今夜はどうも眠られないので、子供向けの本でも読みながら明かすことにした。
本は『地獄変 中学生の文学12』(成城国文学会編・ポプラ社)に収められている作品のうち、最初の3作品だ。
児童文学書といっても、外国文学以外は、日本の有名な文学作品をそのまま載せている訳だから、童話などとは違う。語句説明なども多くて、かえっていい。
この本を含めて某人から古い時代に発刊された世界の児童文学などの作品集を大量に譲り受けている。譲った人は、まさか私が読むとは思わなかったかもしれない。でも読んでいない作品が収まった本が沢山あるから勿体無い。これからもそういう本も時々読んでは紹介していくつもりだ。
さて繰り返すと今回読んだ作品は
①『朝食』(スタインベック著・大久保康雄訳)
②『初恋』(島崎藤村)
③『地獄変』(芥川龍之介)
の3作品。
①は非常に短い小説。旅をつづける一人の青年が、綿つみ労働者の家族に朝食を振舞われ、別れていくという、ただそれだけの小さな出来事を描いた作品だ。朝の美しい情景や、素朴な人々の暖かさなどを描いています。
②は有名な詩だから特にコメントはしなくてもいいでしょう。
③はたぶん私が中学生の頃、芥川龍之介の短編集で一度読んだ記憶がある。よって再読のはずだ。
さて話の内容だが、堀川の殿に仕える良秀という絵師がいた。彼は凄い力量の絵師だが、驕り高ぶり他人からは嫌われていた。自分で見たものしか画けぬ絵師でもあった。この絵師には器量のいい娘も一人おり、その娘も堀川の殿の女官の一人として仕えていた。
ある日、彼は堀川の殿から地獄変の絵を描くよう沙汰される。その日から彼は弟子に危険な目にあわせたりしてその様子をスケッチするなど始めた。がそのうち元気がなくなってきた。ある日大殿のもとに来て言うには、大方描き得たが、今ひとつ描けないものがある。
車の中の上臈が、猛火の中に黒髪を乱しながら悶え苦しむ様を見たいという。しかも自分は見たものしか描けないが、それは未だに見たことが無いので描けない。だから大殿にどうにかそれを実現してほしいと言うのだ。そして数日後、大殿はそれを約束通り実現するのだが、車の中にいたのは・・・・。
悪魔に魅入られた絵師、良秀。ちょっとだが、メフィストフェレスに魂を売った『ファウスト』を想起させる。
芸術の完成度を追求する優れた芸術家の常識を超えた価値観の威厳さとそれから起こる悲劇とでも言おうか。
この作品に出てくるこの話は、『宇治拾遺物語』と『古今著聞集』のどちらにも出てくる話で、完全なオリジナルではない。
芥川の他の作品『芋粥』『蜘蛛の糸』『羅生門』『杜子春』などと同様古典に取材した話だ。
話の構成の仕方などは、オーヘンリーのようなストーリーテラー的巧みさを持った天才的な上手さがあると思う。芥川の作品は、久し(おそらく30年以上)ぶりに読んだが流石である。
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