あと半月ほどでまた今年度のノーベル賞受賞者が報道される季節となった。昨年は10月7日、物理学賞で南部陽一郎氏、益川敏英氏、小林誠氏と3人が受賞の報道が入り、その翌日にはノーベル化学賞で下村脩氏の受賞の報道が入り、日本人4名の受賞(ただし南部陽一郎氏はアメリカ国籍を取得しているので実際はアメリカ人)いう初めての事態で、日本中湧き上がった。
この発表があった当時は、サブ・プライムローン問題と、それに端を発したリーマン・ショックの影響を受けて、(当初は日本は一番影響は少ないと言われたが)日本経済は急激に落ち込み、世相が非常に暗くなっていた時期だった。それだけにマスコミはこの明るいニュースに飛びつき、一月近くお祭り騒ぎのようにこのニュースが絶えなかったのを覚えている。
今年も誰か日本人が受賞するのだろうか。連年の受賞はなかなか難しいと思うが・…
この本は、受賞者4人のうち、3人が名古屋ゆかりということで、沸きかえった名古屋の様子などを伝えている。益川氏と小林氏の2人が地元名古屋出身で、大学も名古屋大学卒業、また下村氏も名古屋大学にいたことがあるので、3人を中心に取材し紹介している(物理学賞の方は、南部氏も関わるので、南部氏の紹介も少し出てくる)。
地元からノーベル賞受賞者が出たぞー、とお祭り騒ぎしているだけに、本来顕彰すべきその業績自体の紹介は詳しくない。この本を読んで、彼らの業績の一端を知ろうと思わない方がいい。記者自身、自分の書いていることを多少なりとも理解して書いているのか非常に疑問である。とにかく科学的好奇心をある程度満たす本などと期待せぬ方がいい。
彼らの業績を少し詳しく知りたいなら、業績についてせめて全体の1/3なり1/4を纏まって割いている本を読んだ方がいい。この本は、各氏の業績内容については、その意味ではせいぜい数頁しか書かれていない(何箇所かで書かれているが内容は重複している)。こんな内容で、ノーベル賞の業績が一端でも分るようなら、世の中楽でしょうがない。
内容は、ノーベル賞受賞の一報の後、あわただしく取材した、生い立ちや人柄、受賞後の喜びに沸く名古屋などの様子が中心だ。
内容はそのようなものだと思えば、落胆することもなかろう。話のネタ程度の知識は得られると思う。
(参考)
Amazon.co.jpの本の紹介に出ていた文章を参考に下に転記しておく。
「名古屋が生んだノーベル賞科学者・小林誠、益川敏英両氏の生い立ちをたどった中日新聞朝刊社会面記事「名古屋ノーベル賞物語」(2008年12月、計21回連載)を出版化。両氏の生い立ち、少年時代、名大での学生生活、二人の出会いなどを克明に描いた。
そのほかに受賞関連記事、名大での記念講演録を収録。歴代の日本人ノーベル賞受賞者も顔写真付きで紹介。 」
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