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『平蔵の首』(逢坂剛著・文藝春秋)を読了した

平蔵の首

逢坂 剛 / 文藝春秋

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<百字紹介文>
 逢坂剛氏が、あの「鬼平」として有名な長谷川平蔵(江戸時代の火付盗賊改方長官)を描いた小説だ。逢坂氏は、同じく火盗改方長官となった事もある近藤重蔵も小説化しているが、平蔵には特別の思い入れもあるようだ。

<詳しい紹介文>
 タイトルにある平蔵とは鬼平こと長谷川平蔵のことである。
 長谷川平蔵といえば彼を主人公にした池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』が、以前テレビドラマ化されたり、漫画化され広く人気を集めたから、20代以上くらいの人はほぼ皆御存じであろう。

 私も今から30年程前、テレビドラマ(フジテレビ系・2代目中村吉右衛門主役)で興味をもったのが始まりで、池波正太郎の『鬼平犯科帳』も二十数巻全部読破した(中には2回以上読んだ話もある)。

 池波正太郎氏は私の大好きな作家の一人である。
 逢坂剛氏も『重蔵始末』シリーズをはじめとしてこのブログでも幾つかの作品を紹介してきたが、好きな作品の一人である。

 では逢坂氏がなぜ長谷川平蔵を小説化したのか。それに関してはこの本の帯紙にコメントしてある。それによると、何と逢坂氏の父親で挿絵画家である中一弥氏が、『鬼平犯科帳』を『オール読物』で連載中に、挿絵を描いていたのだという。

 そんな関係から逢坂氏も、長年にわたり『鬼平犯科帳』の読者であり続け、今度は自ら「長谷川平蔵」を主人公に書くことにしたらしい。

 平蔵を描くと言っても、逢坂氏も流行作家であるだけに、池波氏とは違った平蔵像を描きたいはずだ。 
よって長谷川平蔵以外は、登場人物は池波氏の作品と勿論違う。元盗人などを手下として使うのは同じだが、手下の者の名も、与力や同心の名も違う。

 またこの逢坂氏の平蔵の特徴としては、奉行所以外ではほとんど素顔を明かさないということであろう。平蔵が見回りにでる時は、一人か供の者1人つける程度で巡回するが、その際の格好は、ほとんど深編笠を被ったまま、捕物に出る時も、革頭巾をかぶったままで見えるのは目の穴フタツだけ。
その辺は、池波作品もあまり異ならないが、以下が違う。

 火付盗賊改め方に捕えられた犯罪者らの裁きの仕方だ。軽微な者の場合には配下の者たちに任せるが、彼が直接吟味に当たる事件に関しては、彼の素顔を見た者は(鬼平が手下として使えそうだとして生かした者以外は)決して娑婆に戻る事はないという。つまり彼が直接裁く事件は、皆死罪か獄門になるのだ。

 あと一つ大きく違うのは、平蔵が実際の採りもので影武者というか、別の者に平蔵を演じさせることがこの小説では非常に多いのだ。
 盗人らが「とうとう平蔵の素顔を見たぞ!」と思っても、実際は配下の与力同心らが平蔵に変装している場面がほとんどだ。

 その設定に拘り過ぎて、展開が少し不自然の気がした。つまり、泥棒を捕まえるのに、配下の者に平蔵役をさせ、自分は他の者に変装するなど芝居じみた事をほぼ毎回するのだが、失敗の可能性もあるのに、そういう事をわざわざするかな??・・・・やっぱり不自然だ!という感じ。

 その辺を気にしなければ、逢坂作品と知らずに読めば、池波正太郎氏の鬼平と間違えるかもしれないぐらいの出来だ。逆にいうと、上記の特徴以外、あまり新鮮な平蔵像はなかったように思う。
 まあこの辺は、読者の感じ方次第かもしれない。
 逢坂ファンでありながら、今回は少し酷な批評であったかもしれない。
 あしからず!
収録作品は、「平蔵の顔」、「平蔵の首」、「お役者菊松」、「繭玉おりん」、「風雷小僧」、「野火止」の6作品。

 この平蔵のシリーズは、これ以降も続くのであろうか?
 もし続くのであれば、今後を期待し次号以降も読んでみたいと思う。 
 
 (この記事は、七尾市田鶴浜図書館から借りてきた同書をもとに書いています)
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-26 14:27 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『言語小説集』(井上ひさし著・新潮社)を読了した

言語小説集

井上 ひさし / 新潮社

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<百字紹介文>
 言語に関わる事柄をテーマの中心とした短編小説集。文字など記号を擬人化した冒頭作「括弧の恋」をはじめ、日本語の可能性を追求しお笑いを創造し続けた井上ひさし氏らしい作品のオンパレード。これぞ氏の真骨頂だ。

<詳しい紹介文>
 タイトルの意味を考えるに、何かしら言語に関わることを小説のテーマの中心にした小説集とでもいえようか。

 各話の簡単なあらすじを書き、紹介にかえる。
 第1話「括弧の恋」
 ある広告代理店社員のワープロが、結構使いこんだためか最近反応が遅くなってきた。その社員は気付くはずもないのだが、実はそのワープロの中の記号たちが原因であった。
例えば「という始め鉤括弧に、」という終り鉤括弧が恋をした。「 」の中に文字を打てば打つほど二人の間は離れていく。それをためらったのだ・・・・。

 あるいは記号の●と■が、!という感嘆符に「半端野郎」と横柄なものいいをして、両者の間で口喧嘩になる。果ては●や■と、普段から彼らに反発を示す記号らが、武器(武器も全記号)をとっての大争い・・・
 要は言語記号など記号らに人格を持たせ、擬人的に書いた傑作小説だ。

 
 第2話「極刑」
 ある劇団に所属する加代は、インドのムガール帝国の第3代皇帝アクバルが行ったといわれる言語実験を扱った題材の芝居『極刑』で、中心的な役割の3人の1人の役が当たった。言語はいかにして成立するかを赤ん坊を使って実験するという話だが、その中心的な3人とは、乳母と赤ん坊の監視役A、同じく監視役B。

 3人の台詞だが、乳母の台詞は文法的にも正しいもの。Aの台詞は文法的には正しいが意味を成さないもの。Bの台詞は、、文法的にも意味的にも正しくない台詞となっていた。
 加代は、監視役Aの役であった。台詞を練習するうちに、加代の体に異変が起こる。この覚えるに辛い台詞が原因で、無意識に「役を下りたいという意識」を、下りることは役者廃業を意味すると認識が、自己保身のために意識に気付かないふりをさせていたのだ。が我慢すればするほど体に変調をきたしていく・・・・。

 第3話「耳鳴り」
 昔若い頃にテレビの人形劇の台本を書いて生計を立てていた男のもとに、ある日一通の手紙が届いた。それは彼が昔書いたその人形劇「びっくりびっくり島」の主題歌の冒頭の音が原因で、その男がひどい耳鳴症にかかってしまったという内容だった。
 
 その作家も耳鳴症で他人事でないだけによく分かり、最初のうちは思わず笑ってしまった。詳細な症状を恨みつらみ訴える内容に興味深く読みつづけていたが、終りが近くになるにつれ・・・・。

 第4話「言い損い」
 ある男がため息を何度もつきつつ電車に乗っていた。彼は興奮すると言い損いをするという病気があった。38歳だが、独身。母親はある女子大の教師だった。
 その日は、母親の教え子と、イタリア料理店でお見合いデートであった。彼も彼女が美人なだけに気合いが入ったが、それだけに興奮し、いつもの癖が出て言い損ないを連発。そのため彼女に途中で飽きられ、途中で席を立たれてしまった・・・・。

 第5弾「五十年ぶり」
 ある方言学者が、喜寿を弟子らから祝福され、とある高級料亭で飲んでいた。ちょっと小を足すため雪隠に行った。彼は、そこでやはり泥酔しながら小便をしていた二人連れの方言を聞き、一人は富山県魚津出身の男、もう一人は大分県大分市の出身と判別した。
しかもそのうち、大分市出身の男の方は、その黒子などで古い記憶が蘇り、昔彼を冤罪で痛めつけた特高の男と気付く。これを意趣返しのいい機会と考えた彼は・・・

 第6話「見るな」
 三陸の船越という小さな集落は、方言の中に馬来(マレー)語に似た言葉が混じっていた。そのためおそらくはジャワ島やインドネシア島から船でここに渡って来た人が住みつき、その言葉が現在まで残ったと言われていた。
ある小説家も母からその事を昔聞いた事があったが、信じていなかった。が実際その土地を訪れて、二人の老人の会話を聞き、その話を信じるようになり・・・。

 第7話「言語生涯」
 ある有力鉄道会社の社員が、本社転勤を間近に控えたある日、突然舌がもつれて「大便ながらくお待たせしました」と放送してしまった。それをきっかけに、ふざけた冗談のような言葉が自然と出てくる症状をきたした。栄転はとりやめとなり・・・

 この小説ではその症状の説明を、高柳源太郎という言語病理学者が、ある病院の附属の看護学校で行った講演の速記録という形で載せている。

 以上言語をテーマにした短編小説7話が収録されている。
 日本語を自在に操るかのようにその可能性を追い求め、日本語で笑いを創り続けたいかにも井上ひさし氏らしい小説集である。冒頭の言語などの記号を擬人化した作品など、著者らしい抱腹絶倒の典型で、彼の真骨頂を示した作品といえるであろう。
お薦めの一冊です。  
 (この記事は、七尾市田鶴浜図書館から借りてきた同書をもとに書いています)

  

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# by une_genzaburo | 2012-05-25 09:44 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『荀彧(じゅんいく)』(風野真知雄著・PHP文庫)を読了した

荀いく(じゅんいく) 曹操の覇業を支えた天才軍師 (PHP文庫)

風野 真知雄 / PHP研究所

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<百字紹介文>
 荀彧。普通は三国志の漢の献帝に仕え、漢帝国の再興を目指した男と紹介されるこの人物を、この著者・風野真知雄氏は、曹操の覇業を支えた天才軍師と捉え直し書いた小説である。ただイマイチ貢献度が分かり難く残念!

<詳しい紹介文>
 前の記事まで10回にわたり風野真知雄氏の『妻は、くの一』シリーズを採り上げたが、この中国歴史小説も風野氏の作品だ。風野氏は、この作品以外にも中国歴史ものは他にも2,3書いているようだ。

この本の副題は「曹操の覇業を支えた天才軍師」である。
 曹操といえば、三国志の中に出てくる一方の雄。魏の礎を築いた男である(ただし曹操の時代には、漢の献帝(後漢最後の皇帝)からの禅譲は受けていない。魏の建国は曹丕の時代である)。彼は詩なども上手く、当時の知識人の中でもトップレベルだ。

 三国志演義は、後に蜀を建国した劉備らの勢力(関羽、張飛、諸葛孔明など)の活躍を贔屓的に扱うから、曹操はどちらかといえば悪役だが、後の三国(魏・呉・蜀)の中では、魏は何と言っても一番の強国である。
 その最強国になったのは、この小説の中で出てくるライバルの、袁紹、袁術などを破ってからである。

 私は、三国志ものは最近はそれほどでもないが、以前はかなりはまっていた。吉川英治、陳舜臣、徳間書店のもの(立間祥介訳)、岩波文庫(小川環樹・金田純一郎訳)など、冊数にすればおそらく50冊以上(関連ものを含めれば100冊以上)は読んでいると思う。

 本屋でこの本を見つけ、荀彧を採り上げたのは以外に思った。曹操を主役にした小説はかなり多く、私もそういった作品を幾つか読んだが、荀彧が主役のものは初めてだ。
 本屋でタイトルを見て、荀彧の事績って何だったけな??と考えてしまった。三国志ファンのつもりだったが、ほとんど思いだせなかったのが正直なところだ。

 この小説の中で少し出てきた程昱や孔融、司馬懿(司馬仲達)などはエピソードまで色々覚えているが、荀彧の名前は記憶にあっても、その事績がさっぱり思いだせないのだ。 
 それだけに逆に興味を惹きつけられ読んでみたのだ。

 冒頭近くから「あとがき」の内容を引用するのも何だが、著者は、荀彧の他の本での解釈のされかたは普通、漢の再興を目指した男となっていると述べている。著者も書きだしの頃はそのように思っていたらしいが、書き進めるうちに疑問をもって「曹操の覇業を支えた天才軍師」として荀彧を描くことになったようだ。

 三国志の内容を事細かに知るファンにとっては、三国志の関係人物をピックアップしたにしても、荀彧が関わったはずの場面でも端折った箇所が多く、少し物足りなく思えた。
 官渡の戦いや、赤壁の戦いをもっと詳しく書けというのではない。

 風野氏が、漢の再興を目指した男という一般的な解釈から脱却し、世の中の早期の平和を目指し、それゆえに漢の官人でありながら曹操の覇業に軍師のように働き力を貸した男という見方を立てたのは、それなりに評価できる。

 小説の中で荀彧が曹操に勧めた献策は(というか言葉は)、○○への戦いを勧めたとか、戦いの最中、兵士の志気が緩んできて厭戦気味になってきたのを、もっと我慢しろといった程度の内容が多かった。勝利に繋がるような具体的な献策のようなものも少なく、イマイチ荀彧の事績の重要さが分からなかった。

 今までと変わった視点で描くなら、例えば陳舜臣さんが、浮屠の教え(仏教徒)を信仰する者たちの視点を取り入れた三国志を描いたように、もっと今までにない何か、新鮮さが欲しかった。

 私が昔、三国志を読んだ時の印象では、曹操のもとには参謀が多く、「王佐の才」を謳われた人物も多かったように思う。荀彧を採り上げたからには、他の参謀との事績の違いが明確に分かる小説であって欲しかったと思う。

 今回は色々批判的な事を書いたが、それなりに楽しめる歴史小説である。
 ちょっと手酷い紹介だったかもしれない。三国志ファンの方は、私の記事を参考にして最初から読むのを放棄するのではなく、自分で読んでみて自分なりに評価して欲しい。

  

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# by une_genzaburo | 2012-05-23 11:30 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『濤の彼方 妻は、くの一⑩』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

濤の彼方 妻は、くノ一 10 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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<百字紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第10弾(最終巻)。静山は、日本の開国を海外から働きかけてもらう為に彦馬を船長とした船を長崎から愈々出航させる。江戸~長崎の途路で果たして織江は無事彦馬と合流できるのか・・・

<詳しい紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第10弾(最終巻)である。
 粗筋を書き紹介に代えたい。

 彦馬が松浦静山らと一緒に乗って江戸から出航した幽霊船は、途中、浦賀に寄ったが、結局織江はそこでは乗船できなかった。彦馬は沖から彼女が敵対者と闘う姿を、小さな豆粒大の大きさで、遠くから認めただけだった。(前巻)

 船は途中、伊豆下田にも立ち寄り、静山と彦馬は上陸した。その際、織江捕縛のために現れた鳥居耀蔵と彼が率いた上様(将軍)の四天王と遭遇。
 彼らに織江を渡せと迫られ、一触即発の事態になるが、そこにタイミング良く老婆の着物が風で飛ばされ、宙を舞い静山と四天王の間に落ちた。老婆が彼らの間に走り入り、両者は気勢を削がれ、その場は難を回避する。

 宿に戻った四天王は、静山がいるとは聞いていないと鳥居耀蔵に迫る。また鳥居自身が静山は幽霊船を偽造して抜け荷を行っている疑いがあるがそれは大した事ではないと言い、織江を追うのは上様の命令だから重要と、道理に合わぬ事を言うのに対して、四天王らは鳥居が上様をけしかけて織江を追わせているのではと疑いだす。そして鳥居に上様からお墨つきを貰って来いと迫る。
 
 ならばと鳥居は江戸に戻り、下田での事件を将軍家斉に報告しお墨付きを貰おうとするが、家斉は心変わりする。織江など‘うっちゃとけ’と言い、鳥居に対しては自分の仕事に戻れという。鳥居は四天王らへの連絡もせず、彼自身織江を追うのはやめて事態を放置する。

 お庭番の川村真一郎は、陰密行動を通して弱みを握った商人を脅しつけ、静山の幽霊船を尾行する船や人手をその商人に出させた。その船は真っ黒に塗り、夜相手からは見つけにくい船にした。川村は、その船で幽霊船の後を密かに尾行し、織江が現れるのを見張るのだった。
 
 四国からは、雙星雁二郎が彦馬らの船に乗り込んできた。彼らしく幽霊騒ぎなどの悪戯を起こしての登場だ。シーボルトに癌で余命3ヶ月といわれたがそれは芝居だった。大きな石を飲み込み、それを触らせシコリのように見せかけたのだ。

 日向の油津港へ上陸する際、静山と彦馬が乗った小船が、鯨の浮上で背に乗り難破し、静山が右足を骨折するという事故などもあったが、何とか無事に長崎へ到着。

 海外に出て行く南蛮船は長崎に近づけられぬので、幽霊船で荷物を積んで沖に出て、沖で南蛮船への積荷の詰替えを行う予定。その南蛮船の船長は彦馬である。

 積替え当日(七夕の日)の夜、幽霊船は長崎港を出て行く。もうこのチャンスしか、織江が彦馬の南蛮船に乗る機会は残されていない。
 果たして織江は・…

 前に言ったように、この小説の最後はハッピーエンドだ。
 織江と彦馬は再会し、海外へ航海することになる訳だ。
 その前に川村真一郎や四天王との激闘も勿論ある。
 でも意外な展開もあって、…それが功を奏してハッピーエンドに漕ぎ付けたのかな、という感じだった。
 (ここまで書いたらほとんどネタバレだな(苦笑))

 またこの小説は、50年後の二人の話も紹介している(勿論フィクションだが)。
 日本に50年ぶりに帰国し、久しぶりの江戸見学を楽しみとする二人が最後に描かれている。私は、彼らがその後の江戸、つまり東京を見て驚く姿を想像し、その驚きを喜びとしたのではなかろうかとも思った。

 ところで、この小説の中心人物の名「彦馬」と「織江」は勿論、天の川の織星彦星伝説から採った名であろう。 が私は小説を読んでいる間、実はずっと、昔読んだ五木寛之の『青春の門』に出てくる織江(主人公信介の幼馴染)と、幕末の写真家・上野彦馬(実在)のイメージが頭を離れなかった。

 『青春の門』の牧織江と、くの一の織江とはかなりイメージが違うかもしれないが、主人公へのひたむきな思いが似ているところがあると思ったのだ。
 また雙星彦馬は天文学が得意というのに対して、上野彦馬は長崎在住の幕末を代表する写真家である、両者とも当時の特殊技能者という点で似ており、連想してしまったのだ。
 上野彦馬も雙星彦馬も牧織江も九州人ということも影響したかもしれない。
 
もしかしたら作家もそうだったのでは、と思ったりしたが、作者風野真知雄は何もその辺のことは書いていない。恐らく私の穿ちすぎであろうが、受けた印象を率直に述べてみた。

面白さに惹き込まれ一気に10巻読んだ感じだ。関連図書を調べると、この小説の姉妹編に松浦静山の娘・静湖を主人公とした『姫は、三十一』シリーズもあり、H24年5月現在に既に2巻出ているようだ。

この小説でも松浦静湖は数度出てきたが、賢く&勝気&お転婆etcな感じで、なかなかいいキャラクターだったと思う。そちらの小説も興味が湧く。
機会があれば読んで紹介したいと思う。

 とにかく面白い小説でした。時代小説ファン、忍者小説ファン、謎解き事件簿的な小説ファン・…お薦めの一冊です。
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-19 23:14 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『国境の南 妻は、くの一⑨』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

国境の南 妻は、くノ一 9 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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<百字紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第9弾。開国の夢に向けて本格始動した静山。彦馬にその活動の為の船の船長になれと命令し寺子屋を辞めさせ船に乗せる。織江は彼と合流する為浦賀を目指すが、そこには数多の追手も・・・ 

<詳しい紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第9弾である。
  
 国を開く為の方策として、幽霊船を使った活動を始動した松浦静山は、航海術にすぐれた雙星彦馬(主人公)に船長になれと命令。それにより彦馬は1年半以上にわたって勤めてきた法深寺での寺子屋の師匠役をやめることになる。

 静山が用意した幽霊船にのって長崎まで行き、そこからさらに南蛮船(彦馬が船長)に乗って、ヨーロッパ各国に渡り、日本との交易に乗り出すよう促すよう活動してこいというのだ。

 前巻で雙星雁二郎が、長崎へ静山の命令で行ったのも、海外の港々での扱いがよくなるように、シーボルトを通して秘かにオランダ国王の親書をもらうためであった。

 雁二郎だが、(出島に忍びで秘かに出入りして)実はシーボルトと以前から交友があった。それで今回の任務となった訳だが、シーボルトからなかなかいい返事を貰えないでいた。
 そのうち体調を崩して、シーボルトに診てもらうが、その診立てでは癌だという。果たして雁二郎の今後は?

 また織江だが、今までに抜け忍の追手として送られた宵闇順平と呪術師寒三郎を何とか倒し、さて今度は誰が刺客かなと考えていたところ。そこへ彼女の幼馴染お蝶が彼女に接触してきた。

 織江は2度ばかりお蝶と両国橋の上で待ち合わせて会った。
 2度目にお蝶に対してズバリ「刺客なんでしょ?」と聞くが、お蝶は違うという。
 自分は織江の説得役を言われた、川村真一郎は織江に戻って来てもらい妻にするつもりであり、彼女とお蝶ら若手を中心にお庭番を立て直すつもりという。

 江戸を立ち去る用意を終えた彦馬は、住んでいた長屋の部屋に「わたしは長崎に向かう。逢いたい」と書き置きし、幽霊船に乗り出船する。

 静山は船上で、織江が自分と雅江との間に生まれた娘であることを彦馬に教える。驚愕する彼に、何とかして織江と一緒になって追及の及ばない海外へ連れて行けという。彦馬も出来ればそうしたいが、果たして上手く連れて行けるかどうか・・・。

 ところで鳥居耀蔵は川村が織江に執着していることを知る。それによって彼も織江に興味を持つ。さらにはライバル心を燃やして織江を自分のものにしようとする。
 鳥居が考えた策は、上様の虎の威を借りて、織江を捕えようというもの。上様を抱き込み、四天王という上様の護衛掛を借りる許可を得た耀蔵。

 静山の幽霊船は浦賀に立ち寄るとの情報を得た鳥居耀蔵と四天王、川村真一郎、そして織江が浦賀に・・・・
 勿論、巻末は今回も激闘場面である。

 これ以上書くと、ネタばれなので(もうかなりネタばれかな(笑い))、粗筋はこの辺でやめておく。

 巻の中程から江戸を離れる準備で忙しくなる彦馬だが、今回もそんな忙しさの合間を縫て、奇異な出来事の謎の解決を幾つかしている。

 最後に参考に目次を載せておおこう。
 序 こころの術
 第1話 なんども食う女
 第2話 空飛ぶ男
 第3話 貴い彫り物
 第4話 屋根の上のかかし
 第5話 満月は凶

 最終巻の第10弾も、近々ここで紹介するつもりです。
 乞うご期待!
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-19 08:12 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『胸の振り子 妻は、くの一⑧』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

胸の振子 妻は、くノ一 8 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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<百字紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第8弾。静山がいよいよ開国に向けての工作・幽霊船貿易を始動する。抜け忍した織江に放たれた今度の相手はお庭番の凄腕くの一の浜路である。彦馬は巷の事件を調査しながらも織江を探す。

<詳しい紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第8弾である。
 抜け忍した織江に放たれた公儀お庭番の今回の忍者は、くの一の浜路(はまじ)である。
 
 浜路は、お庭番のくの一の中でも凄腕で、織江の母・(故)雅江と一番の腕前を競った仲であった。ただ雅江が早くに天守閣の雅江と名を売ったのに嫉妬しており、いつかは決着を付けたいと思っていたが、雅江が先に死んだためそれを果たせずにいた。

 そんな浜路だが、織江が子どもの頃、母雅江がどこかに潜入して長期留守にしているような時には、「浜路おばちゃん」と呼んで、時々世話にもなった女性だった。

 その浜路は最近まで中国の長州藩で隠密任務に就いていたが、川村真一郎に呼び戻され、織江を殺さないで捕縛するよう命令された(川村は織江に惹かれていたので、松浦静山との戦いが終われば織江を妻にするつもりでいた)。

 今までに抜け忍の織江のために差し向けられた宵闇順平と呪術師寒三郎の二人を、雙星雁二郎(彦馬の養子・彦馬は知らぬが実は平戸藩きっての忍者)にも助けられ、織江は何とか倒すことが出来た。しかし今度は浜路の得意技が何であるかもよくわからない。
 浜路は、長州では産婆などをしながら地元に溶け込み、役目を果たしていたようだ。

 その浜路が江戸へ出てきて居酒屋「浜路」という店を十一月の末頃に神田明神のすぐ近くで始めた。元織江の夫・彦馬の存在は、もうお庭番の方で把握していた。宵闇順平と呪術師寒三郎が殺されたのも、織江が神田界隈によく出没するのも彦馬の住まいがあるからだと。

 彦馬は何もしらずに、その「浜路」へ飲みに行くようになった。最初は南町奉行所の定町廻り同心の原田朔之助が見つけ、その後彼が、彦馬や西海屋千右衛門も誘って行くようになったのだ。その店には何と鳥居耀蔵も浜路を気に入り通っていた。さらには川村真一郎も鳥居に誘われ訪れたこともある。
 後半には何とその店に松浦静山まで彦馬に誘われ訪れる。

 彦馬の周囲に注意を払っていた織江は、ある日野菜売りに化けて、その店を訪れ、その店の正体を知る。・…

 ところで松浦静山は、日本を開くための仕掛けの取っ掛かりとして、幽霊船貿易の始動を開始していた。そんなある日、三十数年前(静山にまだ海国の野心もなかった頃)、幕府をからかうつもりで静山が造らせ漂流させた幽霊船が偶然江戸湾に入ってきた。・…

 今回は、序「やすらぐ酒場と、謎多き海」、第1話「おきざり」、第2話「銭へびさま」、第3話「壁の紐」、第4話「すけすけ」、第5話「年越しのそばうどん」
 彦馬が謎説く巷の事件簿の方も、今回も十分楽しめる内容となっています。
 巻末の織江と浜路の激闘には、今回雙星雁二郎は助っ人では現れない。静山の命令を受けて、シーボルトとの接触に当るために帰国したのだ。
 織江はそのため浜路との闘いで、相手の意外な技で窮地に陥るが、今度もまた予期せぬ助っ人が現れる、いや「助っ人」でなく「助勢」とだけ書いた方がいいかな?…

 クライマックスに向けて着々と準備されているような感じだ。
 残り2巻、今度は誰が織江と激闘することになるのか。お庭番の凄腕忍者も数を減らして残りは、織江の友達・お蝶と、下忍らから若頭領と呼ばれる川村真一郎は二人となった。おそらくこの二人が、残り2巻で登場し闘うものと思われる。
 最後はハッピーエンドであろうが、どのような展開でそこに至るか今から楽しみである。

 第9弾も近々紹介する予定。
 乞うご期待!
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-17 21:19 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『美姫の夢 妻は、くの一⑦』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

美姫の夢 妻は、くノ一 7 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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<百字紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第7弾。今回織江を追う御庭番は呪術師寒三郎という忍びである。宵闇順平と匹敵する御庭蕃トップクラスの忍びだ。呪術を得意技として忍びに用い、探索活動の他に時には暗殺も行うという。

<詳しい紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第7弾である。
 前巻巻末で織江は、彼女をお庭番の抜け忍、裏切り者として追う宵闇順平と戦って絶体絶命の窮地に陥るが、思いがけぬ助っ人・雙星雁二郎(彦馬の養子)によって助けられる。逆に宵闇順平は絶命する。

 実は雙星彦馬(主人公)は知らないが、年齢不詳の雁ニ郎は、平戸藩の忍びを秘かに司る家の出であり、その中の一番の力量の者であった。彦馬は、とんでもない幇間芸にはげむ雁ニ郎しかしらないが、前藩主の松浦静山はその裏面をも勿論知っており雁ニ郎を身近に置いているのであった。

 この第7弾では、殺された宵闇順平の後を受け、薩摩で隠密任務をしていた呪術師寒三郎が織江を捜索することになる。順平が生きていた時に既に呼び寄せる手配をしたのだが、宵闇順平と織江が戦う前に、間に合わなかったのだ。
 寒三郎は、忍びであるが呪術を得意とし、呪術を使って隠密捜査や時には(幕府側にとって)危険な人物を抹殺したりする凄腕の忍びであった。腕前はお庭番の中で順平ととともにトップクラス。

 また今回は、新たに静山の娘が登場する。織江も彼女の母・雅江と静山の間に生まれた女であるから、そういう意味では異母姉妹である。
 その静山の娘・静湖に彦馬が気に入られてしまうのだ。静湖はそのうち彦馬に惹かれて恋心も抱くようになる。

 織江は、彦馬の様子を見たくて変装して妻恋坂を歩いていた時、あやしげな男が落としていった奇妙な形のものを拾ってしまう。それは寒三郎が、静山のところにあった勾玉で死んだ順平が、生前静山の所に忍び込んだ時失敬してきたものだ。それを寒三郎が呪術の道具として利用したのだ。

 そのあと織江は、彦馬が静湖と楽しく語らいながら歩くところをも偶然見てしまう。
その後、彦馬の長屋に行った時、長屋の女たちが彦馬がどこかのお嬢さんと結婚するようだといいかげんな噂を立てているのも聞いてしまう。

 これも寒三郎の呪術の影響だろうか? 織江の心は次第に揺れていく。ふんぎりを付ける為に、彦馬に会い別れを告げようと思うがそれも心が定まらぬ・・・・

 織江を中心に粗筋を述べると、このような展開で話は進む。
 勿論この第7弾でも主人公の彦馬は、原田朔之助(以前、確か臨時町廻り同心だったはずが、いつのまにか定町廻り同心になっている)らに頼まれて巷の事件を調査する話が幾つか出てくる。

 収録話のタイトルを紹介すると、第1話「夢の玉」、第2話「酔狂大名」、第3話「四匹の仔犬」、第4話「赤いイチョウ」、第5話「鳴かぬなら」。

 この第7弾でも、巻末に織江が彦馬の家の屋根の上で寒三郎と闘争するが・・・・
 その結果は、読んでのお楽しみ!として、ここでは書かない

 いつもより幾分短い紹介文だが、今晩はこれから色々用事があるのでこの辺でやめる。
 第8弾も近々紹介したい、乞うご期待!
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-16 18:56 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『宵闇迫れば 妻は、くの一⑥』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

宵闇迫れば 妻は、くノ一 6 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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<百字紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第6弾。今回はお庭蕃の凄腕忍者・宵闇順平が、潜入先の九州から川村真一郎により呼び戻され、抜け忍となり失踪した織江の捜索のために投入される。巻末には二人の戦いもあり見所である。

<詳しい紹介文>
『妻は、くの一』シリーズの第6弾である。
 第5弾は巻末で、忍者同士の派手な戦い(ただし松浦静山も途中から参加)があって、かなり盛り上がったが、この第6弾ではまた巷の事件簿の方に重点が多少戻った感じで、少しトーンダウンした感じだ。

 収録話は、序「銀河の片隅で」、第1話「むなしさの理由」、第2話「ぺちゃんこ」、第3話「芝居好きの幽霊」、第4話「陸の人魚」、第5話「殺しの蜃気楼」、5話が収録。

 各話の前段のあらましを書く。
 第1話「むなしさの理由」
上野広小路の米問屋・常陸屋弥左衛門は、元は父から継いだ小さな町の米屋に過ぎなかった店を一代で大きくした男だった。小さな店をそこ迄にしたのだからケチケチやってきたのだった。が、ある日を境に急に金遣いが荒くなり、ついには一文無しになった。
 
 本人から事情を聞くと、易者と出会ってから、嫌な事が続いて起こり、お金はあの世まで持っていけないと悟り、むなしくなったという。金など失ってしまった方がいいと、豪遊する生活へとがらっと変わった。
 彦馬はその話を聞いて、弥左衛門の身の回りに立続けに起こった嫌な出来事が実は仕組まれて起こったものに違いないと睨む・…

 第2話「ぺちゃんこ」
 ある日、深川常盤町のしもた屋に住むご隠居が、注文した庭石が届くと、庭師に奇妙な依頼をした。自分が庭で横になるからその上に石を置いてくれという。
 庭師は無理だというが、ご隠居は元相撲をやっていて力は自信があるから大丈夫という。仕方なく言われた通りに置くと、案の定ご隠居は石の下敷きになり潰れて、石は持ち上がらなくなてしまった。
 同様の事件が最近他所でもあったらしい。、彦馬らはその話に異なものを感じ、静山のっ指示もあり調査をするが・…

 第3話「芝居好きの幽霊」
 町奉行臨時廻り同心の原田は自分の拝領地に一軒屋を2軒建て貸家をしているが、その一軒に住む‘みその’は息子と二人で住み、息子は父の代からの瓦版屋を営んでいた。
 ‘みその’の趣味は芝居見物である。最近はのめり込み、芝居を見に行く時は、前日から弁当を作っては出かけていた。

 ある日の芝居見物で、‘みその’は友人のお加世という料亭の主と一緒に見に行く約束していたが、お佳代が突然の用事で行けなくなり、仕方なく一人で出かけた。
 途中友人の‘もみじ’と出会い、彼女を誘うと急だったが了解したので、その日は二人で芝居見物をした。

 翌日‘みその’が‘もみじ’の家を遊びに行ってみると、亭主はその訪問に驚いた。聞けば何と‘もみじ’は一月も前に病死したというのだ。・…

 第4話「陸の人魚」
 織江が川村らお庭番の追求を逃れて潜伏していた根岸の里で、ここのところ人魚騒ぎがあった。海から遠く離れた根岸の地だが、何人もの人が人魚らしきものが川を泳ぐのを見たというのだ。ある日織江もその騒ぎを耳にした。人魚と見誤られるような何ものかが川を泳いで何かしているらしい。

 その真相を確かめるため織江は翌日まだ暗いうちから川に入って人魚が来るのを待った。朝日が登った後、上半身裸で下半身に何か派手なものをまとったものが実際泳いでやってきた・…

 第5話「殺しの蜃気楼」
 ある日、神田川の柳原土手で日中から辻斬りがあった。川とは反対側の土手下で古着屋を営む者らが、土手上で侍が「殺してやる」と叫びながら女を追いかけて、斬りつけるところを見ていた。その直後二人は川向こうに消えた。少ししてから恐る恐る見ていた者らが現場に駆けつけると2人は土手裏にはもういなかった。

 同じ頃、そこから遠く隔たった不忍池の、ひとけのない池の畔に来ていた女が一刀のもとに殺されていた。
まるで不忍池の殺人が、蜃気楼現象で遠く離れた柳原土手で見られたかの如くであった・…。

 今回派手な戦闘シーンはないが、夜に溶け込み気配を完全に消すことができる宵闇順平という忍者と、織江が闘う(巻末の第5話)。
 あわや相打ちかと思われた間際、意外な人物の助太刀で織江は窮地を脱出するが…

 この助太刀に現れた人物は一体誰か? 織江もその時知りえなかった。
 気になるところだが、何とこれが予想外というか驚きの人物。
 それを明かしてしまうと、この第6弾の話が半減しそうなので書かない。

 次弾以降がまた楽しみである。
 勿論、近々ここでまた紹介するつもりだ。
 乞うご期待!
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-14 22:05 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『月光値千両 妻は、くの一⑤』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

月光値千両 妻は、くノ一 5 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

スコア:


<百字紹介文>
 『妻は、くの一』シリーズの第5弾。ここ迄はくの一もの小説だが格闘場面はほとんど無く、巷の事件簿的話が多かったが、今回は雅江・織江母娘が抜忍のため、上司川村に果し状を出し巻末に本格的な戦いに入っていく。

<詳しい紹介文>
『妻は、くの一』シリーズの第5弾である。
   
 収録話だが、まず「新しき友」、第1話「開かずの間」、第2話「猫のような馬」、第3話「お化け屋敷」、第4話「神さまのわすれもの」、第5話「ちぎれても錦」、第6話「お化け屋敷ふたたび」の6話がつづく。

 序「新しき友」では、千代田城の中奥番を勤める鳥居耀蔵が、川村真一郎(お庭番の下忍たちを差配する実力者)と益々親密になり、松浦静山を罠にはめる話をもちかける。その方法だが、静山が気に入りそうな屋敷を買い取りそこに様々な仕掛けをしておく。盗み聞き、盗み見、いざという時は暗殺も出来る屋敷だ。それを買わせるというのだ・…

 第1話「開かずの間」
 彦馬の寺子屋に来ている勘太の家は、貸家で3部屋あったが、そのうち真ん中の1部屋は2重の鍵がかかって年中開かずの間となっている元は蔵の部屋であった。気味が悪いがその分家賃は格安。
 彦馬は勘太とおゆうからその部屋の謎を解くよう頼まれ、仕方なく現場におもむき一応調べることにした…

 第2話「猫のような馬」
 西海屋で彦馬が原田ののろけ話を聞いていたら、小者が原田のもとに駆けつけ加賀藩邸脇の本郷四丁目で男が刃物で腹を刺された事件があったと報告。現場に駆けつけてみると虫の息だがまだ生きている。
 原田が誰にやられたと聞くと「足のような顔をした男」と答えその男は事切れた。色々解釈できる末期の言葉だけに、幾つか見当をつけ探すが一向に見つからない。…

 第3話「お化け屋敷」
 序に出てきた鳥居らが静山に買わそうという屋敷の話の続きだ。静山はその屋敷をまだ買っていなかったが、巷では豪胆で鳴る松浦様が、お化けが出る屋敷を買ったという噂が立っていた。それは鳥居らの策略であった。静山もそれに気付いていたが、つむじ曲がりの性格だけにかえって買いたくなった。が・…

 第4話「神様のわすれもの」
 若い男女の、読んでいてほんわかするような純情話である。
神田明神の坂を下りきった所に<五の橋>という評判の甘味屋があった。彦馬もお気に入りの店だ。30代くらいの笹蔵という名の店主と話してみると、他店での修行はしておらず、自己流で学んで味を研究したという。

 ある日その店を訪れてみると、店主が昨日の夕方から急に居なくなったという。見た人は、店主が何かを持って急に慌てた様子で飛び出していったと話した。
 翌日もその甘味屋へ行って見ると、まだ店主は帰ってきていない。そこへ若い女性が訪れ「お医者の笹蔵」はいないかと訪ねた。人相を聞くと同一人物らしい・…

 第5話「ちぎれても錦」
寺子屋に最近入った金太が落ち込んでいる。訳を聴けば、彼の母親は穀物問屋を営む上野屋治兵衛の妾で短気であった。(理由は分らないが)彼女が治兵衛に怒りをぶつけ、彼からもらった葛飾北斎の絵が書かれた陶磁器も叩きつけて壊してしまったという。

翌日彦馬は彼女が血相を変えて歩くのを見かけた。金太に問いただすと、どこに出かけたは知らないようだが、金太には異母兄弟の桃太がいた事が分った。相手の母親も妾であった。
おそらく妾同士で息子の上野屋の跡継ぎ争いをしており、それに対して旦那はどっちにもいい顔をするので金太の母親は怒ったのであろうと思われた・…。

第6話「お化け屋敷ふたたび」
雅江と織江は、抜け忍となることを覚悟し、ついに川村真一郎に果し状を送った。場所は、以前鳥居らが静山を罠にかけようとしたあのお化け屋敷だ。
静山は結局彼自身の散在が原因で藩に金がなく、その屋敷を買う事を諦めたが、そこを鳥居がその後使っていたのだった。

くの一の母娘2人の側の味方は(静山が飼う)犬二匹、一方川村真一郎の側には爆薬の点火を担当する鳥居耀蔵と川村の配下のお庭者30数名。雅江と織江は多勢を相手に激闘を行う。途中から静山の下屋敷に駆けつけた犬の導きで静山も加勢するが・…

このシリーズは全10巻で完結するらしいが、今は5巻。この注目の激闘場面は、いわばシリーズの真ん中あたり。勿論まだ全体を読んだわけではないが、1つのピーク(山場)だろう。
忍者が出てくる小説は、やはり手裏剣などが乱れ飛ぶ格闘が欠かせないなあと思う。展開が急になり、盛り上がってきた感じだ。織江の驚くべき過去も明らかになり、益々この小説にのめり込みそうだ。

第6弾も近々読んで紹介するつもりだ。
乞うご期待!
(最近結びの言葉がマンネリ化してきた。ボキャブラリーも少なく自分でも未熟さを感じている。申し訳ない。あしからず)
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-12 00:13 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『風の囁き 妻は、くの一④』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

風の囁き 妻は、くノ一 4 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川グループパブリッシング

スコア:


<百字紹介文>
 「妻は、くの一」シリーズの第4弾。平戸藩に不審を抱く二人の男、織江の上司でお庭者の下忍たちを差配する川村真一郎と、中奥番の鳥居耀蔵(後に水野忠邦のもとで南町奉行となる鳥居甲斐守耀蔵)が友となった・・・

<詳しい紹介文>
 「妻は、くの一」シリーズの第4弾。
 今回の収録話は、序「父と息子の夜」、第1話「武道なりさがる」、第2話「竜の風」、第3話「異鳥の肉」、第4話「義眼と蜂」、第5話「キツネの飛脚」の5話。

 序の「父と息子の夜」は、大学頭(だいがくのかみ)林述斎と彼の三男で鳥居家に養子に入った鳥居耀蔵が、ある晩久しぶりに話をするというもの。林述斎は、松浦静山と昵懇の仲である。それに対して耀蔵は、静山等の蘭癖を快く思わず、秘密などを暴きおとしめたく思っている。静山をやっつける手がかりを得ようと実父から「甲子夜話」を借り出す。

 第1話「武道なりさがる」
 彦馬の寺子屋に通う弁吉は、家はつぶれそうな小間物屋のはずだが、近頃羽振りがいい。他の子等に色々なものを分け与えようとする。調べてみると最近急に家業が儲かっているようだ。商売は変わった趣向を凝らしていた。武家に縁起の悪いものばかり集めて売っていたのだ。同僚を妬むことが多い武家の心を利用して、呪いの道具として利用されていたのだった・…。

 第2話「竜の風」
 ある日、雙星彦馬(ふたぼしひこま:主人公)の妻恋稲荷の近くを通りかかったところ、人々が騒いでいる。境内に勧請された良縁社という摂社があったが、その祠の前にずらっと並んでいた小さな複数の鳥居が祠とともになくなっていた。前の晩天気が大荒れで凄まじい風が吹きまくったが、人々は風がそれらを引っこ抜いて持っていってしまったのか?と不思議がっていた・…

 第3話「異鳥の肉」
 西海屋千右衛門に‘懐かしい顔に会えるから夕方来い’というので出向いてみると、何と江戸へ出てくる時に急遽養子にした遠縁の雁二郎という者が、もう一人の者とともに江戸詰となり出てきたのだ。それを受けて今度は江戸詰の者が二人、お国に帰ることになった。
 その歓送迎会の席、盃の1つに小さな鳥の青い羽根が浮いていた。帰国する者のうち1人は、金の使い方に厳しく融通が利かぬ性格だったので多くの江戸詰藩士から嫌われ、本人もその事を知っていた。殆どの者は、鴆毒(ちんどく)が盛られた酒ではないかと酒を飲むのを控えたが・…

 第4話「義眼と蜂」
 彦馬と原田朔之助が、飲み屋で飲んでいると、近くで押し込み事件が起こった。老夫婦が営む豆屋がやられ、夫婦は縄で縛られ二両ほどの金を強奪されていた。原田が岡っ引に聞き込みをさせたところ、怪しい男が事件の少し前に豆屋の前の飯屋で飯を食っていたという。豆屋を恨めしい目つきで睨み、しかも変わった仕草もしていた。飯を食いながら茶碗や膳を持ち上げ、器の裏を眺めていたという・…。

 第5話「キツネの飛脚」
 ある日、西海屋に赤い毛色の犬が首輪に竹筒を付け、文を届けに来た。文にはこうあった。「いいブツが入るらしく候。至急、十五日申の刻に品川沖へ船を手配していただきたく候。船は赤い帆を揚げるという約束に候。国許、西海屋平戸店」
 西海屋は静山の意向を受けて密かな活動もしていた。が犬がこんな遠距離を使いをするのも変である。千右衛門は静山に相談をかけたが、こういう場合使わない言葉も多く文には見られ、疑惑を抱く者の罠と思われた。
 実際、それは鳥居耀蔵の仕掛けた罠であったが・…。

 この後、織江は静山が住む平戸藩の下屋敷を失踪することになる。母が織江のもとを訪ねてきて、川村真一郎の追及がもうすぐ及ぶから逃げろというのだ。最近はしばらく報告をしていなかった。

 実は(先の第3弾の巻末の話だが)、織江は、ひょんなことから松浦静山が所持する兵器を解説した洋書を入手し対処に悩んでいた。その書には静山の野心を裏付ける書き込みもあった。これがあれば密貿易と反幕の野心の証拠となる。しかしこれを提出すれば静山ばかりか、夫・彦馬にも破滅が及ぶ。

 板ばさみに苦悩する彼女のもとを、思いがけず母雅江が訪ね、それを聞いていた。娘に自分と同じ不幸な一生を負わせたくないと思った雅江は、お庭番の境遇から娘を逃がそうと考えたのだ。

 一方その頃彦馬は、雁二郎から下屋敷にいる飯炊女が、以前平戸の家を訪ねてきた若い女と思われると聞き驚く。織江に違いないと思い急ぎ駆けつけてみると、彼女の部屋はもぬけの殻であった。ただつい先程までいたらしく畳の温もりでそれが感じられた。…

 この第5弾では、後に南町奉行となり妖怪と畏れられた鳥居耀蔵が、織江の上司の川村真一郎(お庭番の下忍たちを差配する実力者)に接近し、友となる。今後二人が組んで静山や織江の敵となる可能性が大で、次弾以降の展開が気がかりだ。

 ちょっと今回は詳しく書きすぎ、ネタバレだったかな??
 次の第5弾も近々読んでここに紹介するつもり。乞うご期待!
  

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# by une_genzaburo | 2012-05-11 06:11 | 読書 | Trackback | Comments(0)

『身も心も 妻は、くの一③』(風野真知雄著・角川文庫)を読了した

身も心も 妻は、くノ一 3 (角川文庫)

風野 真知雄 / 角川グループパブリッシング

スコア:


<百字紹介文>
 「妻は、くの一」シリーズの第3弾。松浦静山にも気に入られ下屋敷に出入りするようになった彦馬は、天文観測を付き合わされたり、随筆「甲子夜話」に載せるネタの為、巷で起きた怪事等を調べるよう頼まれたりする。

<詳しい紹介文> 
 『妻は、くの一』シリーズの第3弾である。
 平戸でのほんの短い夫婦生活をおくった後に失踪した妻・織江を探しに江戸へ出てきた雙星彦馬(ふたぼしひこま)だが、数か月経つがまだ見つけることが出来ずにいた。

 彼は前平戸藩主・松浦静山に気に入られ、度々隠居所となっている本所の下屋敷に出入りするようになった。そこに何と織江が平戸藩の秘密を調べに飯炊き女として潜入していようとは知らずに、静山に呼び出されて、天文の話など歓談などしたり、時には「甲子夜話」を書き綴る静山のために巷で起きる事件を調べたりする…。

 今回も5話を収録。それぞれ簡単に前半のあらましを書いておく。
 第1話「赤いカラス」
 ある日静山から、彦馬の友人・西海屋千右衛門が神田明神近くで赤いカラスを見かけたという話を聞く。要はその話を調べよとの静山の示唆だ。彦馬は千右衛門からも状況を聞き、現地におもむく。彼もそのカラスを見つけるが、と同時に不思議な女も見かける…。

 第2話「はまぐり湯」
 彦馬はある日彼が住む町(妻恋町)の湯屋の2階で転寝をしていた。階下で騒がしくなったので降りてみると、湯船の底に二枚貝の貝殻がバラバラになって一杯あるという。彼が先ほど湯に入った時はなかった筈。誰かの悪戯らしくその日は騒ぎは収まるが、翌日同じ湯で今度は殺人事件が起きた・…

 第3話「人形は歩く」
 怪異を怖れぬ静山は、物好きにも夜ひとりでに歩くと気味悪がられた人形を仕入れてきた。それは600年程前に製作された中国製の李白の人形だった。正月のある日、彦馬は静山からそれを下屋敷で見せられた。話の成り行きで、その夜静山は上屋敷で泊まる予定だから、代りに彦馬がそこに泊まり看視して実際に歩くか確かめよと言われる・…。

 第4話「読心術」
 正月三日に、静山と彦馬、西海屋千右衛門、原田朔之助の4人は連れ立って浅草見物に出かけた。凄まじい人出で賑わう浅草界隈は、多くの出店のほか、皿回し、角兵衛獅子、太神楽など大道芸人も沢山いた。その中に今評判の人の心を読み、それを証すかのような賭けを行っている男がいた。静山らは興味を覚えて試ししてみるが・…。

 第5話「後生小判」
 彦馬の寺子屋に通っていた‘おふじ’が最近来なくなった。他の子どもらに聞くと両国橋の下で見かけたという。「橋の下で」という言葉に引っかかった彦馬が現場へ行ってみると、「後生小判」という変わった店を彼女の親が橋上で開いていた。

 あの世でも金に困らぬよう15文で小判を(おふじの親父から)買い、功徳を施すためにその小判を橋の上から投げて逃がしてやるという趣向だ。実は橋の下に‘おふじ’がいて、(客から見つからぬように)泳ぎながらその落とした小判をキャッチして儲けるというもの。

 貧しいとはいえ、真冬の水中での過酷な働きに驚いた彦馬は、彼女の父親を説得し、おふじを以前の通り寺子屋へ通わせる事を約束させるとともに、商売の内容も変えさせるが・…

 この第5弾では、新たに若き日の鳥居甲斐守も登場する。後に‘’妖怪’と渾名された彼を彷彿させるような行動、蘭癖大名を密偵を使って偵察することなども行う。また織江の上司・川村真一郎もしばらく報告が無い織江に不審を抱き、織江を直接尾行看視しはじめた。彼は、織江を自分の妻にしようと考えていた。
 いわば彦馬のライバル、この後の展開は如何に?気になるところだ。
 第4弾も近々読んで紹介したい。乞うご期待。

  

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# by une_genzaburo | 2012-05-10 09:30 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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能登をこよなく愛する好奇心旺盛な40代後半のブルーカラーの源さんです。趣味の1つ読書(本の紹介・書評中心)のブログです。年間150冊前後読みます。2005年からこのブログを始め、既に1千冊以上を紹介しています。
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