあった)に、サトウ伝記の執筆を依頼し、昭和8年(1993)完成した。

 著者のB・M・アレンは、上に描いたように伝記を幾つか著していたが、この本の著作に費やした4年間という短い期間では、膨大なサトウ・ペーパーズ(「サトウ文書」とでも訳せようか)を十分には咀嚼できなかったらしく、また日本の歴史などの事情も把握できなかったらしく、私が読んでいても、何箇所かで明らかな間違いを犯している。

 それだけに、サトウが直に見聞した事件(『一外交官の・・・』に書かれている事件)であり、かつ日本史の中でも重要な事件であるのに、(事の重要さの認識が足りないのか、あるいは敢えて無視したのか)重要事件を簡単にすっ飛ばしてある事項も結構多いので、私としては少し不満な面もあった。

 良かった点も勿論ある。私はアーネスト・サトウに関しては『一外交官の明治維新(上・下)』(アーネスト・サトウ著・岩波文庫)しか読んでいないが、あの本は晩年サトウが回顧し書いたものであり(但し日本に関わる部分である本の半ばは、日本の任務を終えてシャム(現タイ国)の公使をしていた時に書いて、その後、箱に入れ保管していたそうだ)、日本の幕末~明治維新のことしか書かれていないが、この本は、小著とはいえ、いわば親戚が書いた伝記であるので、サトウが亡くなるまで書かれている。

 日本以外(シャム・ウルグアイ・モロッコ・清国・)での外交官としての活躍も、日本にいた時ほど詳しくはないが、書かれており興味深く読んだ。

 アーネスト・サトウが日本にやって来ることになる契機だが、この本では次のような話が載っている。
 彼は、ユニヴァーシティ・カレッジやケンブリッジのトリニティ・カレッジに学び優秀な成績であったが、ある時『エルギン卿の中国・日本使節記』を読み、日本に魅せられ、どんな事をしてもその神秘の国・日本に渡ろうと夢見るようになる。

 さらに後日、大学の構内に貼られていた中国及び日本での通訳生を募集するという掲示案内を見かける。これこそ夢を実現する好機であると、両親を説得し、それに応募し、採用され、日本へ来たという訳だ。

 この伝記は、サトウの身内が書いたので、かなり彼の功績を実際より高く評価している面はあろうかと思うが、その分をたとえ差し引いたとしても、彼が日本の歴史において、幕末から明治にかけての貢献度は、他に抜き出たものがあると思う。

 彼の最初の日本勤務の時期は、日本語に堪能な書記官(短い期間で、日本の書類を訳せるまでの能力を発揮)として公使パークスなどを助けて重宝され、お蔭で色々な現場にも随行し、戦闘などの場面でも臆することなく勇敢に行動している。

 その上、彼は学者肌で日本の政治、社会や歴史なども色々研究し、周囲から認められ地位が向上すると、さらに本国に貴重な報告やアドバイスなども行っている。それが英国に有益に働いたでなく、日本に有難い成果となったりもしている。

 アメリカの初代公使・ハリスの野卑な人柄などと比べると格段の差である。サトウはイギリスの、明治期を代表するジャパノロジストとして、政治・外交だけでなく多方面にわたる彼の研究成果をもとに、多くの貴重な日本の記録を残している。

 日本にとっては、有史以来最大ともいえる存亡の危機の重要な局面だっただけに、このような人物が当時の大国・英国の駐日外交官として赴任してきた事は幸いであったと言わざるを得ない。
 
 彼は、三国干渉後に、日本の全権公使として来日し、その後清国の公使として、本国にロシアの動向などを報告する訳だが、それがどうも日英同盟締結にも影響したようだ。

 このように日本の歴史に大きく関わった人物の本は、日本人の観点からではなく、外国人という第三者の眼で日本史を見ることが出来、非常に貴重だと思う。
 と言っても私も偉そうな事を言えるほど多くは読んでいない。今後も、出来る限り心掛け、こういう本を紹介していきたい。

 多くの日本人に読んでもらいたいお薦めの一冊です。
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by une_genzaburo | 2011-01-07 01:16 | 読書 | Trackback | Comments(2)
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Commented by TERAI at 2011-01-07 11:50 x
アーネスト・サトウ、懐かしい響きの名前です。昭和初期まで長命したのですか。
Commented by しばやん at 2011-01-23 17:53 x
畝源さん、はじめまして。
凄いペースで読んでおられるのに驚いています。能登の歴史を書いたHPも素敵ですね。地元の文化歴史を愛する気持ちが伝わってきます。
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能登をこよなく愛する好奇心旺盛な40代後半のブルーカラーの源さんです。趣味の1つ読書(本の紹介・書評中心)のブログです。年間150冊前後読みます。2005年からこのブログを始め、既に1千冊以上を紹介しています。
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